ザ・マミ

第三章 決戦!酔天宮署(3)


 エミが酔天宮署に姿を現したのは、日が落ちて大分立ってからだった。

 「わさわざすまなかったな」 取調室で出迎えた川上刑事が、礼を言う。

 「こちらこそ、営業時間外でごめんなさい。 日の光は苦手なの。 ところで、ずいぶん物々しいけど、何かあったの?」

 エミが酔天宮署のついた時、駐車場入り口に放水銃のついた警察用装甲車が二台、入って来るのが見えたのだ。

 「アレ対策だよ」 川上刑事が午後の会議の話をする。

 「へー。 午後に決まって、その日のうちに貸してもらえたの。 警察の上の方も張り切っているのね」 感心した様子のエミ。

 「逆だ」 川上刑事は憮然とした表情で言った。 「うちのお偉いさんより、はるかに頭がいいよ、上のほうは。 VTRを見ただけで、厄介

なわりに、手柄にならんと判断したらしい」

 「ああ」 エミは理解した。 「あれを貸してやるから、所轄で片をつけろと」

 「そういう事。 正体不明のミイラを捕まえても、点数にはならんというわけだ」


 そこに山之辺刑事と原巡査が入ってきた。

 「何だ、もうお見合いが始まってるのか」

 「山之辺さん、不謹慎です」 尖った口調で原巡査が言い、すみの机で調書を広げた。 エミを一瞥し、次に川上刑事をちらりと見て調書

に視線を移す。

 (ん?……) エミは、原巡査の視線に棘を感じたような気がした。 ちょっと首をかしげ、川上刑事を見て合点する。 (ああ、なるほどね)

