月光蝶

2:狩


月光蝶の森で、人間の男が月光蝶と交わっていた。
男  「ウハッ、ウハッ、ウハッ、ウハッ、」
月光蝶「クッ、クッ、クッ、クッ、クッ、クッ、」
男は大の字に伸び、その腰に月光蝶がまたがっている。
片方しか羽がない、残った羽もだいぶ傷ついてもいる。
月光蝶は大きく動いていないが、男と交わっている当たりに怪しい動きがある。
男の方は目を開きよだれをたらしている。
時々、ビクッ、ビクッと言う感じでけいれんするように動く、まともな交わりではない。
月光蝶「クッ、クッ、ハァーーーーーー」
月光蝶が高く鳴く、男の体が痩せていく、男の精気を吸っているのだ。
男の方は、静かになった。

ズン!
月光蝶の首が飛ぶ。
男2「ギーン!無事か!」
別な男が現れ、月光蝶の首を剣で一撃したのである。
月光蝶の体をどかし、ギーンと呼んだ男の脈をとる。
男2「チッ!やられちまったか…おい、役立たず、早く来い!」
男が自分の出てきた方に声を掛ける、1人の少年があらわれた。

少年「やられたの? ギーンは」
男2「ああ!しかもやったのはこんなやつだ」
男は自分の切り倒した月光蝶を指差す。
男2「こんな羽じゃこいつの葬式代がやっとだ、忌々しい!」
男はガイ、少年はルウ。
2人は、いや死んだギーンと3人は、月光蝶を狩に来たのだった。

5年程前に、ルウはこの森に迷い込んだことがあった。
奇跡的に生きて帰れたが、帰りついた直後から病気になり、2年間も寝たきりとなり、その間に両親と死別した。
回復したものの、自分の治療費として莫大な借金を背負ってしまった。
しかも後遺症か、体の成長が止まってしまった。

人力か、家畜が主な動力源である世界では、体が小さいというだけで不利になる。
貴族や経済力のある商人ならば何とか生きていける。
または体を使わずに住む学者のような職業ならば…
ルウは只の市民であったし、もはや両親もいない。
幸い利発な子であったので、領主の娘の教師の弟子となって、何とか糊口をしのいでいきた。

この3年間、つらい生活を送ってきた。
そんなルウに、ガイとギーンが目をつけた。
頭も良く、月光蝶の森について、多少なりとも知識のあるルウを、月光蝶狩りに連れ出したのだ。
ルウは最初は嫌がったが、借金を返すことができればとついてきたのだが……
体の小さいルウは何かにつけ足手まといになっていた。

ガイ”全く使えねえ野郎だ、いっそ囮に使うか? 月光蝶をやるにはあれが一番のようだし”
ガイがひどい事を考えているとも知らず、ルウはガイの後について来ていた。

そのとき、ルウはかすかな…何かがあるという感じを受けた。
ルウ「ガイ、何かある…」
ガイ「この辺に、見覚えでもあるのか?」
ルウ「こっち、わかるんだ…」ルウが先に立って進む。
ガイ「おい、まてよ…」
2人は森の中にある小さな広場にでた。
そして…

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