ヌル

第四章 プロフェッサー(14)


 「アア……」

 ドクターから一瞬遅れて、プロフェッサーが喘ぎを漏らした。 彼女は上半身起こして騎乗位の姿勢を取り、そのままゆっくりと体を揺らし始めた。

 ヌプ、ヌプ、ヌプ……

 かすかな音が二人の接点から漏れ聞こえ、それにドクターとプロフェッサーの喘ぎ三重奏を奏でる。

 ジュプ、ジュプ、ジュプ……

 溢れ出す愛液を皺だらけのドクターの下腹に広げながら、プロフェッサーはクネクネと淫らな動きでよがっている。 その動きは意外なくらい大人しく、異常

な量の愛液とプロフェッサーの体から滴り落ちる粘液さえなければ、ふつうの男女の営みにしか見えなかった。


 「なんか……普通だな」 ドドットが呟く。

 「ドクターの体に負担をかけないためよ。 彼女がドクターを『愛してる』のは嘘じゃない。 ただ……」

 「ただ?」

 「多少、愛情表現が変わっているけど……」

 (そう言う問題かよ!?) ドドットは後の言葉を呑み込んだ。

 
 「アアッ……アアッ……」

 プロフェッサーは喘ぎながら、背後に倒れこんだ。 ドクター自身がプロフェッサーの中から抜け、むっちりとした太腿がドクターの腰から下を挟み込む。 

そして『松葉崩し』の形で、ドクター自身をプロフェッサーの秘所が包み込んだ。

 「ハァ……ハァァ……」

 プロフェッサーは激しく喘ぎ、自分の胸を揉みしだきながら、ドクターの腰に自分の腰を摺り寄せ、ドクターの腰がそれに応える様にゆっくりと円を描く。

 「ハ……ハゥ!」

 「う……あ?」

 プロフェッサーの腰の辺りが一瞬大きく膨らみ、すぐに戻った。 すると、さっきまでプロエッサーの腰や尻を挟んで動いていたドクターの両足が、見えなく

なってしまった。

 「あ……足が……ここは君の中か?……」

 ドクターからは見えなかったが、プロフェッサーの秘所は傘の様に大きく広がり、一瞬でドクターの足の付け根から下を、中へ咥えこんでしまったのだ。

 「アア……ソウ……ドウ……中ハ……」

 喘ぎながら、プロフェッサーは腰をゆする。  ドクターは両足を包む柔らかな温もりが、足に纏わりつくのを感じた。

 「う……ぁ……」

 ヌルヌルした感触が、足の肌を擦りあげる感触は、言葉にならない心地よさだった。 ドクターは、自分の足から下が、巨大な男根のになったかのような

錯覚を覚えた。

 「すごい……すごい……」

 うわ言の様に呟きながら、ドクターは自分の体丸ごとをプロフェッサーの中へと突き入れた。 足先が、ザラリとしたプロフェッサーの奥を突く。

 「ヒ……ィィィ……!」

 プロフェッサーの口から歓喜の呻きが漏れ、その下腹がボコリと膨れた。 そして下腹の皮膚が泡立つように蠢く。

 「うぉぁ……」

 ドクターの足に、プロフェッサーの肉襞が絡みつき、舐めるように蠢いた。 足を包み込む快感が背筋を駆け上がり、頭の中に生ぬるい快楽の波で満たす。

 「こ……ここか……ここが……いいのかぁ……」

 白目をむいたドクターは、うわ言のように呟きながら足先でプロフェッサーの中を探った。 一方でプロフェッサーの秘所からからは、愛液が溢れ出し、

淫唇が腰の辺りを舐めまわしている。

 ズブッ、ズブッ、ズブッ……

 淫猥な響きを立てながら、ドクターはプロフェッサーの秘所に腰を沈める。 深く、より深く……

 「ああ……たまらない……」

 ドクターは呟きながら、腰をつきこみ、グラインドさせる。 そしてドクターが動くたびにプロフェッサーの体が震え、そのの秘所は涎を流す第二の口である

かのように、ドクターの体をじわりじわりと呑み込んで行く。

 「蕩けそうだ……」

 「ウフゥ……ソウ……貴方は……蕩ケテイクノヨ……」

 ドクターにと言うより独り言のようにプロフェッサーは呟く。

 「私ノ体液……魔性ノ蜜ツボ……ソノ全てが……男を……至上の快楽で虜にし……蕩かすヨウニ出来ているノ……」 

 プロフェッサーが腰をゆすると、歓喜の呻きを漏らしたドクターが胸のあたりまでが、彼女の胎内へと呑み込まれた。

 「そう作ったの……貴方ノ為に……」  

 
 「……」

 「……えーと」

 「……何かいう事あるの?」

 「すみません、なにも言えません」


 「あぁ……あぁ……」

