Part5:課外講義


 「いきなり任せられてもなぁ……」

 教授はそう言いながら、卵がつかえて苦しんでいる『天の使者』の秘所を注意深く調べ、卵が見えている箇所を触ってみた。 鶏卵の様な感触だ。

 「鳥の卵の様だが……結構大きい。 よくこんなものが産めるものだ」

 キキーッ!

 キキーッ!

 傍にいた二人が鋭く鳴いた。 視線を向けると、二人はお産中の仲間に呼び掛けている様に見えた。

 (『キキ』が名前か? と、今はそれどころではないな)

 卵の圧力で伸び切った秘所の縁は、血の気を失って白っぽく変色している。 その辺りから下腹へと触診していくと。 手ごたえが柔らかく変わっていく。

 「確か卵殻は空気に触れると固くなるから……お産に時間をかけすきで、端が固くなってつかえてしまったのか?」

 教授は顔を上げて、手伝いの二人を見た。 気が付いた二人が教授を見返す。

 キュゥ?

 ケケッ?

 「あー……卵がつかえている。 これを何とかしないといかん」

 教授は、右手の親指と人差し指を輪にし、左手の拳を輪にぶつけて見せる。 二人は首を傾げたが、頷く様子を見せると、腕と一体化した翼をばさっと広げ

顎をしゃくってみせる。

 「翼を見ろ?……おや、翼の中ほどに手が……三本指!?」

 教授は二人の翼を観察し、頭の中で構造を描く。

 「ははぁ。 薬指と小指の骨が伸びて翼をになって、三本だけ残っているのか。 鳥とコウモリの中間か」

 キュウキュウ

 一人が自分の手を示し、次に教授自身の手を翼の先でつつき、最後に翼を合わせて何かを引くような仕草をする。 教授は腕組みし、彼女のゼスチュアの

意味を考える。

 「ん?……3つと5つで……引っ張ると……おお!」

 教授が手をポンと叩く。

 「『こんにゃくが三つで五文』!」

 キケー!!

 「わわっ、違ったか。 エミ君の教えてくれた『こんにゃく問答』でないとすると……『私たちは指3つで、貴方は5つ。 その手で卵を引っ張り出せ』?」

 クケェッ

 教授は、彼女たちが自分に仕事を振った理由をようやく理解した。 彼女たちの手は空を飛ぶのに適した形になっているが、反面器用さに欠ける構造に

なっている。 指が五本ある教授の手に、この卵を引っ張り出すと言う困難な仕事をこなせるせるのでは……と期待しているようだ。

 「むー……いや、卵の先がもう固くなっている。 押し出すならともかく引っ張り出すのはちと無理だ」

 教授は沈痛な面持ちで首を横に振り、それを見た二人の『天の使者』は顔を見合せた。

 キケッ?

 キケーッ……

 何かうなずき合うと、一人が巣の外に出ていった。 教授がそちらを目で追うと、彼女はすぐに戻ってきた。 片方の足先に拳ぐらいの石を掴んでいる。

 「……まさか、卵を壊す気か!?」

 クケエッ

 「ま、まてそれでは卵が」

 クケエッ……

 表情に乏しい『天の使者』が、悲しげな顔になった……様だと教授は感じた。


 「よし……うまくいくか判らんがやってみるか」

 教授は石を掴んだ『天の使者』を押し戻すような仕草をすると、苦しんでいるキキの顔を覗き込む。

 「いいか? いきむのをやめて、腹の力を抜きなさい」

 クーッ!! ケー……ッ!!

 「いやいや、そうではなくて……こう……ヒッヒッフー……」

 ケッ? ケッケッ……クー……

 「そうそう、ヒッヒッフー……いきみっばなしでは持たんから、息を整えて一気に押し出す。 先が抜ければ後ろはまだ柔らかいはず……それヒッヒッフー」

 ケッケックー……

 「ヒッヒッフー」

 ケッケックー……グウウッ……

 「むう、やはり固くなっているところが引っかかる……よーし、仕方がない。 我慢してくれ」

 教授はキキに『ケッケックー』を続けさせるると、自分はキキの秘所の間に陣取った。 秘所の間から白い卵が出たり引っ込んだりしている。

 「うまくいってくれよ」


 教授は苦し気に震えるキキの真珠にそっと口づけした。

 ケキャァー!?

