パイパイパー

3.女神と少年(9)


 フ……

 エミは口元だけで笑うと、ドドットまで3歩程の場所に腰を落とし、そのまま仰向けになった。

 「?」

 ドドットがエミの意図を測りかねていると、エミは悩ましげに足を組み替える。 エミの魔性の源が、チラチラと足の隙間から覗く。

 (む……これは凄い……)

 わずかに視界に入るそれに、ドドットは引き寄せられるような錯覚を覚えた。 先ほどまでとは比較にならない妖しさがある。

 「さて、ミスター・ドドット。 ここから先は本気で勝負してみない?」

 「なに?」

 ドドットは目を剥いた。

 「私も『火が付いた』みたいなの。 このまま貴方を迎えると、たぶん抑えが利かないわ」

 「手加減なしで、精を吸い取ると言う意味か?」

 エミは軽く頷いた。

 「でもこのままだと、貴方は何れパイパイパーに魂を奪われ……あちら側で吸い尽くされるか、パイパイパーの下僕に生まれ

変わるか……」

 「まぁ、そうだろな……で? それくらいならお前さんに『喰われ』ろと?」 ドドットは憮然とした表情で応えた。

 「私に吸い尽くされれば。 でも貴方は護衛がお仕事、そっちの方も強いんでしょう? うまくすれば、貴方の精が尽きる前に、

私の方が『満腹』になって『火が消える』かも」

 「確かなのか? それは」

 「さぁ?」 エミは口元だけで笑って見せた。 「そこまで『強い』人に会ったことないわ…… 他にいい思案が有れば相談に

応じますけど?」

 ドドットは両手を上げた。

 「こうなりゃ自棄だ。 エミさんよ、真剣勝負だ」

 そう行ってドドットは『剣』を構えた。


 「いらっしゃい」 そう言って、エミが足を組み替えた。

 (ぬっ……)

 ドドットはの体が凍りつく。 エミの『魔性』はテラテラと光る『花』の様だった。 それが、息づくように開いたり、閉じたりしている。

 (開いた……ああ、閉じた……また……)

 ズシッ

 足が下生えを踏みしだいた。 意識せぬまま、足が前に出たのだ。 見ているだけで、意識がどこかに飛んでいくようだ。

 (い、いかん……受けに回っては)

 ドトットは勇気を奮い起こすと、エミにの足の間で腰を落とす。 そしてエミの『魔性』に己が『剣』を宛がう。

 ニュリッ

 「くっ……」

 エミの『魔性』がドドットを受け止めた、と思ったらクイクイと中に引っ張りこもうとしている。 柔らかな襞は、別の生き物のように

蠢いてドドット自身を咥えこみ、舐めるように襞が前後し始めた。

 「くうっ?」

 己が『剣』が、じわじわと冷たくなってきた。 不思議なことに、その冷たさが痺れるように心地よいのだ。 冷たく、冷たく……

腰のモノが冷えていき、其れが次第に伝わって……

 「そのまま……吸われたいの?」

 エミが、微かに濡れた声で囁いた。 はっとそちらを見ると、金色の光を帯びた瞳でエミがこちらを見ている。

 「それもいいが……まだだ!」

 自分でも何を言っているなんだろうと思いながら、ドドットはエミの中に腰を突き入れた。 冷たく痺れかけた『剣』が、馴れ馴れ

しく絡み付いてくる肉襞を掻き分け、エミの奥に吸い込まれる。 そして『剣』の先端が、玉のようなものにぶつかった、と感じた。

 うっ……

 アウッ!

 玉に触れた『剣』に冷たい痺れが走る。 今までとはけた違いの『冷たさ』が、『剣』を伝わってドドットを襲う。

 あっ……ああっ……

 腰の辺りに痺れが広がり、『剣』の根本にある『命の珠』心地よい痺れに縮こまっていく。 桁違いの『魔性の快感』にドドットの

動きが止まり、上体がエミの胸にうずまる。 

 オウッ!

 おおおお……

 エミがドドットを抱きしめてきた。 遠慮のない力で、逞しい体が妖しく柔らかい果実に半ばうずもれる。 同時に、エミの体から

えも言われぬ妖しい香りが立ち上ってきた。

 シタールの体は乳の匂いがしたが、エミの体からは女の匂いがした。 それも男を誘い、捕まえて離さない極上の女の。 

 (……このまま……でもいいかな……)

 エミの胸にうずもれながら、次第に重くなっていく目をこじ開け、ドドットはエミの顔を見た。

 「む!」

 エミは瞳を金色に輝かせ、赤い唇から長い舌をだして、よがっていた。 そしてドドットを見ると、激しい口づけを求めてきた。 

その瞬間、ドドットの体の中に『火がついた』。

 「ぬおおっ!」

 気合を込めてドドットは腰を引き、一気に突き入れる。 『剣』が再びエミの奥を叩く。

 ハゥッ!

 うはっ!

 エミの足がドドットの腰にかみつく様に絡み付き、ドドットの『剣』に稲妻の如き痺れが突き抜ける。 すかさず腰を引き、突きこむ

ドドット。

 ハアァァッ!

 どっせい!

 ドドットの頭の中は真っ白だった。 一突きごとに、冷たい痺れが魔性の快感となって全身を突き抜ける。 同時に、彼の体の

中に火が燃え上がり、エミへの激しい欲望が沸き起こる。

 ガハッァ!

 うおおおっ!

 エミが魔物なら、ドドットは野獣だった。 遠慮のない二人の交わりは、理性のかけらも残らぬ激しさで森の静寂を引き裂いていく。

 
 ウガァァァァァ!

 エミが吠えた。 魔物の絶頂の凄まじさを森の中に響かせる。

 ぬぁっ!

 ドドットが吠えた。 魔性の快楽に全身の精が出口を求めて湧きあがり、それがエミの中に注ぎ込まれていく。

 ぬぁぁ……ぁぁぁ……あひっ

 ポテッと言う感じで、ドドットがエミの上に倒れた。 交わっていた時はすさまじかったが、終わった途端、それを根こそぎエミに

吸い取られたようだ。

 あひっ、あひっ、あ……

 ドドットはニ、三度痙攣した後、そのまま静かになった。 顔色は蝋のように白いが息はしている。 エミはドドットの顔を静かに

眺めていたが、そっと頬に手をふれ、その頭を胸に抱いた。

 「もう大丈夫ね、お疲れ様……」

 森に一時の静寂が戻る。 が、すぐにそれが破られることをエミは知っていた。


 「そろそろ……ね」

 少しして、エミはドドットの頬を優しく叩いて起こす。  決着の時が迫っていた。

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