 すでにドクターは、首までプロフェッサーの中に呑み込まれていた。 すでに彼は巨大な男根そのもので、体を包み込む蕩けていく様な快感に支配され

ていた。

 「ウウッ……フゥッ!」

 一方のプロフェッサーも状況は同じで、男を貪る喜びに蠢く巨大な女性器であった。 そして、その目的は達せられようとしていた。

 「キ……キテェェェ……」

 「あ……いぐぅ……」

 食いしばった歯の間で快楽の叫びを噛み殺しつつ、ドクターはプロフェッサーの秘所へと姿を消い。 そして、数秒の後。

 「い……イァァァァァァァァ!」

 ベッドの上で、プロフェッサーは歓喜の雄たけびを上げた……たった一人で。

 ボコボコボコ……ボコリ……

 最後に彼女の下腹が蠢き、そして元へと戻る。 

 「クゥ……」

 一息漏らし、彼女はベッドの上に崩れ落ちる。 そして、静寂が部屋に戻った。


 「……ドクターは? どうなったんだ?」

 「もういないは。 体のすべて、毛一本残さずに蕩けて、子種に変えられてしまったの」

 「子種?……ってあれのことか、あの……」

 「はいはい。 そう、それよ。 さっきの男達もそうだけど。 特にドクターは念入りに蕩かされたから。 かなりの量になったと思うけど」

 「あ、いや。 そうじゃなくてだなぁ……おれの聞きたいのは」

 ドドットは口をつぐみ、自分の中でもやもやしている事を整理しようと試みる。

 「あの女は、一体全体なんだつてこんなことをしたんだ? あのドクターの子供が欲しかったのか? ドクターが死ぬのを見てられなかったからなのか?」

 エミは肩をすくめた。

 「ドクターを愛していたのは本当らしいけど。 自分を『ヌル』に改造したのは、前に言ったように減っていく人間の『血』を少しでも残そうとするためだったの

よ」

 「そこがよく判らんのだ。 じいさんが言ってた『受精卵』ってなんだ? 子供の小さいやつか?」

 エミは頷いた。

 「そんなところね。 『ヌル』は男と交わると、すぐに『受精卵』をつくる、平たく言えば妊娠するのよ」

 「なに? じゃあ……あの女は、さっきの男や、ドクターの子供を……」

 「ええ、子供を宿しているわ。 とっても小さな種みたいなものだけど」

 「へー……」

 「『ヌル』はね大量の『受精卵』を胎内で生かしておくことができるの。 そして自分が死ぬときに『受精卵』を『ヌル・スラッグ』に託すの」

 「……」

 「『ヌル』は、そうやって吸収した男たちの子供を『受精卵』として大事に保管し、子孫が残せる可能性を残す、 そのために作られたのよ」

 ふんふんと聞いていたドドットだったが、一つの疑問を口にした。

 「ちと聞きたいんだが……」

 「なに?」

 「その『受精卵』とやらは、人なのか、それとも『ヌル』の子供として産まれるのか? さっき、ドクターの爺さんはその辺は言ってなかったような……」 

 「いいところに気が付いたわね」

 エミはニコリともせずに応えた。

 「実は、『ヌル』が保管している『受精卵』を子供として産む方法は未完成なのよ」

 「え?……ええっ!?」

 「『ヌル』は男を吸収して、『受精卵』を作って血を残せる可能性を残す……だけどねぇ……どうしても、『ヌル』に『受精卵』を子供として生むところまで

作りこめなかった。  でも、そこまで完成させる為の時間も予算もなかった……そしたらあの女! 見切り発車で自分を『ヌル』化させ、私にこう言ったのよ。 

『受精卵を残すところまでは私がやったわ。 私は直にいなくなるから、あとは貴方に任せるわ』と……」

 「……いいのか、それで」

 「いいわけないでしょ」 エミの声は死神ですら震えあがって逃げ出しそうな響きを帯びていた。

 「あの女、最初から破たんする事が判っているPJを立ち上げ、途中までやっておいて、後始末を全部こっちに丸投げし、バックレるつもりなんだから!!」

 ドドットは、エミの剣幕にたじろぎながら言った。

 「言葉の意味はよく分からんが、あんたが重荷を背負わされたのは、よーく判った」


 その時だった。

 ガーーン!!!

 すさまじい音を立てて扉が軋んだ。

 『おい!! 悪の女幹部!! 私のパートナーを返せぇぇぇ!!』

 「な、なんだ!?」

 「正義の味方の到着ね」

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