ヌル

第四章 プロフェッサー(6)


 「あぁぁぁぁ……」

 男の体に、プロフェッサーの白い裸身が巻き付き、絞りあげる。 所々から覗く男の体は、しわが寄ったり、張り詰めたりし、もはや人の体というより、水の

入った革袋の様だ。 それでも、男の悦楽のうめき声は途絶えない。

 「と、蕩ける……ぁぁ……」

 「ああ、熱いの……貴方の熱いのを……もっと頂戴」

 ジュクン……ジュクン……

 プロフェッサーの下腹がうねり、『何か』が中に吸い込まれているのが判る。 そして、腕や足の隙間から覗いていた男の姿が、見えなくなってきた。

 『ぁぁぁ……ヴァァァァ……ボァァァ……』

 男の声がくぐもって聞こえづらくなってきた。 と、プロフェッサーが動きを止めると、組んでいた腕を開いてゴロリと床に転がった。

 「え……」

 そこに男の姿はなかった。 そしてだらしなく開いた足の間、ベットリと糸を引く秘所がモゴモゴと、何かを咀嚼するように動いていた。 そして……

 『ああ……気持ちいい……蕩け……』

 秘所の奥から、かすかな声が漏れ聞こえ……すぐに静かになった。 

 「ひっ!」

 床に這いつくばっていた女が、悲鳴のような息を漏らして床に突っ伏した。 恐怖で失神したようだ。


 「あれが『ヌル』に抱かれた男の末路か……男を食らいつくす魔性の女としよく言ったもんだ……」 呻くように漏らしたドドットの声が震える。

 「断わっておくけど、あの女は別格よ。 伯爵夫人たちと同列には扱わないで」

 「何? どう違うというんだ?」

 「おの女は魔女の力で自分から『ヌル』になったと言ったでしょう。 今でもその力は失っていない。 『ヌル』であるのと同時に魔女でもあるの」

 ドドットは、エの次の言葉を待ったが彼女はそれ以上説明しようとせず、視線をスクリーンに向けドトットも彼女に倣う。


 「ふぅ……さて……」

 プロフェッサーがゆっくりと上体を起こし、残った男二人と女へと視線を送る。

 「次は誰?」

 「……バ……バケ……!!」

 「!!」

 二人の男が口から泡を飛ばして何か言っているが、興奮しているためか意味のある言葉を話せていない。 プロフェッサーは、肩をすくめると床に座り込ん

で足を広げた。 男一人を?み込んだ秘所が二人の男の眼前にさらけ出される。

 「さぁ……みてごらん」

 濡れた糸を引きながら、秘所が口を開け、太腿に走る青い筋が脈打ちながら、二人の男の視線をそこに誘うかのように蠢く。

 「ここに……入りたくない?……ウフフ……」

 妖しく笑いながら、ゆったりと腰と太腿をうねらす。 それを見ているうちに、二人の男がだんだんと静かになっていく。

 「考えてもごらんなさい……銃を持って国の支援を受けている施設に乱入した貴方たちがどうなるか……たとえ逃げられたとしても……明日の食い扶持

……いえ命の保証すらないのよ……」

 プロフェッサーの切れ長の目が、まっすぐに男たちの目を見た。 二人とも静まり返ってしまっている。

 「おいでなさい……ここに……貴方たちが味わったことのない快楽の中で……昇天させてあげる……そしてあなたたちの血は……私がつないであげるわ

……」

 「あ……あ?」

 一人が手をついて立ち上がろうとし、粘液にまみれた床に転がった。 しかし気にする様子もなく、芋虫の様に這いずってプロフェッサーへと近づいていく。

 「うふふ……貴方からね……さぁ」

 プロフェッサーは粘液がしたたり落ちる手を男に差し伸べた。 男は憑かれたような目でプロフェッサーを見たまま、その手を取る。

 「おいで……」

 プロフェッサーが男の手を引くと、彼の体は濡れて光る女体の上へと覆いかぶさった。

 「ああ……」

 うわ言の様に声を漏らしながら、男は服を脱いでいく。


