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24.決戦−1 『組長グリーン』 VS 妖女連合(?)


ふにゃぁ… 『赤スライム』女の下でエミが間の抜けた声を上げた。

すると、『赤スライム』女の第2の上半身がするすると引っ込み、また69の形に…「あれ…あれ?」
『赤スライム』女はエミの秘所から口を離すと、手足を突っ張って伸びをした。 そして体をプルプルと振り、エミを

そのままにして、四つんばいでペタペタと『組長グリーン』の背後に忍んで行った。

(あれ…角がある)
いつの間にか『赤スライム』女には、エミそっくりの角が生えていた。 翼こそないものの、体形もエミに似ているようだ。


「飽きた…のかな?」

「違うわ」

「えっ!?」のびていると思ったエミがしっかりした声で答えたので、ミスティは不意を突かれた。

エミは手を突いて上半身を起そうとし、ミスティはなんとなく手を出して彼女が起きるのを助けた。

「ありがとう」

「別にたいしたことじゃ…」

「いえ、さっきよ。アレで…」そう言って空になったワインのボトルを指差すエミ。「助けてくれようとしていたでしょう」

「あ…」(あはは…誤解してる)

「貴方は携帯を取り戻したらかぐに逃げ出すと思っていたから。まさか危険をおかして助けてくれるとは思わなかった」と

エミがにっこり笑う…それはエミが初めて見せた好意的な笑顔だった。 

「いや〜はっはっはっ…照れちゃうな。あのぐらいで」なんだか自分もそのつもりだったような気になってきたミスティ

だった。

二人の間に初めて連帯感のようなものが生まれる。


一方『組長グリーン』は…何とか立ち上がり、『緑スライム』女の一人を捕まえて、バックから『ヘチマ』で責めていた。

アゥ…アァァン… ヌトヌトした尻が『組長グリーン』の腹に吸い付いて、もっともっととせがむ。

フングゥ…フングゥ… 対等の体位になれたので、鼻息荒く『緑スライム』女を突く『組長グリーン』

その二人へばり突き、べタベタした舌をはわせる他の『緑スライム』女達。 いって…早くいって…次は私よ…と訴えるかの

ように…

多勢に無勢… 『組長グリーン』が精を吸い尽くされるのは時間の問題の様に見えた。


「それじゃあ荷物を取り戻して逃げよう」ミスティが提案する。「たぶん『組長グリーン』は『スライム』ちゃん達には勝てないよ…

数が違うもの」

「いいえ」ミスティにしては珍しく筋の通った意見にエミは首を横に振った。「ほら、見てごらんなさい」


ウグゥゥゥ…ウットーシィ!!… 『組長グリーン』が吼えた。

小娘ドモガァ!! 舐メルナァ!! 窓ガラスが震えるほどの怒声に、『緑スライム』女達がズルルッと下がり、『組長

グリーン』と捕まっている一人を遠巻きにする。

フン… ジロリと辺りを睥睨し、再び腰を降り始めた。 ズンズンズン… しかし、気のせいか物足りなげだ。

…アーコレ、君達…少シナラ舐メテ構ワンゾ… 

『緑スライム』女達は顔を見合わせ、おずおずと這いよって行く。


「あらら」ミスティは呆れたような顔をした。 しかし、彼女にはエミが何を言いたいのか判らないらしく、ちらりとエミに

視線を送る。

「『組長グリーン』が意味のある言葉をしゃべり出したわ」エミが眉をひそめる「『杉の精気』や『媚薬』が馴染んできて

いるんだわ…このままだと本物の『魔物親父』になるかも…」

「げっ!!」ミスティが心底嫌そうな顔になった。

「それに、『スライム』娘達が『組長グリーン』の勢いに押されている…このままだと彼の言うなりになりそう」そう言った

エミの目が金色の微光を湛えている。

「?」首を傾げるミスティ「どうして?ミスティにはよく判らない?」

「判るの…さっき」そう言って、エミは『組長グリーン』の背後に佇み、隙を伺っている『赤スライム』女を指差した。

「あの子と交わったせいで、あの子達の『心』と部分的に繋がったみたい」

「うっそー」

「ほんとよ。『スライム』娘達は、貴方が媚薬3号で咲かせた『杉の雌花の気』を取り込んで生まれた…だから『組長

グリーン』が持っている『杉の精気』に惹かれるんだわ」

「へー…じゃあコーモリ女ちゃんを襲ったのは?」

「私の中に『組長グリーン』が放った『杉の精気』に惹かれたのよ」

「それで…」ミスティは納得したが新たな疑問がわく「でも…それならあの子達は『組長グリーン』から『杉の精気』が

枯れるまで吸い続けるんじゃないの?」

エミはまた首をふる。

「あの子達には『心』があると言ったでしょう。でもそれが不完全なの。これは…そう基本的には誰かに従うように

条件付けされているみたい」

「…」

「『心』がそれに逆らう…でも『自我』と呼べるところまでいかない…それで制御不能になったんじゃないの?」

「…」(そうか…10号と同じだったんだ…でも10号程はっきりした『自我』じゃないんでミレーヌちゃんも原因がわかん

なかったんだ)

