ライム物語

第二話 土曜日に追いかけられて(3)


…フミッ? 不意にライムが金雄の耳を引っ張った。

「何?ブティックがある?」 金雄は足を止めてライムの方を向き、彼女の視線の先を追った。「『ピンク・サブマリン』…

ここはフィギュア専門の模型店だぞ」

「…なるほど」十文字が頷いた「ここなら、彼女に丁度いいサイズの服があるんじゃないか」

十文字の言葉に頷く金雄。「そうだな…でも今日はくたくただよ。明日また来よう」

ミュー… 名残惜しそうなライムを宥めつつ歩き出す二人。


「うう…きっと『へっへっへっ、お兄さんがお洋服を買ってあげようねぇ。可愛いライムちゃんに…』とか何とか言っているに

違いないわ…」

街灯の陰から覗き見ながら、アクエリアが呟く。 フード付きのマントがフルフル震えるのは怒りのためか。

「あっ!あいつはライムと話している!?ということは…ライムはあの男に…可愛そうなライム」長い袖で目元を押さえる

アクエリア。

と、アクエリアがライムと金雄の関係をあれこれ妄想しているうちに、金雄達は再び歩き始めた。

気づかれないように、後をつけるアクエリア…車椅子で。


「ん?」十文字が振り返る。物陰に車椅子が滑り込むのが見えた「…」

「どした?」金雄が尋ねた。

「いや…なんかこう…さっきから車椅子の人がずっとついて来ている様な…」

「気のせいじゃないか」と流す金雄「つけられる覚えはないぜ。それに、車椅子で尾行する奴もいないだろう」

「そだな…」

ちにみにライムはさっきの模型店が気になって、アクエリアに気がついていなかった。


「やれやれ、一階に部屋があると楽だな…十文字?」金雄は背後の十文字を振り返った「なんか用か?お前の部屋は

上だろう」

「いや…俺の部屋のフイギュアの服がライムちゃんに合わないかなー…なんてな」頭をかく十文字。

ミッ? ライムは十文字の申し出に興味があるようだ。

「…見てみたい?なら言って来いよ。俺?まぁ気が向いたら…」めんどくさそうに言う金雄。

ムー… ライムは金雄の態度が少し気に入らない様子だったが、結局十文字について行った。


「…」一人になった金雄は部屋を見回し、ベッドに背中を預けた「静かだな…」

別に昨日まで…いや、一昨日までと変わらないはずなのだが…なんとなくさみしい。

テプテプテプ… 奇妙な音がした。

「…?」首を回して辺りを伺う「雨漏りか?」

タムタムタム… 音の調子が変わった。

「…窓か?」

外はもう暗くなっているはずだ。 金雄はカーテンを開けた。

「なっ?」曇りガラスに奇妙な陰が映っている。 外に誰かいて、窓をノックしていたらしい。

「どちら様です?御用があるなら玄関から…」金雄は深く考えずに窓を開けた「でっ!?」

そこにいたのは、車椅子に座ったフード付きマントの人物であった。 体が全く露出していないので年齢性別が全く

わからない。

「どどど…どなたですか!?」驚く金雄。

「ライムを…」マントの奥から女の声が響いてきた「返せぇぇぇぇ…」

「ライム?」金雄はマント女の不気味さに後ずさりしながら聞き返した「ライムの…関係者ですかぁ」

マント女はフードに手を掛け、一気に脱いで顔を見せた。

「でぃぇぇぇぇぇ!!骸骨の化け物ぉぉぉ!」叫ぶ金雄。 彼の言うとおり、フードの下にあったのは…奇妙に歪んだ

骸骨の顔であった。

マント女転じて骸骨女(たぶん)は、手を伸ばして窓枠を掴むと、マントを脱ぎ捨てながら、這いずるような感じで窓から

入って来る。

「どぉぉぉ『リング』ぅ…!」あたふたと逃げようとする金雄。しかし腰が抜けて思うように動けない。 その足首を骸骨女が

掴んだ。

ヌタリッ 意外に肉付きのよい、しかしぬるぬるした冷たい感触に鳥肌が立つ。

「あわあわあわわっ…どっ?」金雄は骸骨が歪んで見える事に…何かが骸骨を包んでいるのに気がついた「こ…これは?」

「あら…もうばれたのね」骸骨が顔を上げた…と、すーっと骸骨が見えなくなり、代わりに奇怪な女体が現われた。

ゼラチンのような質感で、一見すると透明なようなのだが、向こう側が見えない。 不透明な透明人間とでも言うの

だろうか。

「き…君は誰だ」

金雄が女を睨と、女が顔を上げて睨み返す。 意外に若い…というより幼い顔立ち。 人間ならば中学生から高校生

辺りだろうか。

「ライムを、妹を返して」少女が金雄の足を握ったまま言う。

「妹?ライムが?じゃあ君は…」

「アクエリア。ライムの姉よ。貴方達ね!ライムをたぶらかして家出させたのは!」 アクエリアが金雄を睨みつける。

「たぶらかす?家出?なんのことです」きょとんとする金雄。

「とぼけないで!家から出たことの無い箱入り娘のライムが急に家出するなんて…誰かにたぶらかされたに決まって

いるわ!」

「ちょっとちょっと…えーと、なんだか話がみえないんですけど…」

アクエリアの言う事がは支離滅裂な上に、経過を知らない金雄がいきなりそんな事を言われても理解できるわけが無い。

それにアクエリアは、金雄が全てを知っていると思っているので事情説明を省いてしまった。 これでは話が通じるわけが無い。


金雄は、とにかくアクエリアを落ち着かせないと宥めにかかる。

「まあ、落ち着いて。話をしよう」

「まぁ、私までたぶらかそうというのね。そうはいかないわ。こちらが先にたぶらかしてやる!」

アクエリアがそう言った途端、金雄の足首を握っていた手の形が崩れて透明なゼリーのようになり、金雄の足を伝って

昇り始めた。

「げっ!」足を振ってアクエリアを蹴り飛ばそうとする金雄…しかしアクエリアに掴まれている方の足が動かせない。

「逃がさない」アクエリアが呟く「私に包まれれた所は自由に動かせなくなるのよ」

「なっ…ご説明ありがとよっ!でどうする気だよ!」 金雄の問いにアクエリアは答えない。 

自由になる方の足でアクエリアを蹴飛ばそうとする金雄。

しかし一瞬早く、ズボンの中を粘り這うアクエリアが金雄自身を包み込む。 

途端に硬直する金雄。(う…動けん)

ズボンがもこもこと動くき、ジッパーがひとりでに開く。

ズルズルとゼラチン上のものが盛り上がりながら、ズボンとパンツを器用に脱がしていく。

(うわっ)下半身をむき出しにされた金雄。 

震える男根はゼラチン状の少女の口に呑み込まれ、中で弄ばれているのが良く見える…鈴口がほけっと開いて、

中に何かが入ってくる所まで…

(ああ…入ってくる…だめぇ…)

「このまま『洗脳』して…お母様の所まで連れて行ってやる」

アクエリアは金雄のモノを咥えたまま、形を緩やかに変えて69の体勢に持っていこうとしていた。

床に転がる骸骨は、さっきまでアクエリアの中にあった物だろうか。

(あわわ…まさか俺も?…た、助けて…助けて!)金雄の心に恐怖が生まれる

「助けて!ライムゥ!」

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