王子とスーチャン

幕間劇(1) 『スライム姉、弟の初めてを』


  配役

  姉:スーチャン

  弟:ルウ王子

 はぁ……

 ルウは窓から星を見てため息をついた。 最近、姉の様子が変だ。 両親にそれとなく相談したが、ただ笑うだけ。

 (やっぱり、気のせいなのかなぁ……)
 

 カチリ……

 背後で小さな金属音。 コミックの主人公なら、振り返りもせずに銃を抜き、肩ごしに一発撃ってキザなセリフを決める

ところだ。

 「スー姉ちゃん。 ノックぐらいしてよ」

 文句を言って机に突っ伏し、視線を下から背後に向けて、ドアのほうをうかがった。 逆さの視界に姉の白いソックスが

見えた。 緑色の足と見事なコントラストを成している。

 「え!?」

 椅子ごとと振り向くと、セーラ服姿の姉がそこに立っていた。 そして……緑色の半透明の瞳がルウをじっと見つめている。

 「お、お姉ちゃん!?」

 ルウは大声を出し、椅子から滑り落ちた。

 「……ドウシタノ? オ姉チャンドコカヘン?」

 すっとスー姉がしゃがみ、椅子から落ちたルウに顔を近づけ、手で顔に触れる。 その手も半透明の緑色だ。

 「か、顔が……手、手もー!」

 ルウは、背でいざりながら部屋を半周した。

 「ナゼ、オ姉チャンヲ避ケルノ?……アッ」

 立ち上がったスー姉は、ぐらりとよろめき、ぱたりと倒れた。 


 「お、お姉ちゃん?」

 ルウは慌てて立ち上がり、姉に駆け寄って上から覗き込んだ。 すると、近寄ったルウの足を姉の手が掴んだ。 

 「ツ・カ・マ・え・タ」

 「いやーっ」

 思わずとび下がるルウ。 次の瞬間、目に入った光景に硬直した。 

 「手が……」

 姉の手は、弟の足をつかんだままだった。 腕から先は蛇のよう床をはい、倒れた姿勢のままの姉の肩に繋がっている。

 「コワガラナクテモイイノヨ……」

 「ひっ!」

 冷たく粘りつくような姉の手が、足首を撫でまわし……いや足首を包み込もうとしている。

 「ナデナデシテアゲル……」

 緑色の薄幕に包み込まれた足先は、本当に姉に撫でられているような感じがする。 そして、その幕はじわじわと太ももを

つたい上がって来ようとしている。

 「そ、そこはズボンの中……駄目ェー」

 長く伸びた姉の腕はひくひくと蠢き、ルウを捕まえた手は、愛しげにルウを撫でる。 そして、姉の体は

 「あ……ね、姉ちゃんがペチャンコになってく?」

 倒れた姿勢は変わっていないが、白いソックスが中身を失ったように平たくなって、いやソックスだけではない、紺のスカート

も、白い制服も、風船から空気が抜けるように潰れていく。

 ジュルリ、ジュルリ……

 「ひっ」

 腕だ、姉の体は腕の中を、あるいは腕そのものに形を変え、移動しているのだ。 ルウの……ズボンの中、いや

 「姉ちゃん! パンツの中ー!」

 ルウの悲鳴が上がる。


 ルウはベッドの端をつかみ、うつ伏せで耐えていた。

 姉は、パンツの中まで来ると、直接敏感な所を攻めず、まわりを攻める手に出てた。

 「いやぁ……」

 背中にぴったりと抱きつき、おなかを撫でている姉の姿が脳裏に浮かぶ。 しかし鏡を見れば、シャツ姿の自分が映って

いるだけ……ただシャツやズボンが異様な形に膨らんで蠢いているだろうが。

 「ンフ……」

 耳元に姉の息遣い。 姉は背中のシャツの中をくぐり抜け、うなじにペッタリと張り付いている。 背後から抱きしめられているようだ。 

 フニ……

 乳首に柔らかなものが擦り付けられる。 姉の乳首だろうか。

 ニュムニュムニュム……

 大事なところのまわりで粘っこい感触がしている。 なんだろうか……

 「ふぁ……」

 もどかしそうに身をゆする。 なんだかわからない衝動が、体の中を突き上げる。

 「るう……」

 姉の声が濡れているようだ。 体をまさぐっている姉の動きが切ない。 

 「おねがい……」

 「自分デ……」

 姉の言葉に体が反応する。 服を脱ごうと、のろのろと手を動かす。


 ドンドンドン!!

 扉が激しくノックされた。

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