Part7:仮説と観察


 「むむむむ……」

 教授は地面に腰を下ろした姿勢で後ずさった。 と、腰に柔らかいものが当たった。 さっきの『講義』で失神したココだ。

 ……クイッ?……クイッ?

 クィーが教授のズボンの膨らみに顔を近づける。

 「こ、これ。 そう顔を近づけるな」

 こういうものは、一度意識してしまうと思うに任せないものだ。 膨らみが増して下着が食い込んでくる。

 ズリッ

 アレがずれ、ズボンの膨らみが動いた。

 クィッ!?

 驚いたクィーが後ずさり、顔を上げて教授を見る。

 クックックックッ……クキーッ? クキーッ?

 「……『これは何だ?』と言っておるのか?」

 ケッケッケッケッ……ケケーッ ケケーッ

 甲高い声を上げてたクィーが、ズボンの膨らみを羽の時で示す。

 「むー……『何を隠している?』か『中を見せろ』か?……」

 教授は、クィーが教授のズボンに異様な関心を示していることに気が付いた。

 「これ、若い娘がはしたない……ではないな。 どうしたと言うのだ、いったい」

 教授は手を上げてゼスチャーでクィーを制止しながら、クィーが興奮している理由を考える。

 (遺体を相手に交尾の真似事をしようとしていた彼女達だ。 まるっきり性について無知とは思えんが……。 いや、交尾の相手を失っているという推測が

当たっているとしたらどうだ?)

 教授はクィーと、背後で失神しているココを交互に観察する。

 (交尾相手がいなければ、性に関する知識など得る当てはない。 本能的に異性を求めても、求める相手がいなければどうしていいかわからない。 

それで人間の遺体を相手に?)

 頭の中で『天の使者』たちの行動についてあれこれと考えだした教授は、すっかり自分の世界に入ってしまた。

 クゥゥゥゥゥ……ケケーッ!!

 「わわっ!?」

 誰でも目の前の相手に無視されると腹が立つものである。 教授の答えを辛抱強く待っていたクィーはだったが、いっこうに答えが返ってこない事にいら

立ち、実力行使に出た。

 クゥッ……ケケーッ!!

 「わわっ、よしなさい! 男に襲い掛かるなど、レディーにあるまじき所業!」

 教授の抵抗もむなしく、クィーは教授を足の爪で押さえつけ、羽の中ほどにある三本指の手で教授のズボンと下着をはぎとった。

 ケケーッ!!……ケケッ!?

 あられもない格好でひっくり返った教授。 そして彼の男のシンボルがクィーの目の前にさらけ出された。


 ……ケーッ?……ケッケッケッケッ……

 クィーはまじまじと教授のモノを見つめ、盛んに声を上げている。 ひどく興奮しているようだ。

 「むむっ?……」

 教授はクィーがひどく興奮している不思議に思ったが、その理由に思い当たった。

 「そ、そうか現役の『男』を見るのは初めてなのか」

 遺体を相手に交尾の真似事をしてきた彼女たちは、耐用年数が切れたモノしか知らなかったのだろう。 生きて現役(やや下り坂にあるが)の教授のモノは

終わってしまったモノとは迫力がまるで違うのだ。

 ケケーッ! ケケーッ! ケッ……ケケケッ?

 甲高い声で騒いでいたクイーの声が低くなってきた。 なんだか表情も曇ってきたようだ。

 「む?」

 教授もクィーの変化に気が付いた。 彼女の視線をたどると、自分のモノがしおしおと萎れていく。

 「……ああ、そうか。 まぁ心配するな、そういうものだ」

 安心しろと言うつもりで、教授はにっこりと笑って見せた。 が、クィーは教授の表情には全く気が付かず、心配そうに教授の大事なモノを見ている。

 ケー……ケケーッ! ケケーッ!

 「いやいや、心配せずともそこはまた元気になる」

 教授がクィーに話しかけるが、クィーには聞こえていない。 モノを元気づけようと言うつもりか、羽の先でモノをくすぐった。 不意を突かれて、教授が驚く。

 「どひゃぁぁ!?」

 いきなり声を上げた教授に、今度はクィーが驚き顔を上げる。

 クケッ!?……ケケーッ!

 くすぐったさに騒ぐ教授を怪訝な顔で見ていたクィーは、教授のモノがピクピクと脈打ちながら起き上がってきたのに気がついた。

 ケケケケケケケッ!……ケェー!?

 復活しかけたモノは、クィーが喜んで騒いでいる間にまた力を失い始めた。 クィーは、そうはさせじと羽でモノをくすぐる。

 「どひゃははははは!」

 敏感な所をくすぐられ、たまらず教授は笑い出した。 そして羽でくすぐられたモノはピクピク震えながら再び屹立し始める。

 クックックックッ……ケケケケケケケッ!

 立ち上がっていく教授のモノを見ていたクィーが歓びの声を上げた。 そして今度こそ容赦なく、教授のモノをくすぐり始める。

 「こ、こらまて……だひゃはははははは!」

 ケケケケケッ!


 クケッ!? クケケケッ!?

 異変に気が付いたのか、他の『天の使者』達が集まってきて、小屋の入り口から中を覗き込んできた。

 クィー?

 クィー? ククケククッ?

 ケケケッ! ケケケケケケッ!

 クィーは興奮した様子で仲間たちを振り向くと、羽の先で教授のモノを指し示す。 屹立したモノに気が付いた『天の使者』たちは、目を丸くして(鳥の目

なので瞳は真ん丸だが)それを見つめた。

 ケケッ! ケケケケケケッ!

 クィーは、教授に向き直ると羽先でモノを撫でる。

 「どひゃははははは!」

 教授が笑い出し、モノがぴくぴくと震える。

 クッケェー!!

 勝ち誇ったようにさけぶクィーに、他の『天の使者』達は顔を見合わせた。 そして、何を思ったのか小屋の中に入ってくると……一斉に教授をくすぐりだした。

 ケケケケケッ!

 ケケケッ! ケケケケッ!

 「だはっ!? だひゃははははははははは!!」

 ピクピクピクピク!

 笑い続ける教授と屹立して震えるモノ。 それを見て大喜びする『天の使者』たち。

 「だひゃはは! たひけてふれぇ!!」

 息も絶え絶えの教授は、来るはずもない助けを求めるしかなかった。

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