月光蝶

14:蝶の夢:満月


青い光が満ちている、満月の光だ。
それを浴びていると心が落ち着く。
ルウは自分を確認する、人間である。
目の前を青い蝶が横切る、光が蝶の形に切り取られたようだ。
蝶が増える、周りが蝶でいっぱいだ。
不意に感じる、自分の背中にも羽が生えている。
だれかが呼ぶ、満月だ、そこから女王が自分を呼んでいる。
ふわりと体が浮く、満月に向かって飛んでいく。
ふと、髪が後ろに引かれる。
振り向くと、一面の闇に街が見える、人間の街だ。
そこも自分を呼んでいる、逡巡するが、満月に向き直ると一直線に飛んでいく。
満月は目の前だ、女王が両手を広げて待っている。
迷わず飛び込む。
”お母様…”
ルウは女王の手を取る。
体中にしびれるような快感が走る。
いつのまにか自分は女王に抱かれている。
自分の体も月光蝶になっている。
女王がキスしてくれる、互いの舌が絡み合う。
股間の吸精器官をすり合わせる、互いの触手がお互いの中にはいっていく。
人のものでない快感、いい、とてもいい、夢の快感に浸されていく。
もう、人の街はみえない…
女王が抱きしめていてくれる…いつまでも…いつまでも…

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