ライム物語

第五話 火曜日に赤い姉が攻めてくる(4)


「あわわわ…」情けない声を上げる十文字。

手際よく服を剥ぎ取られ、たるんだ体と縮こまった息子を晒している。

隠したくても手足が動かせない。 マダム・ブラックの変形したベッドに拘束されているのだ。

「ふっふっふっ…さっきはせせこましい所で不本意な攻めだったが…」スカーレットが不気味に笑いながら赤い手を十文字の息子に差し

伸べる「今度は好きに出来る」

少し固めの冷たい手が十文字の息子を掴み、強めに揉み解す。

息子は手から逃げ出そうとするかのようにうねり、細く赤い指から頭をもたげては、また中に押し込められを繰り返す。

「むっ…来た来たきたぁぁぁ!」十文字は叫んだ。

『スライム姉妹の次女にして最も危険なスライム!それが『炎のスカーレット』!性格はスライム姉妹の中では最も短気、それゆえ失敗も

多い!』

「なんだとぉ!」

『『洗脳力』はプロティーナよりやや上。ユニークな能力として『三次元光学スキャン』と『硬度変化』を持ち、見た物の形を真似ることが可能!

但し色は変わらない。ライムの『防御』に対し、スカーレットは『攻撃』の性を持ち対をなしていると言える。そして、最も危険なのは…』

ぴたりと十文字の口上が止まり、なにやら唸りだす。

スライム一家は固唾を呑んで十文字の言葉を待った。

『危険なのは…ああ、判らない!』十文字は悔しそうに漏らした「うーん…危険な性癖を持っているのは判るのに…どうして?」

十文字は大事なことを失念していた。彼の能力は対象が先天的に持っている能力か、現時点のスペックに限定されている。

よってスカーレットが後天的に獲得した事、例えば『趣味』等は読み取れないのだ

「貴様の『超能力』とやらはその程度か」

スカーレットそう言うとゆっくりと手を上げ、何かを考えているかの様に手のひらをじっと見つめた。

「特別に教えてやるか…くっくっくっ…」

「いえ!別に知りたくないです!」

スカーレットの手が細長く伸び、次の瞬間それは細長い刃となる。

「!」

ヒュン… スカーレットが手を振ると、危険な風が渦を巻き十文字の髪の毛が一本、宙に舞う。

そして赤い刃が稲妻のごとく縦に走ると、髪の毛は二本になってしまった。

「ひぃ…」声にならない悲鳴をあげる十文字。

「見たか、我が腕を」 スカーレットは刃と化した己が腕を十文字に突きつける。

眼前の真紅の切っ先に、十文字の目が寄ってしまう。

「見ました!よーく見ましたから!すごい腕前です!ですからしまって下さいそんなもの」

十文字はスカーレットの『腕前』をほめたつもりだったが、言われたスカーレットの表情が険しくなった。

「なに!そんな物とは何だ!よく見んかぁ」ぶんぶんと『刃』を振り回し、再び十文字の目の前に突き出す。

「かの名刀『正宗』!その美しい曲線、完璧な切っ先、その刃の形を完璧に再現したこれを『そんな物』とは何だ!」

「すいません!いえ、もちろん素晴らしい曲線です!」慌ててスカーレットに同意する。

「そうか、判るのか!」スカーレットは顔を綻ばせた「これだけではないぞ!」

言いながら腕の形を次々に変えていくスカーレット。 日本刀、青竜刀、ソード、ダガー、アーミーナイフ、ハンティングナイフ、刺身包丁、

中華包丁、菜切包丁…

「見よ、『刃』の形の美しさ!機能を満た過程で生まれた究極の機能美を!それが判るか!」

「はい!判りますとも」十文字は必死に相槌を打つ。

(あわわわ…刃物マニアだったのか。確かに『危ない』趣味だけど)


スカーレットの講釈は延々と続き、さすがにマダムブラックが口を挟む。

「スカーレット」

スカーレットははっとして口上を述べるのを止めた。

「すみませんお母様。つい…」

「もう気が済んだでしょう『人体改造』の続きを」

「はっ」応じて振り返ったスカーレットの右手は…でっかい出刃包丁。

「わー!!!」青くなってじたばたと暴れる十文字。

「おっと、間違えた」スカーレットは頭をかきながら右手を元に戻し、黒いベッド(マダム・ブラック)に拘束されている十文字の体に上り、

足に跨る。

そして、腰で十文字の足を摩り始めた。

(あれ?)

スカーレットの尻は固くつるりとして作り物のような感触だ。 テーブルの下のスカーレットの責めとは違う。

(あれはアクエリアさんだったのだろうか…わっ?)

ヌルルルル… 突然冷たいクリームが塗りつけられるような感触が加わる。

「おおっ?」

スカーレットが腰を擦り付けているところが真っ赤に染まっている。 十文字はぎょっとしたが、それがスカーレットの一部である事に気づ

いた。

ロウソクか石鹸が塗られている様な感じだが、赤い液体は確かに生きていて、そのヌメヌメした感触をが次第に足を覆っていく。

「ぬっ…」

赤い液体は十文字の皮膚を舐めるようにして広がっていく。

(冷たいような…柔らかいような?)

そう、スカーレットは時に液体、時に濡れた薄幕となって十文字の足を包み込もうとしていた。

「あの、なにをする…いやなさるつもりですか」

「頭の悪い奴だな、お前を『改造』するのだ。こうやって」

小さな手が十文字自身を撫で始めた。 

固く感じたのは最初だけ、すぐに足の辺りと同じよう滑った感触に変わり、油で濡れたゴム手袋で揉まれているようだ。

「うぁ…」 十文字はスカーレットの指が中まで潜り込んでいるような錯覚を覚えた。

そして、男性自身の中で生ぬるい蛇が出口を求めてうねり始めた。

「ふっふっふっ、妙な気分になってきたろうが」

「…そんな事はない…ひっ…ぞっ…」

すでに赤い液体は十文字の下半身を覆いつくし、男性自身もスカーレットに包み込まれていた。

スカーレットが目を細めると、尿道に何かが滑り込んでくる。

「くっ…また…」

「では…行くぞ」

抑え切れない喜びが男根の芯を震わせ、スカーレットに誘われるままに十文字は弾けた。

「ああ…ぁぁぁぁぁ」

ドクドクドクドク… 男根を覆っていスカーレットが膨れ、そして縮む。

同時に十文字の頭の中に、赤く冷たい快感がするりと入って来るのを感じるが、抵抗できない。

「ふぅぅ」「はぁ…」

スカーレットは下半身を液化、十文字に纏いつかせた格好で十文字の胸に倒れこんだ。


「あ…」 奇妙な感覚に浸っていた十文字は、すっと腰から下が軽くなるのを感じた。

視線を鏡にやって自分を確認すると…自分の下半身がスレンダーになっている。

「…女の下半身…」力なく呟く。

頭の中で赤い物が渦を巻き、自分の思考が出来ない。

「ふぅ…なかなか難しいな」スカーレットは体を起こすと、今度は十文字の胸に舌を這わせた。

「あぁぁ…」十文字が喜びの声を上げる。

「さぁ、もう一息だ」

「はい…頑張ります」

スカーレットは十文字の顔を手で挟んでその唇を奪い、十文字はスカーレットと舌を絡めあう。

二人の上半身が摺り合わされ、十文字の上半身も赤く染まっていく。


−−同時刻、コーポコポが望める電信柱の影−−

「あそこがあの謎の生き物達の住処か…」緑川教授が呟く。

「彼らが何者であるにしてもこのままにはしておけんな…」

教授は呟くとその場を後にした。

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