パイパイパー

1.巡視達の災難(7)


夜の帳が閉じる前に、猟師と樵が数人やってきた。 中には家族を連れてきた者もいる。

 「何事だ」「何の合図だあれは」

 口々に尋ねる者たちに、村の衆が巨人とウースィ女、そして樵の犠牲者の説明を始めた。

 
 「結構集まったな」

 「ああ。 ドドット、おれたちも交代で不寝番に立とう」

 「やれやれ、泊りは教会か? 俺が先、中はシタール、空け前はタ・カークの旦那でいいな」 

 「……いいだろう」

 タ・カークとドトットはその場で分かれ、タ・カークはティ書記官とシタールが待つ教会に戻った。


 「ほう、かなり集まりましたか」

 「ええ。 ただ、猟師は全部で何人いるか判りませんが」

 「深夜は私ね、村の入り口でいいの?」

 「ああ、2、3回は誰かと辺りを廻ってくれ」

 「ええ、ただ明かりが足りるか心配よ」 シタールが松明を見せる。

 「少ないな」

 「明日になったら、森の木を使って松明を作っておかないと」

 「ああ、今夜は節約するしかないな」


 「やれ、えらいことになったなわね」

 「ん、とっちゃ達は交代で見張りに行ってるわ」

 「そぅ……竈の火落として、今夜は寝ましょう」

 村のあちこちで、同じような会話がなされ。 程なく村は闇に沈んだ。 まるで村全体が息を殺し、恐ろしいモノから

身を隠しているかのようだった。


 村娘のカリアは、粗末な寝台の上で寝返りを打つ。

 ギシッ……

 寝台の板が軋み大きな音を立て、彼女を微睡の中まで引き上げる。

 ウーン……

 口の中で欠伸をころがし、そのまま眠りに沈もうとする。

 ……パー

 微かな音が聞こえた。 意識せず聞き耳を立てる。

 …イパー …パイパー 

 不思議と耳に着く響き。 切れ切れの音の元を探す様に、耳がピクピク動く。

 パイパイパー♪ パイパイパー♪ ……

 ついに音が繋がった。 同時にカリアの目がパチリと開かれる。

 「……」

 カリアはふわりとした動作で立ち上がると、白い夜着のまま漂うように歩き、家の外に出た。

 パイパイパー♪ パイパイパー♪ ……

 不思議な音に誘われ、カリアは宙を滑る様に歩いて闇に消えた。

 
 ……

 …………

 ………………?

 カリアは目を開けた。 が何も変わらない。

 「真っ暗……。 ここはどこ?」

 呟いて身を起こす。 下が固い、岩か何かだ。

 「……」

 首をめぐらすと、背後にうっすらと岩壁が見えた。 振り仰ぐと、かなり高いところに同じような岩が見える。

 「洞窟?」

 洞窟と言うにはあまりに大きい空間の様だが、岩に囲まれた場所には違いない様だった。 突然のことにどうして

よいかわからず立ち尽くすカリア。

 ポトッ……

 「……?」

 首筋に何か当たった。 手で触ると濡れている。 天井から水か何かが落ちてきたのだろう。

 ポトッ…… ポトッ……

 今度は肩に当たる。 それで気が付いたが、来ていた夜着が見当たらない。 全裸だった。

 「大変、裸だわ」

 両手で胸を抱いて、乳房を隠す。 その間も容赦なく水滴が体に当たる。

 「……?」

 微かに良いにおいがした。 手で水滴を受け止め、匂いを嗅いだ。

 「……お乳の匂い?」

 天井から降ってくる水滴に乳でも混じっているのか。 ウースィかビクニャ(家畜の一種)の乳の匂いがした。 いや、

手を白く染めるそれは『乳』そのものだった。

 ポタリ、ポタリ、ポタリ

 乳の滴は、雨の様にカリアの体を濡らしていく。

 「どうしよう……」

 途方に繰れるカリアの耳に、誰かの声が聞こえた。

 ”心配するでない……そこで待つがよい……”

 それは、声と言うより心に響きいて来るようにも感じられた。

 「……待っていればいい……」

 カリアは何の疑いも持たず、その言葉を受け入れてその場に座り込んだ。


 ポタリ、ポタリ、ポタリ……

 乳の雨はカリアの頭から肩にかけてを白く染め、胸を濡らして大事な所流れて行く。

 「暖かい……」

 量が増え、それが人肌の温もりを持っていることに気が付く。 暖かな乳の流れが肌に纏わりつき、彼女の肌を

白く染めていく。

 スゥー ハァー スゥー ハァー

 「!」

 カリアは近くで聞こえた息の音に飛び上がった。 が同時にそれが聞こえなくなる。

 「……なんだ、あたしの息じゃないの」

 カリアは照れ多様に笑うと、また元の様に座り込んだ。 そして、じっとしている。

 ポタポタ、ポタポタ、……

 体に当たる暖かい乳の雨、それが体を優しく撫でる感触、心地よいその感触にカリアは身を任せる。

 スゥー ハァー スゥー ハァー……

 洞窟の中に、自分の息の音だけが響く。 目を閉じて乳の感触に集中すれば、それはまるで愛しい人の愛撫のよう。 

やさしい流れは、胸を這って乳首くすぐり、大事な茂みを濡らして暖かな泉を作っていく。

 ”さぁ……”

 また不思議な声が聞こえてきた。 意識することなくカリアが足を開くと、極上の温もりが神秘の門を優しくくすぐる。

 「あぁぁ……」

 甘いうめき声を漏らし、カリアは白く染まった手で、自分の秘所を慰める。 力強い百姓女の手は、別人の手の様に

優雅に動いて、カリアの秘所から甘い快楽の旋律を引き出した。

 「ひあっ!」

 体を走る快感に、カリアは身を硬くする。 

 ”さぁ……楽しみましょう……”

 宴が始まった。

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