ヌル

第一章 伯爵夫人(8)


 「は……ぁぁ……」

 子爵夫人は力を抜き、下半身から伝わってくる愉悦に身を任せた。 柔らかく生暖かいな歓びの波が湧き上がり

背筋にネットリとへばり付いて来るようだ。

 「いいわぁ……ぁ……くるぅ……」

 ヌルヌルした快感は、彼女の鼓動に合わせて背筋を這い上り、彼女の魂へと迫ってくる。

 「いい……ぁぁ……ああ……ひぃ……」

 背筋を登り切った快感の極みが子爵夫人の頭の中あふれ出る。 トロトロと泉のように湧き出す快感には目の

眩むような絶頂はなく、春の陽だまりのでまどろんでいるかのようだった。

 「はぁ……いい気持ち……」

 うっとりと呟く子爵夫人に、セリアとミリは寄り添うと、ヌルヌルした体をしきりに擦り付けてくる。

 「奥様……」

 「よい心地でしょう……」

 子爵夫人は、二人を交互に見やると嫣然と微笑んだ。

 「ええ……こんな感覚は……生まれて初めて……あ……」

 ミリが子爵夫人の秘所に手を触れた。 そこからはヌルヌルとした愛の滴が溢れだし、薄紅色の花びらが、別の

生き物のようにミリの手を咥えようとする。 ミリは、花びらを指で挟むようにして、そこを撫でさすった。

 「ミリ……ああ……感じる……」

 「奥様……癒して差し上げます……」

 ミリは子爵夫人の足をさすってみた。 感覚が戻ったとはいえ、ずっと歩くことの出来なかった子爵夫人の足は、

見る影もなく痩せ衰え骨が浮き出ている。 ミリはその足に、白く滑る足を絡ませていった。 ミリの足は、ヘビの

ように子爵夫人の足に巻き付き、柔らかく締め上げた。

 「ああ……」

 子爵夫人が呻いた。 ミリの足の滑りがかさついた肌に心地よい。 ミリの足が彼女の足をヌメヌメと摩りあげて

くれるたびに、足に力が戻ってくる感じがする。

 「御覧なさい、奥様」

 子爵夫人が、言われるままにに自分の足に目を向けると。 ミリの足にまかれだ自分の足が少しずつ膨らんで

くるのが見えた。 そして、肌の色は透き通るように白くなってきている。

 「まぁ……」

 足が元の形に戻っていくのは喜ばしいことだが、こんなことはあり得ないはずだ。 しかし、子爵夫人は恐れも

驚きも感じず、ただ喜びと感謝の気持ちが湧き上がってくる。

 「ミリ……ありがとう……」

 夫人は感謝の言葉を口にし、彼女と目を合わせたミリがにっこりとほほ笑む。

 「足に力が戻ってきたでしょう?……」

 子爵夫人はためしに足を動かしてみた。 ミリの足と絡んだ自分の足が思い通りに動く。 うれしくなって足を

パタパタと振ってみると、ミリの足と絡んだところがヌルヌルと擦れ合った。

 「きゃ」

 「あ」

 滑る肌は思ったより敏感だった。 ミリのそれと滑りあった瞬間に、痺れるような、痛いような鋭い刺激が走った。

 「ミリ、ごめんなさい」

 「私は大丈夫です。 奥様こそ、まだ十分に戻っていないのですから、無理に動かさないでくださいませ」

 ミリはそう言うと再び子爵夫人の足を、今度は手も使って摩り始めた。 そこにセリアが加わり、二人は子爵夫人の

足を丁寧に摩り始めた。

 「ん……あぁ……」

 子爵夫人は目を閉じ、二人にされるがままになっている。 二人のメイドのマッサージを受けた子爵夫人の足は、

肌の下がうっすらと赤みを帯び……やがてしっとりと濡れ始めた。

 「あぁ……感じる……」

 子爵夫人の声に、歓びの色が混じる。 

 「ご覧くださいませ、奥様……」

 ミリの声に、子爵夫人は自分の足を見た。 そこが、ミリやセリアの足同様にに、滑りを帯びているのがはっきり

見て取れる。

 「!?……あ……ぁぁ……」

 今度こそ彼女の眼は驚きに見開かれた……たと思ったら、急にその表情が緩んでしまった。

 「うふ……ヌルヌルになってきたのね……どうりで感じるはず……」

 子爵夫人は、自分の体が変わり始めているのに驚きを感じなかった。 いや、たしかに驚きと恐怖を感じたのだが

それが失せてしまった。

 「この子の仕業ね?」

 子爵夫人は自分の下腹を撫でる。 感覚が戻った下腹のその下には、あのナメクジがいるはずなのだ。

 「ええ奥様」 ミリが頷いた。

 「その子が、私たちが怖がらないようにしてくれているのです」

 「そう……あ……」

 ミリが足のマッサージの位置を変え、秘所に近いところを摩り、さらに舌を使い始めた。

 「ミリ……」

 「奥様……一緒に楽しみましょう」

 「気持ちいいですよ……変わっていくのは……」

 静かに始まった女三人の営みは、次第に粘っこい水音を響かせて、いつ果てることもなく続く。

 やがた、仕事を終えたメイド達が一人、また一人と部屋に入ってきて、その魔性の宴に身を投じていく。

 ああ……

 うふ……

 ミチュ、ミチュ……

 おめでとうございます……伯爵夫人様……

 誰かが呟いた一言に、子爵夫人が応えた。

 「ああ、あの人たちが都から帰ってくる……お迎えしないと……」

 『はい……奥様……』

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