月光蝶

16:蝶は満月に舞い


ズルリと触手の塊が動き、ルウが送り出される。
体が根底から作り変えられ、力が入らない。
崩れ落ちるところで、戦士蝶が支えてくれる。
戦士蝶がルウを見つめ舌を伸ばす、答えてルウも舌を伸ばし絡めあう。

新しいルウの姿が顕になった。
体の色は青く染まり、体形は人間の女性になっているが、元のルウの体が幼く見えていたので、さほど変わったように見えない。
背中から皺だらけの塊が2つ伸びている。
それこそ、月光蝶の証、魔性の蝶の羽だ。
2匹の月光蝶が背後に回り、ルウの羽をなめ始める。
ルウ『?、や、くすぐったい!』
戦士蝶『羽を掃除しているのだ…少し我慢しろ』
羽の薄皮が掃除される。
羽は直ぐに乾き、体液が送り込まれ、みるみる伸び始める。
できたばかりの羽なので感じやすい、また喘ぎはじめた。
ルウ『あ・は…あん!…』
羽が一気に広がり、張った瞬間、金色の燐分が飛び散る。
ルウの羽は、金と緑の極彩色だった。

戦士蝶『これはまた…見事な羽だ…こっちに来い。』
戦士蝶がそばの泉の辺に連れて行ってくれる。
水に映った自分の姿に見とれる、恐れはない、羽が誇らしい。
魔物となった喜びが羽を輝かす。

ルウは女王の前に立った。
女王の触角が伸びてきて、ルウの触角とからみあう。
そして、最後の記憶のかけらをルウに与える。
女王『ルウ、思い出した?』
ルウ『はい…全部、お母様…』
女王『ウフフ、もう完全に仲魔ね。うれしいわ…よく勉強してくれて…』

輝く黄金の羽を持つ、美しい魔物の少女が誕生した。
金色の羽の月光蝶が、満月の夜空で歓喜の舞を舞った。

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