 悲鳴とキキの蹴りが飛んできた。 鋭い爪の一撃を教授は間一髪でかわし、手で彼女の足を捕まえた。

 「おっとと……この感度ならは十分だと思うが……」

 教授は呟きながら、キキの真珠を唇で咥える様にし、舌先でつつく。

 ケキャッ、ケキャッ!!

 キキが襲われると思ったのか、『天の使者』の一人が教授を蹴り飛ばそうとした。 しかし、もう一人がそれを止める。

 キケッ!?

 キケーッ

 『天の使者』二人がキキに注目する。 慌てていたキキの息が落ち着きを取り戻し、顔が微かに赤らんでいる。 そして秘所の辺りが……じわりと濡れてきた

 (本来の用途とは違うが、潤滑油みたいなものだからなぁ)

 心の中で呟いて、教授はキキの真珠を慎重に舐めていく。

 (鳥娘相手の産卵プレイ……新しい世界が見えそうな気がする……) 


 ケッ……ケッ……クゥー……

 キキも教授の意図を悟ったのか、蹴りを止めて呼吸に専念し始めた。 しかし落ち着いたせいか、秘所の濡れ具合が進まない。

 (むー……よし、ここは教育者としての技を生かして)

 教授は秘所の縁に沿って舌をぐるりと這わせ、もう一度真珠を唇で咥える。 そして。

 『私は、中国の奥地に猿人が棲むという噂を聞きつけて、調査に向かった……』

 口の中で講義を始めた。

 ケケッ?……ケケーッ……

 キキは怪訝な顔をした。 教授が呟く言葉が、微妙で複雑な振動となって真珠や淫唇に伝わって来ているのだ。

 『……崑崙の先……』

 ケッ……ケッ……クゥー……

 『……砂漠を渡り……』

 ケッ……ケッ……クー……

 『……遺跡に至った……』

 ケ……ケ……クゥゥゥー……

 仮面の様だったキキの顔にほんのりと赤みが差し、鳥の瞳がトロンと幕がかかった様に潤む。 かすかに開いた口元からは、三拍子の呼吸と共に甘い

喘ぎが漏れ聞こえてくる。 張り詰めて苦しそうだった下腹は、呼吸に合わせてゆっくりと上下し、育んだ命の証をやさしく送り出そうとリズムを刻み始めた。

 (よーし、もう一息)

 教授は一段と力を込めて、キキの秘所に『講義』を行う。

 『……猿人の娘たちは、恐るべき跳躍力と体術で、探検隊へと襲い掛かった!!……』

 熱の籠った教授の言葉が、震える唇が、そして激しく動く舌が、キキの秘所と女の宝玉へ激しい情熱を伝える。

 ケッー……ケッー……クハー……

 うっとりと熱い吐息を漏らすキキ。 その秘所からは泉の如くに愛の滴があふれ、神秘の門が教授の眼前へと口を開いた。 そしてついに誕生の時が!

 ヌッ……ポン……

 ケッー……クハー……

 転がり出てきた卵を教授は慌てて受け止めた。 ほこほこと暖かいそれは、さっきまでは確かにキキの胎内にあったものに違いなかった。

 「……以上、今日の講義を終わる。 よく頑張ったな、キキ」

 クケェ……

 ぐったりとしたキキが、教授の抱いている卵へ慈愛の視線を注いでいる。 教授も満足そうに笑顔で応える。

 「ふぅ、しかしこのような形の『講義』など一生に一度の体験だな……お?」

 教授の肩を、誰かがちょいちょいと突いた。 振り向くと、お産を手伝っていた『天の使者』二名が教授を熱っぽい視線で見ている。

 「……えーと……君らも『講義』を?」

 クケェ♪

 「一生に二度目、いや三度めの体験かぁ」

 教授の『課外講義』はまだ続きそうだった。 

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