ヌル

第四章 プロフェッサー(10)


 スクリーンを見つめるドドットとエミの視線を知っているかのように、プロフェッサーは見せつけるかのような動きで、女の傍らに膝をついた。

 ”ベチャリ……”

 プロフェッサーの手が、意識のない女の胸に張り付いた。

 『ひっ!?』

 女は一瞬で覚醒し、跳ね起きようとした。 しかし手足が床で滑り、無様に床の上に腹ばいになる。

 『あら、お目覚め?』

 からかうような口調で喋りながら、プロフェッサーは女に覆いかぶさっていく。

 『寄らないで! このXXXX、XXXXXX!』

 激高した女が喚き散らしているようだが、急に音声が途切れた。

 「なんだ? 声が出せなくなったのか?」 ドドットが首を傾げた

 「『検閲モード』が働いたのよ。 変なところでおかたいんだから」 エミが解説する。

 「なんのこった?」 ドドットがエミを見た。

 「ようするに、悪口や差別用語はカットされるようになってるのよ。 それでいて本番行為の画像はノーカットなんだから」

 エミの説明はドドットには意味不明だったが、エミはそれ以上説明する気がないようだった。 ドドットは肩をすくめて、スクリーンに視線を戻す。

 
 「いゃぁ……」

 「あら? まんざらでもないようだけど?」

 這って逃げようとする女を、プロフェッサーが背後から抱きしめる格好になっている。 ヌメヌメしたプロフェッサーの左手が女の乳房をゆっくりと揉みしだき、

右手が下腹部を撫でるように這いまわっている。 ズルリと伸びた右手が、やせ気味の女の足の間に潜り込む。

 「くうっ……」

 微かな声を漏らし、女の動きが止まった。 そしてアザラシの様に上体を起こしてのけ反る。 

 「いやっ……だめ……」

 「そう?」

 プロフェッサーの手が女の股間でいやらしく蠢き、クチャクチャと粘った音を奏でている。 女の顔が赤らんでいるのは羞恥の為か、それとも……

 「ああ……」

 「ほら……気持ちよく……なってきたでしょう?」

 プロフェッサーの言葉が聞こえているのか、女は歯を食いしばって耐えているようだ。 しかし、一文字に引き絞られている唇から、次第に力が抜けていく。

 「な……に……よ……こ……れ」

 「どう?……口に出してみなさい……」

 プロフェッサーが女の耳元で囁くと、その言葉に促されるように女の口から言葉がもつれだし、その口調は次第に熱を帯びていく。

 「あ、あたしのプッシーに……ス、スラッグがへばりついて……ああっ、そんなに中を……いやっ、クリトリスに……ああっ?……絡みついて……と、

溶けちゃう……」

 女は腰をゆすって、自分からプロフェッサーの手にプッシーを押し付けるようにする。 プロフェッサーは妖しい笑みを浮かべると、手をいっそう深く潜り

込ませる。

 「はぁ……中に……大きいのが……入って……ああっ!……うねってる……」

 プロフェッサーの手がゆっくりと前後し、そして女の胎内へと入っていく。 そして手の動きに合わせるように、緩慢な動きで自分の体を女に擦りつける。

 「ああ……」

 「どう?……これは……」

 「いい……とっても……」

 うっとりと呟きながら、女は首を捻じ曲げてプロフェッサーを求めた。 プロフェッサーは微笑みながら女の求めに応じた。 ヌメヌメと光るヒルの様な唇が、

女の薄赤い唇に重なった。

 「んー……」

 女の頬がゆっくりと動く。 中にプロフェッサーの舌が入り込んでいるのだろうが、現実とは思えない光景だ。 だが異様なその交わりが、女を更なる

快楽の中に引きずりこんでいく。

 グチャリ、グチャリ、グチャリ……

 「ああ……すごい……」

 プロフェッサーの腕は、肘近くまでが女の秘所に潜り込み、中をまさぐっている。 女の下腹がポッコリと膨れ、中で生き物が動いているかのように

