パイパイパー

2.女神の洗礼(11)


ジュブル、ジュバ、ジュバ……

 卑猥な音を立て、オランの体の上をリタが、その両胸が這い回る。 乳房の重みと感触が胸を流れ、脇の下に滑り込み、

足の間を揉み解す。

 「ひっ!」

 ヌメヌメとした感触はいっそう強くなり、もはや人のものとは思えない。 そう、リタは人でなくなりつつある。 オランはそれを

悟った。

 「リタぁ……やめて……ひぇ」

 リタはオランをぐいと引き起こし、赤い目で彼を見ている、悲しそうに。

 ドウシテ……?

 リタは彼を抱きしめ、体全体で彼を愛撫する。

 キモチヨクナイノ? ネェ、キモチヨクナイノ?ネェ……

 オランは答えない、いや、答えられない。 リタの愛撫は体どころか、魂を直接撫で回しているかのよう。 口を聞くどころか、

物を考える事すらできない。 体が硬直して、棒になったかのようだ。

 「き、気持ちいい……き、キモチイイ……ぎ、ギモヂ、イイ……」

 アァ……ウレシィ……モット、モット……ヨクシテアゲル……

 リタは、硬直したオランの体をうれしそうに愛撫する。 愛しそうに、丹念に、心を込めて。

 「ヒィ、ヒィ……」

 固まった体の芯が、じわりと冷えていく。 じわり、じわりと、体の芯が冷たくなっていく。 

 「ヒッ!」

 突然その感覚が反転した。 冷たいのではない、熱いのだ。 溶けてしまいそうな熱、それはリタの愛撫で生まれた快感を、

オランの体が扱いきれなくなった結果なのだろう。

 「ヒッ、ヒッ……と、蕩ける……とろけるぅ……」

 灼熱の感覚が、快感に転じた。 オランの体は絶頂に硬直し、続いて蕩ける感覚に溢れかえった。 その感覚は行き場を

探して彼の体を行き来し、やがて行き場を見つける。

 ドクーリ……

 「あ……」

 熱いモノが、彼自身からゆっくりと吐き出される感触に、オランは汲めども尽きぬ精の泉と化す。

 ヒィィィィ……オラーン……

 リタが歓喜している、オランの熱い精を体内深くに受け、彼女もまた熱い絶頂を迎えた。

 イクゥ……イックー!!

 背を逸らし、絶叫するリタの背中から二条の白いモノが吹き上がり、飛沫を散らして大きく広がった。


 「翼?」 ルウが呟いた。

 「翼のようね、リタは『空の下僕』になるのね」

 「『空の下僕』……」

 「そう、パイパイパー様の下僕はみな、姿を変え、人でなくなっていくわ……大勢の人を愛する為に」


 「はひ、はひ、はひぃぃ……」

 オランは息を乱しながら、『何か』を堪えていた。 息が整ってきて、ようやく自分が『逝き』掛けていた事に気がつく。

 「リ、リタ……もう逝ってしまいそうだ」 

 オランの言葉にリタが首をかしげた。 翼が生え『空の下僕』となったリタは、神々しくはあったが魔物にしか見えなくなって

いた。 そしてオランは見掛けこそ若くなったが、精気をごっそりと吸い取られ粋も絶え絶えの有様だ。 後一回の交わりには

耐えられそうもない。

 「す、すまんが先に行くよ」

 以外にもオランの口調には、恐怖も感じられない。 むしろ、変わってしまった女房にすまなそうだ。

 「どうせ、お迎えが少し早まっただけだ。 俺は先に天に召されて、お前を待つ事にするよ」

 イヤ……イヤ、イカナイデ……

 リタが首を横に振った。 そしてオランを押し倒す。

 イカセナイ……イカセナイ!

 リタとオランの足が絡み合う。 

 「うっ!」

 オランのモノが、リタの中に吸い込まれた。 オラン自身を包み込むリタの温もりが、彼を硬くする。

 「リタ……ううっ」

 リタの中は、先よりさらに妖しく変貌していた。 熱い蜜が止め処なく湧き出て、彼自身を包み込み蕩かそうとする。

 キテ……キテッ!

 オランは素直にリタに突き入れる。 そして、魔物と化したリタの体内に踏み込んでしまった。

 「ううううっ! リタ……」

 熱くうねる肉が彼の股間のモノに巻きつき、蜜で包み込む。 そして快楽の舞踏に引きずり込んだ。

 「こ、これは……うぁ」

 イカセナイ……オイデ……オイデ、おらんワタシノ胎内ニ……

 「リ……」

 全部オイデ、おらん……アタシノ……アタシノモノ

 リ……

 リタの胸の間でオランの全身を妖しい衝撃が貫き、オランの意識が白く染まった。 次の瞬間、彼の体は蕩け始めた。 若い

オランの体が、白く粘っこい精の雫に変わって行く。

 気持ちいい……キモチイイ……イイ……イイ!

 言葉が次第に不明瞭になりながらも、オランはリタに愛を囁き続けた。 その体はトロリトロリと蕩けて、リタの体を白く染める。 

そしてオランだったものは、リタの女に吸い込まれていく。

 イイ……イイ……

 おらん……おらん!……

 魔物になった女と、溶けてしまった男の交わり。 それは、およそこの世のものではありえなかった。 幾人か正気を保っていた

ものたちも、その光景を目にして、自分の正気を疑い始めていた。

 グッ……

 低い一言を残し、オランはかけらも残さずリタの胎内に収まった。 リタはしばらくそのまま動かないでいたが、やがて翼を震わ

せて立ち上がった。

 おらん……アア、コレデズット一緒……ウフ……ワタシノ中ハ天国ヨリ、ズット居心地ガヨイワヨ……

 ああ……

 微かな、本当にかすかなオランの声が聞こえた。


 「オランさん?」

 「オランよ。 彼は魂だけになって、リタの胎内にいるの……」

 シャーリィがルウを振り返った。

 「あれこそが、パイパイパー様の下僕の役割。 その胎内に天国を作り、みなの魂を其処でもてなすのが」

 シャーリィが笑った、妖しく、そして残酷に。

 「一度捕まったら、もう逃げられない、肉の極楽で」 

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