 「『血をつなぐ』……?」

 「『ヌル』はね、抱いた男の精を体の中で保管できるのよ」 エミはふっと息を漏らした。

 「『ヌル』となった女が人の子を産むことはできないわ。 でもその体の中で、男の精を生かし続けることができるの」

 「なんだと?」

 ドドットが面食らったような顔になる。

 「まぁ、貴方には理解できないかもね。 ともかく、『ヌル』となった女が生きている限り、彼女に抱かれた男のその地を受け継いだ子供が生まれてくる

可能性は残されるのよ。 あくまで可能性だけだけどね」

 「……」


 「うう……」

 プロフェッサーに抱かれた男が呻く。 股間の猛りは、すでにプロフェッサーにズッポリと呑み込まれ、粘っこい動きで愛されており、やせぎみの体は、ふく

よかで柔らかなプロフェッサーの肉体に半ば埋もれて蠢いている。

 「ああっ……ああ……」

 熱い吐息を漏らす男の顔は、悦楽の色に濃く染められ、プロフェッサーの滑る体の上を舐め、歯を立て、そして嬲られる。

 「ああ……貴方が震えている……ほら……私を感じて」

 プロフェッサーが呟くのと、男の腰が震え始めるのが同時だった。

 「うっ…ひううっ…ひううううっ……」

 うめき声を漏らしつつ、男は深々と腰をプロフェッサーに預けた。 男の精を感じたプロフェッサーの女性自身が、飢えた獣の様に男自身を貪る。 ドロドロに

粘りつく愛液に促され、男自身がいつ果てるとも快楽の中で、ありったけの精をプロフェッサーに捧げた。

 「……うぅ」

 男の体から力が抜け、プロフェッサーの胸に倒れこんだ。 プロフェッサーは笑って男の頭を抱き止める。

 「て、てめぇ……俺もさっきみたいに……」

 達したことで、正気が戻ってきたらしい。 しかし抵抗する気力はないようだ。

 「ふふ……そうしてあげてもいいけど……ぬふっ」

 プロフェッサーが妙な笑い方をし、男の表情が消えた。

 「あなたの隠された欲望を見せて……ああ……そう……」

 一瞬、遠い目になったプロフェッサーは、男の顔を正面から見つめると、恐ろしい言葉を口にする。

 「貴方は帰りたいのね……女の中に……いいわ、そうしてあげる」

 「……は? なにを……おおっ?」

 男の背中に回されたプロフェッサの指が、複雑な動きを始めた。 その指先が辿った後に、薄く青い筋が残っていく。

 「おい……なにを……」

 戸惑う男。 プロフェッサーの指の動きがくすぐったく、そしてじんわりと暖かくなり、不思議な心地よさに満たされていく。

 「ふふ……私は魔女だといったでしょう……貴方に魔法をかけてあげる」

 「なんだと……あ……」

 じわじわと体が暖かいもので満たされ、股間のそれがゆっくりと気持ちよくなって、奥からこみ上げてくる。

 「なんか……」

 「いいのよ……いって」

 妙にやさしく聞こえた言葉に促されるまま、かれは再びプロフェッサーに精を放った。 暖かく気持ちいい粘りを放つ快感に、彼は酔いしれる。

 「あ……いい……」

 ヒクヒクと脈打つ快感を堪能し、彼はため息をついた。

 「……いまのが魔法か?……れ?……なんか変だ……」

 男はプロフェッサーの抱き心地に違和感を抱いた。 粘液でヌルヌルして、肌が吸い付く様なのは変わらないのだが、ボリュームが増したような気がする。

 「お前……少し大きく……」

 「逆よ……貴方が少し小さくなったの」

 「な!?」

 「ふふ……さぁ……もっと……もっと小さくなるのよ……小さくなって……そして私の胎内に……」

 凍り付いた男の唇を奪い、プロフェッサーは再び男をなぶり始めた。

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