前後左右へと柔らかく蠢く。 女はそれがたまらなく気持ちよいらしく、腰を前後に振ってプロフェッサーの手をさらに感じようとしている。

 「はぁ……はぁ……」

 「ふふっ」

 プロフェッサーは含み笑いをすると、手の動きを速めてきた。 女の動きがとまり、全身が赤く染まっていく。

 「ああっ……あああっ……あああああっ!」

 動物の様に腰を持ち上げたまま、ブルブルブルと激しく震えた女は、力尽きたように床に這いつくばる。 それに重なる様に、プロフェッサーが彼女に

覆いかぶさった。

 「はあはあっはあっ……」

 「フウッフウッフウッ……」

 一つの生き物のように、二人は床の上で重なったまま荒い息を沈めていった。

 
 『フフフ……気持ちヨカッタ?』

 プロフェッサーが女の耳元で囁いた。 女がのろのろと頭を上げ。プロフェッサーを見返す。

 『……はい……』

 答えた女の目は、ドロンと曇っている。

 『ソウ……それは、ヨカッタハ』

 そう言いながら、プロフェッサーはゆっくりと右手を女の胎内から抜き出す。 抜きながら、その指が複雑な動きで女の秘所を弄っている。

 『あ……は……』

 その動きが心地よいのか、女はうっとりと身を任せている。 その間にもプロフェッサーの右手は忙しく動き、秘所から太腿へと愛撫を移していく。

 「お? あれはなんだ?」

 ドドットがスクリーンを指さした。 女の秘所に薄青い線が無数に浮き出し、複雑な文様を作っている。

 「あれこそが『呪紋』、魔女の呪いの一つ……」

 「呪い?」

 「そう……あの魔女の体にも、同じように青い筋が走っていたでしょう? それと同じ種類のモノよ」

 「……なんの為だ? あの青い筋を描かれるとどんな事が起きると……」

 「あの青い筋に魔力を注ぐと、筋を描かれた人は人でなくなる……獣や……この世のモノではない別のモノに変わってしまうの」

 「な……に……」

 絶句したドドットは、スクリーンを指さしてエミに迫る。

 「あいつは、あの女もヌルにしようとしているのか!?」

 「少し違う。 あの魔女の力は半端な所があるの。 獣人にするのが精いっぱい……」

 「何に変えるかなんてのはどうだっていい! あいつは、今、あそこで、あの女を人以外の何かにしようとしていると、そう言うのか!」

 まくしたてるドドットに、エミは氷の様な声で応える。

 「ええ」

 「なぜだ! なぜそんなことをする!」

 詰め寄るドドットにエミが応える。

 「あの女を、生きながらえさせるため……」

 「……は?」

 予想外の答えにドドットの目が丸くなった。

 「後は……あの魔女に聞きなさい」

 スクリーンにエミが視線を戻し、つられてドドットもそちらを見る。 そして彼は目にする、『悪魔の儀式』を。

 
 「あ……あ……」

 女が声を震わせる。 プロフェッサーと女は、互いの秘所をすり合わせる、『松葉崩し』の体位で交わっていた。 プロフェッサーの秘所からは、とめどなく

粘液が流れ出し、二人の体を濡らしていた。 そして……

 「あ……アァァ……」

 女の秘所、そこから走る青い筋がうすく光り始めていた。 光る範囲は次第に広がっていく。

 「アァァ……か、体が……」

 「フフ……ぬるま湯に浸っているみたいで気持ちいいでしょう……」

 プロフェッサーの言葉に、女がカクカクと頭を振って頷く。 その間にも、光る範囲は、足、腹、胸へと広がっていた。

 「はぅ……気持ち……いい……」

 女の表情は法悦に緩み、体から力が抜けて弛緩している。 その体を、薄青い光を放つ筋が侵食していく。

 「フフフ……さぁ……変わるがいい……新しい姿に」

 邪な笑みを浮かべたプロフェッサーが、悪魔の宣告を下す。

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