ライム物語

第六話 水曜日に月の姉が…?(2)


アルテミスの体は月光を満たした器のようで、月の女神の名を持つに相応しい…が、その体は奇妙なほどに存在感に乏しい。

アルテミスは、立ち尽くす金雄の頬にそっと触れ…

(…?)

視界の隅では、光る女の手が頬に触れている。 しかし、金雄には触られている感じが無い。

「幻…?」 思った事が口に出た。

と、アルテミスが口元に冷たい笑みを浮かべ、空いている手をすっと金雄の股間に差し入れた。 

「…ひっ!?」

冷たい。 氷とまではいかないが、異様に冷たい感触が股間を包み込んだ。

身を引こうとしたが、まるで動かない。 どんどん大事なところが冷たくなっていく様だ。 未知の感覚に恐怖する金雄。

「くっ…」

冷えた陰嚢と男性自身が縮むのが判る、しかし『冷え』は容赦なく金雄の男根から熱を奪い、付け根までが痺れて…

ヒック… 男根が大きく震えた

「うっ…?」

金雄は、奇妙な痺れが男根に満ちているのに気がつく。

『冷気』ではない。 重苦しく粘っこい痺れが、そこに満ちている。

こみ上げてくる吐き気…に似た何かが下から金雄を突き上げる。

「ぐっ…」

『冷たく』痺れる感覚が金雄の股間と…頭の中でねっとりと渦を巻き、耳鳴りさえする。

それが濃密な快感だと体が気が付くのに、僅かな時を要し。

「あ…ぁぁぁ…」熱い息を漏らす金雄。 

触られているだけなのに、もう股間がピクピクと蠢いている。

ヒクヒクヒクヒクヒクヒク…

陰嚢の辺りが心地よく脈動しだした。 すぐに行ってしまう…と思ったら、アルテミスが股間から手を離した。

ヒクヒク…ヒクッ…

男根が未練がましく震え、つい恨めしげな表情になる金雄。

”ふ…” アルテミスが微かに笑った。”いきたいのでしょう?…さぁ…遠慮なくおいでなさい”

一歩下がり、手を広げるアルテミス。 

金雄の体が自由になったが、アルテミスから目を離せない。

白く光る裸身が金雄を誘い、金雄は思わず一歩踏み出す…


ミー…

悲しげなライムの声に金雄の足が止まった。 

(ライム?…いけね)

金雄は思いとどまった。 さっき『ソノ件』で喧嘩していたばかりではないか、このまま流されるのはさすがにまずい。

(ちょっと…いやとっても、もったいないけど…) 腹の中で呟いて。 

「あ…あ…アルテミスさん…もう一度聞きます。何をしに…」

アルテミスは応えず、ライムを見やった。

緑色の小さな少女は床に蹲ったまま姉を見上げている。

どうやら彼女もアルテミスによって自由を奪われているようだ。


アルテミスは金雄に視線を戻した。

”貴方の真意を見極めるために”

「真意?…『洗脳』で自由を奪っておいて誘惑も何も…」 抗議する金雄。

”『洗脳』?…してませんよ”

「嘘だぁ!体が思い通りに動かせなく…」 言いかけて金雄は口ごもった。

(まてよ…確か『洗脳』状態になるのは『あれ』の後だったはずだよな…今は触られただけ…いや、その前に体が動かなくなった様な…)

考え込んでしまった金雄。 その顔を覗きこむアルテミス。

「わっ!」

金雄は驚いてまともにその目を見てしまった。 途端に体の自由が利かなくなる。

「ま、また!?これは…」

”直接触れ合って心を支配するのが『洗脳』…これは『催眠術』…”

「催眠術?」

”そう…大丈夫、害は無いから…”

「こ、こんな事をしても…僕は『洗脳』に少しは耐性ができて…」

”知っていますよ” 床に蹲りながらアルテミスが言う。

「じゃあ…何を…」

股間にアルテミスの気配を感じた…あの『冷たい』手がと思うと、どうしても男根が疼いてしまう。

”さっきの…良かったでしょう”

「…」

”ご心配なく、続きをするだけですから…貴方の真意を確かめる為に…”

床に横たわり、手招きをするアルテミス。

金雄の体がアルテミスの肢体に吸い寄せられるように重なる。

「真意って…何の事ですか…」

金雄は、男根が光るクレバスを探っているのを感じた。

そこは『手』と同じように冷たく感じられ、触れたところから『冷気』が伝わってくる。

アルテミスの『女』が開き、金雄の亀頭を軽く咥え、ヒヤリとした感触に男根が震えた。

「あ…」

”きて…”

体が素直に従った。 冷たく…そして滑らかなアルテミスのソコに、金雄の男性自身が滑り込んだ。

固く張ったエラが、アルテミスを弾いていく。

陰嚢が激しく脈打ち、さっきの分まで取り返そうかという様に。

しかしアルテミスの中が震えると、灼熱の射精感はぬるま湯の様な快感にすり返られてしまった。

「うっ…」

股間が溶けていくような感じにうめき声が漏れる。

”あせらずに…ゆっくり…来て…引いて…来て…引いて…”

最初はアルテミスに操られ、いつしか自分から…金雄はアルテミスの中を行き来する。

熱くなろうとする男性自身を、宥めるように冷やす女性自身。

その規則正しい快感の波は、金雄の意識を緩やかに洗う。

アルテミスの言葉に従っているとだんだん心地よくなっていく。


「はぁ…はぁ…」機械の様に規則正しく息を漏らす金雄。

ミー… 金雄の様子に、ライムは膝を抱え込んだまま寂しげな声を漏らした。

彼女に言い訳するかのように呟くアルテミス。

”『洗脳』では心が閉ざされてしまう、『読心』では欲情が見えるだけ…彼の『真意』を知るには私の『催眠術』しかないのよ…”


廊下で十文字が小声で解説する。

『『洗脳』『読心』が物理的接触が必要で単機能なのに対し、アルテミスの『催眠術』は様々な使い方が出来る上、必ずしも物理的接触を

必要としない強力な技である。なお、この技はアルテミスだけが使える』


アルテミスは金雄の目を見た。 遠くを見ている様に焦点が合っていない。

”気分はどうです…”

「とても…良い気分です」金雄はゆっくり動きながら応える。

彼はは不思議な安息感の中を漂っていた。 母親の胸に抱かれているような、そして優しい女人と情けを交わしている様な。

アルテミスは金雄の目を見ながら言った。

”貴方はライムをどう思っているの…”

「小さな…生き物…震えて…」 ポタリ…金雄の目から涙が落ちた 「今度こそ…ちゃんと…」

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