ちなみに、この時点でミスティは『コーヒーゼリー(10号)』が逃げ出した事は知らないのだが。


エミは続ける。

「『精気が欲しい』、『強力な命令』これがあの子達のなかで葛藤を生んでいる…このままだと『組長グリーン』を『精気の

供給源、かつ命令者』として認識してしまうかも」

「は?」

「つまり!『組長グリーン』と『スライム』が仲間になるかもっていてるの!もし『緑スライム組長』なんてものが生まれ

たら…」

「ひぇー!!」ミスティが悲鳴を上げる。「人類の危機だぁ!」

「其処までいかなくても私と『赤スライム』娘みたいに『組長グリーン』と『緑スライム』娘がリンクしたら…ちょっとやっかい

になるわ」

エミはそう言って眉間に皺をよせる。

「そんなぁ…と、待って」ミスティが何か考え始めた。 なけなしの『知力』を使って考える。

「ねぇ、コーモリ女ちゃんがリンクできるの『赤』だけなの?」

「直接には… 『緑』の娘達の感情は漠然と…かな? 『赤』と『緑』は意思疎通できているようね。 元は一つだった

みたい」

「コーモリ女ちゃんが『赤』に命令は出来ない?『組長グリーン』みたいに」

エミは思案する風になった。「うーん…『赤』はあたしとリンクしたせいで…」ちらりと『赤』を見た。様子を伺うように佇ずみ

『緑』達とは少し違う様に見える。「より『知性』的みたい…それだけに言うことを聞くかどうか」

「うーん…じゃあ『赤』経由で『緑』達に命令は?」

「…さらに判らないわ。できたとしてもこちらには『エサ』がないから…」

ふぅ…エミとミスティがため息をついた。


グッハグッハ… 上手イゾ小娘ドモ! 可愛ガッテヤルゾォ… アゥン…アァァァン… なんだか『組長グリーン』と『緑スライム』

女達の関係が『敵対』から『友好』になってきた。 このまま『隷属』まで行ってしまうとエミの懸念が現実になりそうだ。


ミスティは、漫然と『スライム』女達を眺めている。

「赤くて角のあるのが一つと緑のやつがいっぱい…『コーモリ女ちゃん専用機』と『量産型小娘』だぁ」とミスティ。

「『お約束』よね…」いいかけたエミの目が、わずかに開かれた。「待って…閃いた!」

「?」きょとんとするミスティに構わず、エミは『念』を凝らす…『赤』に向けて。


…?… 『赤』が目をしばたたかせた。 耳をそばだてる様に首を傾ける。


(…仲間を呼んで…仲間を…通じない…)エミは額の汗を拭い、チラリとミスティを見た。 派手なピンクの目に自分が

映っている。 突然エミは理解する。

(言葉は通じなくても…イメージなら…イメージ…) 頭の中で『赤』に命令…いや要望をイメージする…


…?……!… 『赤』が視線(?)をエミに…そして『緑』達にうつす。 そしてまたエミ…

ズルン…赤が形を崩した。 四つんばいになって引き戸からベランダに逃げ出す。

「あー!逃げちゃう!」「失敗した?…」

『赤』はベランダで止まり、リビングに向き直った。 ミュー…ミュー… 細く笛のような声を上げる。