 「さて、お前さんにきて貰ったのは、奴の事を聞きたいからなんだが……」

 エミは、ビルの屋上から妖品店ミレーヌまでの事を省略し、道の真ん中でいきなりおそわれた事にして、山之辺刑事に話をした。

 「ふむ、青い目以外は判らず……直感的に日本人とは、もとい日系日本人ではないと感じた」 安物のシャーペンで頭を掻きながら、山

之辺刑事は言った。

 「お前さんをおそおうとしたが、川の字に威嚇され、手を上げると見せて……ん?」 山之辺刑事は首をかしげた。 「……おい、川の字。

 ザ・マミはお前の言葉に従うふりをしたのか? それとも、たまたまそう見えただけか?」

 「え? そうですね、どっちつかずだったような……」

 「そうか……いや、奴が三千年前のミイラだったとして、日本語が判るのかなと思って」 がしがしと頭を掻く山之辺刑事。 「悪いな、話

の腰を折って。続けてくれ」

 (確かに……そうね) エミは話を続けながら、山之辺の疑問を検証しはじめていた。


 (暗い……) 池煮得太は天井を不思議そうに見つめた。 いつからこうしているのだろう。 頭も、腹の中も、鉛を詰め込まれたようだ。

 ゴロリと頭を回すと、隣に寝ている知らない男と、自分の腕につながれた点滴のチューブが目に入る。

 (病院か……) ぼんやり考えながら、反対側に頭を転がす。 

 (あ!……) 白々とした月の光を背景に、羽衣をまとった褐色の天女が彼を呼んでいた。

 あ……あぁ…… 怯えた表情の池煮得太。 その手が意思に反して窓を開ける。

 彼が一歩ひくと、ふわりと褐色の女神が床に降り立つ。 魅惑な肢体に包帯が羽衣の様にまといついている。

 さらに一歩下がる彼に、幾本かの包帯がやさしく絡みつき、寝巻きの胸元、袖口、腰周りから滑り込んで、彼の素肌をくすぐる。

 あ…… さらさらと絹が流れる様な愛撫に、声が漏れ、足が止まる。

 ザ・マミの体から、残った包帯が離れざわざわと広がって行き、池煮得太を、そして隣に寝ていた火靴助手を取り込んで、白い繭へと変

貌する。


 あぁぁぁ…… 横たわる池煮得太に、ザ・マミが跨っている。 彼のモノはまだ外に、腹の上で硬く膨らんでのたうっている。 そこに、ザ

・マミが秘所を擦り付け、愛液を塗りつけていた。 まるで貪欲な唇が、獲物を嘗め回しているように見える。

 たまらなくなったのか、彼が背後に下がると、繭の壁から白い女の腕が生えてきて、彼を抱きとめた。

 ひっ…… 細い指が、彼の乳首をつまみ、こねくり回し、わき腹をくすぐる。

 オイデ…… ザ・マミが仰向けに横たわり、その秘所を指で広げて見せた。 ヒクヒク蠢く褐色の襞の間から、ピンク色の魔性が彼を呼

んでいる。

 あ……あぁ…… ふらふらと、転がるようにザ・マミに被さる池煮得太。 彼の体の下で、豊かな胸がつぶれ、彼の胸にべったりと吸い

付くようだ。 そして……

 ジュルリ…… ヒッ…… かたく張り詰めたイチモツに、ぬれた肉襞が巻きつく感触。 ヌチャヌチャと粘った感触が、亀頭に吸い付いて

離れない。

 ジュル…… ニチャリニチャリ…… ジュル…… ニチャリニチャリ…… ザ・マミの秘所が、イチモツを啜りながら、奥へ奥へと呑み込ん

で行くのが判る。

 うぅ…… 思わず目を閉じた池煮得太。 その体に包帯が巻きつき、サラサラした愛撫を繰り返す。

 とぅ…… 蕩け……トロケルゥ…… 亀頭がジンジンと痺れ、陰茎が疼き、そして陰嚢が芯から溶けていくような、極上の快感が迫って……

 いっ…… ち……ちが…… き……ギボヂ…… 陰嚢どころか、付け根が、尻が、腰が、背筋が溶けていくような快感がじわじわとと上

ってくる。 体全体が、蕩けて流れ出て行くような快感が体を……そして魂を支配する。

 ああっ……ああっ……あああああっ…… 池煮得太は、ドロンと曇った瞳でザ・マミの美しい顔を見つめた。 彼女は野獣のように舌な

めずりをし、池煮得太の唇を奪い、舌を絡ませた。

 ズクン……ズクン……ズクン…… 熱いリズムを奏でながら、池煮得太の全てがザ・マミに吸い取られていく。 だが、其れに見合うだ

けの快楽が、池煮得太の魂を支配していた。

 じわじわとやせ細りながら、池煮得太はザ・マミの腕の中で芋虫の様に蠢き続ける。

 いい……いい……気持ちいい……もっと……もっと……もっとぉ……

 彼が、自分からこれをやめる事はないだろう。 無粋な邪魔者が中断させない限り。


 「ふむ……まぁこんな所か」 山之辺刑事は椅子に寄りかかった。 「ああそうだ。すまんがこの騒ぎが収まるまでは、『営業』を控えて……」

 そこまで山之辺刑事が言ったとき、壁にかかっていたスピーカから業務連絡が入った。

 ”加賀医院に詰めていた、篠田巡査より連絡。 ザ・マミが学生・池煮得太氏、及び火靴助手を襲撃。 二人は生存しているも、極度に

衰弱した状態。 ザ・マミは病室から逃走。 現在、病院待機班が追跡中…… 最新!酔天宮4をザ・マミが追跡中”

 「出たか」 静かに立ち上がる山之辺刑事。 「川の字、駐車場で網を張るぞ」

 「ご苦労様でした、エミさん。 裏門から帰られたほうが良いでしょう。 私が案内します」原巡査がエミを案内し、送り出そうとするが、山

之辺刑事が止めた。

 「待て。 どうやらザ・マミは、一度襲った相手を繰り返し襲うようだ。 お前さんも一度襲われてるから危ない。 騒ぎが片付いてからパ

トカーで送らせる。 悪いが署内にいてくれ」

 「はい、ご配慮ありがとうございます」 エミは、山之辺刑事に心から礼を言った。

【<<】【>>】


【ザ・マミ:目次】

【小説の部屋:トップ】