ザ・マミ

第三章 決戦!酔天宮署(2)


 ザ・マミ対策会議が行われた同じ日、あるマンションの一室にザ・マミは居た。

 厚いカーテンで締め切られた部屋の真ん中で、籐製の安楽椅子に、一糸まとわぬ褐色の裸体を投げ出し、宙の一点を見つめたまま人形の

様にじっとしている。

 サワリ……サワリ……重さを感じさせぬ衣擦れの音が、ザ・マミの足元に這いよる。

 白い包帯で包まれた手が、きれいに揃えられた褐色の足を、羽の様に軽やかに撫で上げる。


 そう、裸のザ・マミの足元にうずくまっているのは、包帯を巻いたザ・マミであった。

 ザ・マミが二人居る……この事実をエミ達はまだ知らない。


 白い手は、褐色の太ももの上をゆっくりと行きつ戻りつし、やがて下腹の茂みにたどり着く。

 うっ…… 褐色のザ・マミの喉から呻きがもれ、仮面の様な顔が微かにゆがむ。

 白いザ・マミは、三角形の茂みを手で覆い、ゆっくりと円を描く。 何度も、何度も……

 あ… 褐色のザ・マミの手が、白いザ・マミの手を掴もうと弱々しく動く。 しかし、白いザ・マミは空いている手で、その手を押し留めた。

 
 ザワザワ……ザワザワ…… 毛と包帯が絡み合う音が、不思議な響きで部屋に満ちる。

 ツ…… びたりと重ねられていた褐色のザ・マミの足。 そこに細長い隙間が現れた。

 く……ク…… 褐色のザ・マミの喉から漏れる声が、艶っぽさが加わっていく。

 サワリ……サワリ…… 白いザ・マミの指が、黒々とした谷間に滑り込み、輝く真珠をそっと撫で始めた。

 ア……アア…… 褐色のザ・マミが仰け反る。 はっきりとした喜びの声がその喉から漏れてくる。

 ヒクヒク……ビクン…… 白い指が真珠を撫でる度に、下腹が波打つ。 褐色のザ・マミが深い喜びを感じている証であった。


 キキッ…… 褐色のザ・マミの目が動いた。 体を起こして白いザ・マミを見る。

 キキキッ…… 褐色のザ・マミは、白いザ・マミに前で足を開き、テラテラと光るピンク色の肉襞がさらけ出される。

 白いザ・マミは無言で其処に顔を近づけ、舌を伸ばす……包帯で包まれた舌を。

 ゾブリ…… 白い舌が陰裂に差し込まれた。

 キキイッ…… 褐色のザ・マミは、一声あげて仰け反る。

 ゾブリ……ゾブリ…… 白い舌は褐色のザ・マミの奥深く差し込まれ、その肉襞に甘い愉悦の疼きをこすり付け、禁断の部屋の踏み込

んで、その壁をザラザラと嘗め回す。

 キッ…… 褐色のザ・マミは、白いザ・マミの執拗な愛撫に仰け反ったまま硬直し、危険な愉悦に浸りきっている。

 やがて青い瞳が爛々として輝き始め、部屋を照らし出す。

 キーッ!…… 褐色のザ・マミは、目を見開いて大きく鳴き、そして椅子に崩れ落ちた。

 荒い息を吐いている褐色のザ・マミに、白い・ザ・マミが体を重ね、そのシルエットが不自然に崩れた。

 やがて椅子から立ち上がる影一つ…… ザ・マミは、音を立ててカーテンを引き明け、包帯の奥から青い瞳で闇の帳がおりた町を見渡

すと、低く笑った……


 さらに同じ日、の夕方近く『妖品店ミレーヌ』に、エミが姿を現した。

 「お弟子さんは今日は来ていないの?」 エミはカウンターの向こう側にミレーヌに尋ねた。

 ミレーヌは無言で頷いた。 フードから覗く口元に、微かな失望の色が読み取れる。

 「時間が立てば、のこのこと顔を出すかも。 気長に待てば?」 軽口を叩くエミ。 しかし、ミレーヌは押し黙ったままだった。


 「やっほー!」 雰囲気を無視してミスティが奥から出てきた。 「今日のケーキは?」

 「またぁ?大体クリスマスまでまだ大分あるじゃないの」

 渋面を作るエミに、ミスティはひさし指を立て、左右に振って見せる。

 「神の使いを侮っちゃ痛い目見るわよ、クリスマスの前後2週間は警戒しなくちゃ」

