Part15:実習(1)模範演技


 バサッ

 三人の『天の使者』が一斉に羽を広げた。 羽を精一杯広げた『天の使者』の姿には、圧倒的な存在感があった。

 「ほぅ……」

 教授の口から感嘆の声が漏れた。 その教授の前で、『天の使者』達は、互いの位置を入れ替えつつ、体をくるくると回して踊る。 昼間はさほど目立た

ない色の羽が、月光を弾いて美しく光っている。

 「これは見事」

 キラキラと輝く羽の乱舞に教授は引き込まれ、その視線が釘告げになる。 羽の間から時折覗く『天の使者』達の肢体は、汗に濡れて彼を誘っている

かのようだ。

 「美しい……いや……」

 そう、彼女たちは確かに彼を誘っていた。 輝く羽が目を引き、その間から覗く蠱惑的な肢体が雄の本能を刺激する。 それは、性の歓びに満ちた官能の

踊りに違いなかった。

 (……)

 いつの間にか教授は立ち上がっていた。 その教授の前で踊り狂う『天の使者』達は、一人ずつ羽を開いてアピールする。

 ”私を……”

 ”選んで……”

 ”さぁ……”

 それは明白な意思を込めたボディ・ランゲージであった。 そしてその言葉を読み取っているのは、教授の心でなく肉体だった。

 ズクン!

 「ぬっ!?」

 教授のズボンがいきなり突っ張り、驚く教授。 続いて体の中からこみ上げてくる狂おしい衝動に、教授は驚愕した。

 ズクン、ズクン、ズクン……

 打ち震える男根に、体の中からこみ上げてくる性の衝動。 教授が普通の音男性であればでなければ、考えることを止めて『天の使者』達に躍りかかっ

ていただろう。 しかし、教授はいろんな意味で普通でなかった。

 「ぬぬぬぬ……信じられんことだが……体か彼女たちの求愛に反応している……何故だ?」

 唸って首をかしげる教授の前で、三人はじれったそうに踊り、羽を開く。

 「……もしかして、あの文様は『知識』を大脳に『教育』しただけでなく……それ以外の事も『教育』、いや『刷り込み』を行ったのか? そう……『衝動』や

『感覚』、あるいは『反射』を……そう小脳や末端の神経に至るまでに……これは凄い!」

 教授が普通でなかったのは、自分の考えに没頭すると他が見えなくなる点だった。 おかげで肝心の『天の使者』達の求愛ダンスが目に入らなくなって

しまったようだ。 ぶつぶつと呟きまくる教授に、『天の使者』達は苛立ち、踊りながら教授の周りに集まってきて、耳元で叫んだ。

 ケーッ!!

 「うわぁ!?」

 さすがに教授は現実に意識を戻す。 すると目の前にクィーの肢体と、渦巻く羽が飛び込んできた。

 「うおっと……」

 再び視線が羽にくぎ付けになり、そして体の中に熱い衝動がみなぎってくる。 教授は慌ててセルフコントロールで自分を押さえつけようとし、ふと考えた。

 (まてよ……ここで求愛に応えない事こそ、非礼に当たるのではないか?)

 一度息を吸い込むと、教授は上着に手をかけ、それを脱ぎ捨てた。 ズボンをおろし、シャツを脱ぎ、パンツを脱ぎ去った。

 (うーむ……なにやら変態行為の準備をしているような気もするが……)

 もう一度大きく息を吸い込むと、意を決して『天の使者』達のダンスを凝視する。 そして、考えることを止めた。


 ……

 ズキン

 衝動のままに、教授自身がそそり立つ。

 クイッ……

 カァッ……

 『天の使者』たちが教授のモノを見つめ、熱い吐息を漏らした。 羽の間から覗く肢体が、心なしか赤らんでいるように見える。

 ……

 教授の足が前に進み出た。 彼の意思と関係なく、体の中から沸き起こる衝動が体を動かしている。

 カッ……

 カカッ……

 教授に触れんばかりに近寄った『天の使者』たちは、教授の前で体を開き、存分に肢体を見せつける。 教授の体は、いまや手足ばかりか目玉までが

歌なる衝動のままに動かされ、彼女たちを品定めしている。

 (これは魅惑的な体験だ……まるで他人の目を通してモノを見ているかのようだ)

 心と体が完全に別物になっている。 教授の体はともかく、心の方はこの現象の方に関心があった。

 (さーて、体は誰を選ぶか……おおっ!?)

