ライム物語

第四話 月曜日に妹が我侭を言う(4)


「ちょっと待ったぁ!」

十文字が駆けて来ると、金雄とライムを引っ張っていく。

「おい?」 ミッ?

十文字は、戸惑う二人を電気店「火の玉」のショーウインドゥの前まで引っ張って来た。

その途端、ショーウインドゥに並べられたディスプレの画像が切り替わり、一つの大型スクリーンのように繋がった絵を映し出す。

「背景と効果音はまかせろ!」と電気店の親父に合図を送る十文字。

「おお、こいつはいい!」 ミャー!!

驚き喜ぶライムと金雄。 全ての準備が整った!


アップテンポの何かのテーマソングが背後から流れ出し、背景は『いつもの石切り場』に変わった。


「むん!」  ライムを乗せた右手が左斜めに突き出される。    背後で爆発。

「粘着…」  右の手のひらが上を向いたまま左から右へ弧を描く。 手の動きにエコー 

「やあっ!」 気合と共に突き上げられる右手、ライムが立つ。   右手を中心に光学効果。 

ミアッ!   ライムの気合。 ライムの顔が大写し。


背景がまぶしい白に変わり、二人が実映像から影絵に変わり、同時に金属的な効果音がかぶる。

ライムのシルエットが形を崩し、金雄の腕を伝い流れ、ライムの流れに会わせて背景は白からピンク色へ。

力強い腕はたおやかな曲線に変わり、若さ溢れる肩がやさしさを秘めた丸みを帯びる。

寸胴の腰がきゅっとくびれ、短い足はすらりと長く…

白い背景がピンク色に染まりきる頃、ポーズを決めた着衣の少年の影が、均整の取れた裸体の少女のシルエットへの変貌を終える。


思わず身を乗り出し、食い入るように見つめる野次馬一同。


「強化!」 爽やかな少女の声が響き、少女のシルエットが両手を交差させた。 背後で抑え目のハレーション。


少女のシルエットの顔以外の部分が一回り膨れ上がり、細めで女らしさを備えた仮○ライダー一号タイプのボディと変わった。

同時に背景は深い緑色に変わり、『ライム』が実体を取り戻す。(なぜか漏れる失望のため息)

『ライム』は手を腰に当てて胸をそらし、高らかに名乗った。

「人呼んで、強化粘着 ライム・スター!」


タンタカターン!  ファンファーレと共に背景に大写しになったのは…『提供:電気店「火の玉」』

「あっ!」「電気屋め…」「その手があったか」 悔しがる商店街のほかの店主達。

野次馬の様子に首をかしげ、『ライム・スター』は背後を振り返った。

「…十文字さん?これどういう事?」

見れば十文字は電気店の親父と握手しており、反対の手には『薄謝』とかかれた封筒を握り締めている。

にこにこしながら『ライム・スター』に歩み寄る十文字。

「まぁ、まぁ」と言いながらすばやくマイクを取り出す。

『ついにその名が明かされた、新たなヒロイン『ライム・スター』!須他金雄にライムが『粘着』して一つとなった時、そのヒロインは降臨する!

では『粘着』プロセスを詳しく見てみよう!』


「えっ?」 十文字が何を言っているのか判らず固まるライム。

「ふむふむ、『粘着』プロセスと…」 クリップボードになにやら書いている緑川教授。

「なんと…スポンサーまで見つけていたなんて」 驚くアクエリア。


『ライムが形を崩し手を包み込んだとき、金雄はライムの手が自分の手を握り締める錯覚に囚われる。

 目を閉じてしまえば、等身大のライムが細い指を絡めて居るのが感じられる。

 手から腕に流れ落ちるライムの感触は、腕に少女の肌が絡みついていくようだ。

 ありえない…人間の男女の抱擁では、互いを完全に抱き閉めることはできない…

 しかし、ライムにはそれが出来る…気がついたときには、肩までがライムで覆われている。

 ライムの手が悪戯するように背中と胸にすべり込み、背筋と乳首を優しく撫でる。

 うなじがくすぐったい…ライムのうなじが金雄のうなじと擦れあっている。

 微かに開けた唇がまさぐられ…一瞬の後には甘く香る少女の唇が少年の唇と完全に重なり、舌を奪う。

 思わずそらした胸もすぐライムに奪われる。

 慎ましい少女の乳首が、少年の乳首に合わさり、微妙に揺れながら互いを確かめ合う。

 腰周りを探る手がくすぐったい…耐える、耐える、耐える…

 だがライムは容赦しない。 

 わずかに冷ややかな手が、熱く粘り始めた物を軽く触った。

 少女の指が絡みつき、愛しげに撫でる…撫でる…撫でる…

 微細な愛撫に気を取られている内に、ライムはそこ以外の全てを包み込んでいた。

 少女の皮膚に包み込まれ、優しく愛撫される金雄の体は幸福感に満たされ、その魂の迸りが股間に集まる。

 熱いとも冷たいとも付かぬ快楽のうずきが、金雄の男の中でのたうち、それをライムの手があやしている。

 暴れる亀頭を撫で、鈴口をなぞって金雄自身を手なずけるように。

 「い…く…」金雄の中の『人』がついにライムに屈服する。

 ライムが金雄の全て包み込むと同時に、金雄は己が全てをライムに委ねる。

 甘く冷ややかな快楽の波は股間から全身に溢れ…そして終わらない。

 彼が望む限り続く至福の快楽の海に金雄はたゆたい、ライムは少年の体を自由にする力を得た。

 こうして『ライム・スター』は誕生する!

 その『粘着』過程はわずか十数秒で終了するのだ!…あれ?』

夢中で『解説』していた十文字が我に返ると、皆が彼の回りに群がり、鼻息を荒くして彼の話を聞いているではないか。

おまけに彼の足元には、赤いワンピースのプロティーナがしゃがみこみ、興味津々といった様子だ。

「十文字さんのばか…知らない」 『ライム・スター』は恥ずかしそうに顔を覆ってしまった。


「あーこれ十文字君。確認するが『粘着』プロセスは十数秒で完了するのじゃね?」

「げっ、教授!…えーそうですが、それが何か?」 

教授はふむふむと頷くとクリップボードに書き込んだ「須他君は『早い』…と」

グサッ! 『ライム・スター』の胸が音を立て、彼女は胸を押さえて仰け反った。

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