 「一ヶ月の間、毎日ケーキを用意しろって言うの?」腰に手を当ててミスティに凄んでみせる「それに、クリスマスの飾りつけが、増えて

るみたいじゃない?来てほしくない相手を、呼び寄せてどうするの?第一、ここは結界の中、外から見えないでしょうに」

 「エミちゃん、あさはか〜♪」 にこやかに答えるミスティ。 「神の使い相手に魔法の結界が効かなかったら?そして結界の中に、クリ

スマスなのに飾りつけをしてない家があったら?悪魔がここに隠れていますって宣伝しているみたいじゃない」

 一応、筋の通った屁理屈に絶句するエミ。

 「だから〜ぁ、店に盛大に飾りつけをして、スライムタンはおめかしして、立派なクリスマスツリーにしなくっちゃ♪」

 エミは両手を上げ、降参の意を示した。


 「……それで、用件は何です……」

 「ザ・マミの事を聞きたくて」身を乗り出すエミ「昨夜は、ケーキを届けた後すぐ帰ったから、何も話をしていないでしょう。あれは何なの?

正体を貴方は知らない?」

 「……さて……」 ミレーヌは手を顔の前で組んで、何か考えている。 「……聞いてどうするつもりですか?あれを退治するとでも?……」

 「そこまでは考えていない……でもあれは私や貴方達に敵対した。 そして、ここの存在を知ってしまった」 エミは言葉を切って考える

「貴方はどうするつもり?」

 「何もしません」 珍しくきっぱりとミレーヌが言った。

 「なぜ?」 興味深げに尋ねるエミ。

 「……昨夜、戻ってきた時、ザ・マミが警察に追われていると貴方は言いました。 ならば警察があれを捕縛、または退治するでしょう……」 

 「警察は手こずっていた様だけど?」

 「……数の力は侮れません。 ザ・マミは一人、警察は無数の人的資源を投入できます。 もし警察が対処できなければ、軍隊が出てく

るでしょう。 最後は人間が勝ちます……」

 「最後は人間が勝つ、これに異論は無いわ」 エミはミレーヌの意見に同意する。 「でもあれが警察に捕縛され、ここの事を喋ったら?」

 「……その心配は、ザ・マミが捕まってからのものでしょう……」 今度は、やや考えながら答えるミレーヌ。 「……それより、警察の警

戒が厳しい今、下手に動けば我々の存在が警察……いえ人間社会に認知されてしまうかも……それでは本末転倒でしょう……」

 「そうね……」

 「……もう一つ。 警察は既にザ・マミを追う体制を整えているはず……仮に我々が、ザ・マミを人知れず始末できたとしましょう……

その場合、警察はザ・マミの捜索を続け、結果として我々がその網にかかるやも知れません……」

 「……」

 「……ですから、我々は何もせず、警察にザ・マミを始末してもらうのが良いでしょう……」

 エミは頷いた。 ミレーヌの意見はエミの判断とほぼ同じだ。 


 「さてと……」 エミは立ち上がった。「夕べの件で警察に呼ばれているの。これから取調べを受けに行くわ」

 ミレーヌは何も言わなかったが、ミスティが応じた。

 「えー……いいなぁ。警察で取調べを受けると、カツ丼をおごって貰えるんでしょう?」

 「別に其れが目当てで行くわけじゃないわよ」 苦笑しながらエミが応えた。 「第一、取調べでカツ丼を出してもらえても、その代金は

後で請求されるのよ」

 「えー!!」 ミスティが驚いた様子で言った。 「じゃあ何杯食べたら只になるの?50杯ぐらい?さすが日本の警察!侮れない!」

 エミは、額を押さえて呻いた。 酔天宮署の取調室に『カツ丼50杯完食!ミスティ殿』と書かれたミスティ写真入の額が掲げられるとこ

ろが、ありありと想像できたのだ。

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