 教授の手が滑らかに動いてクィーの翼の中ほどを掴み、隊を入れ替えるようにしてするりと彼女の前に回った。 そして彼女のダンスのリズムに合わ

せてステップをふむ。

 カィッ!?……ケッ、ケッケッ……

 戸惑った様な声を上げたクィーだったが、すぐに教授に合わせてダンスを続ける。

 (クィーを選んだ……のか?)

 自分の事ながら、体が勝手に動いているので教授には次に何が起こるかわからない。 と、体が勝手にクィーの唇を奪う。

 クゥ……ムゥゥゥ……

 (……)

 柔らかい唇を割って、互いの舌が絡み合う……と思ったが、クィーの舌は思いのほか固く、教授の舌が一方的にそれを舐めまわすことになった。 

 プハッ……ニィィィ……

 教授の唇が離れると、クィーはトロンとした目つきで顔を赤らめ、教授にしきりに体を擦り付けてくる。

 (はぅ……ひょっとして体の方に、彼女たち向けの性のテクニックが刷り込まれたのか?)

 教授の考えは正しかったようで、彼の唇はクィーの性感帯らしき場所を的確に攻めていく。 彼女の耳から顎の線をなぞって喉へ下り、鎖骨の辺りを

ついばんでいった。

 クィッ……キュルル……

 クイーッは喉を鳴らしながら膝をつき、教授の体がそれに合わせてしゃがみ込む。 視界の端に、キキとココが少し離れたところにしゃがみ込んでいる

のが見えた。

 (すまんな)

 心の中で詫びながら、教授はクィーを責める自分の体の動きに注意を戻した。 クィーが感じているように、教授の体にもクィーの体の感触は伝わっている。

 ただ、クィー達に合わせたプレイになっているのか、性的感覚はやや希薄なようだ。

 (人間とはやはり違う部分があるのか?)

 考えていると、クィーがずるりと倒れ込み、お尻を突き上げた。 すると教授の体が彼女の背後に回り込んだ。

 (むむ、バックからか?)

 教授の考えは当たっていた。 彼の体はクィーのお尻を押さえつけ、クィーの秘所を自分自身で探り出した。 程なくして柔らかく、熱い谷間を先端が探り

当てる。

 グイッ

 教授の腰が突き出され、クィーの中に彼自身が容赦なく突き入れられた。

 キーッ!

 クィーが叫んで、翼を打ち振る。 いきなりだったので驚いたこともあったのだろうが、何より教授の体の動き少々乱暴だった。

 ズッ、ズズッ、ズッ……

 教授自身がクィーの温もりの中を往復し、クィーの滑りがそれに絡みつく。 教授は自分の体にこみあげてくるものを感じた。

 (うう……来る)

 キーッ……

 教授が精を放つと同時に、クィーが高く鳴いた。 教授の熱いものを体に感じて果てたらしかった。 しばらく硬直した後、二人は地面に重なるように

して倒れた。


 ……クィッ?

 「お、すまんな」

 教授は謝ってクィーの体から降り、体の自由が戻っていることに気が付いた。

 クィッ……クィーッ……「と、終わりですか?」

 「ん?うむ」

 クィーがそっけなく言い、教授が応えた。

 「んー……」

 クィーが首を傾げ、キキとココがクィーに尋ねる。

 「ね、どうだだった。『交尾』」

 「うん……まぁこんなものかな?」

 クィーの感想に、キキとココが首をかしげた。

 「ふむ、期待外れだったかな?」

 「うーん」

 「そうかも」

 「そうか……」

 応えながら教授は考えた。

 (まぁ、なまじ興味深々だったから、思ったほどでもないとこんな反応になるか……失望させたかな)

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