月光蝶

13:僕は…蝶…


朝が来て、ルウはまだまどろんでいた。
「おいしい…甘い…」
少しずつ目覚めに向かうが、夢から覚めきれない。
少女の蜜の味…お腹に生々しい感触が残っている。
蕩けた心に蜜の味の記憶が染み込んでいる…忘れられない…また、味わいたい…
ルウは眼をとじたまま夢の快感の余韻に浸っている。
「僕は男なのに…あんな夢であんなに感じるなんて…でも…おいしかった…」
いつものように、女王の触手の一本がルウの顔をピタピタ叩く。
ルウの眼が開く。
そろりと舌を出して、当然のように触手を舐め上げる。
触手は答えるように、ルウの舌と軽く絡み合う。

『ルウ…最後の質問をするわ…』
「女王様…」
『まだ仲魔になるのはいや?…』
「…おねがい。…」
『どうしたいの…うふふ…』
「…おねがい…蝶にして…とっても…蝶になりたいの…」
『…うふふ、なぜ?…』
「…蝶になると…心が甘いの…体が蕩けそうになるの…気持ちいいの…ずっと蝶でいたいの…」
『…ルウ…虜になったのね…蝶の夢の…もうあなたは私のものよ…』

女王は、ルウの体を少しずつ作り変えていた、ルウが食べていたのは育児用の養分で、これによりルウは月光蝶の卵になじみやすい体になっていた。
同時に、ルウの精巣は猛烈な勢いで精液となって対外に排出された。
そして、空いた袋に注入されたのは、月光蝶の卵の内容物。
これを胎内に吸収したルウは人の形のまま月光蝶の卵となった。
翌日、目を覚ますまでに、ルウは月光蝶の幼生体に変成していた…

そして、ルウの心も同時に変えられていった…。
戯れのような拷問(?)により警戒心を解かれ、穏やかで心に染み込む甘い夢により、ルウは月光蝶の感覚、快感、心、欲望を植え付けられた。
ここまで手間をかけたのは、ルウに自分から「蝶になりたい」と言わせる必要があったからだった。
心の底から望まない限り、魂を変える事はできないから…
しかし、一度望んでしまえば、魂は蝶の魔性に捕らえられ逃れることはできない…
女王の言うとおり、ルウは、体も、心も全て女王のものとなった。

『…いいわ、お願いを聞いてあげる…とても綺麗な羽の蝶にしてあげる…かわいいルウ…』
いつのまにか、触手の何本かから針がでて、ルウの体に差し込まれていく。
痛みは無い。ゆっくり、ジーンとした快感、かすかに甘い疼きが体に染み込んでくる。
「はあ…これもいい…芯から蕩けてくみたい…もっと…もっと…蕩けさせて…」
『…いっぱいおあがりなさい…魂が月の光で染め上げられるまで…』
ルウの体に、育児用の養分がゆっくり流れ込んでいく…
もう拷問(?)の必要は無い…後は…
『…お休みなさいルウ…次の満月まで…蝶の夢に浸っていなさい…次に目覚めるとき…あなたは蝶になっている…』
「…お休みなさい…お母様…」

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