ピクリ…『緑』達が動きを止めた。 動物のように首だけを動かして『赤』を見る。

ミュミュー… 一際高く『赤』が鳴いた。

ズル… ズルル… ヒタヒタヒタ… ムオッ?… 『緑』達が一斉に動いた。 『組長グリーン』から離れると『赤』に呼ばれる

ままにベランダへ向かう。

『赤』はベランダから1m程下の地面に流れ落ちると人型を取り戻し庭の奥、杉林に向かい、緑がそれに続く。


ムー…フゥー… 取り残された『組長グリーン』が唸っている。 ギロッとエミ達を睨んだが、視線を『スライム』女達に

戻した。

グッ…待テェ!… ヘタヘタヘタ… 情けない足取り(『ヘチマ』でバランスがよくない為)で彼女達を追った。


「?…」「よし!」エミはミスティを引っ張って『組長グリーン』に続いてベランダに出た。

『組長グリーン』が腕組みしている『赤』を中心にして立ち並ぶ『スライム』女達と対峙している。

小娘ドモ…言ウ事ヲキケェ!… 『緑』達がびくりと震えるが、『赤』は微動だにしない。

エミが大きく頷く。 『赤』が了解したというように頷く。


ホッホッホッ… 『緑』達が人間…いや『スライム』ピラミッドを作る。 そして頂点に『赤』が。 積みあがった『スライム』

女達が形を崩し一つにまとまる。

ビクビクビク… 脈打つ緑の塊の所々に深い筋が入り、見る見るうちに蹲った女の姿が形作られて行く。

「すごーい…」感嘆するミスティ。

ズッズズズズ… 巨大『スライム』女は、顔をお腹に向けたまま四つんばいになり、膝をついてゆっくりと立ち上がっていく。

ムムッ… じりっと後ずさる『組長グリーン』

ヌゥー… 巨大『スライム』女は下を向いたまま、一気に立ち上がり、髪を振って顔を上げる。 かっと見開かれた瞳の

ない目は燃えるような赤。

青白い月光を浴びてそそりたつ緑の女巨人…その身長はおよそ10m!

ムムムムムッ… 唸ってさらに引く『組長グリーン』


「あれ…目が赤い?」

「目と頭の中身は『赤』なのよ!いけぇ!…あれ?」

グラグラ… ドドーン! 巨大『スライム』よろよろ揺れたかと思うとその場に崩れ落ち、緑色の塊に戻る。

「…しまった、強度が足りない…」「…アイデァ倒れ…」じろりとエミを睨むミスティ。


ドッポドッポと緑の巨大スライムは揺れ動き、『組長グリーン』を捕まえようとするが、動きがとろくて追いつけない。

数回の攻撃で無駄を悟ると、巨大スライムは近くの杉の木に巻きついた。 再び巨大『スライム』女に変わる。

「あれ、背が低いよ」

「よく見て、杉の木を背にして足を広げて座っているのよ」

エミの言うとおり、巨大『スライム』女は大きく足を広げ、緑色に柔らかく震えるアソコを『組長グリーン』に見せつけて

いる。

大きく口を開けた淫らな獣の顎、そこに捕まれば『組長グリーン』と言えどもひとたまりもないだろう。

「よし、そこに誘い込むのよ!」


オイデ、オイデをする巨大『スライム』女。 しかし…

イヤジャ、イヤジャ… 首を横に振る『組長グリーン』。 罠…と言うにはあからさま過ぎる… 第一大きすぎて怖い。


「…」「…もっと色っぽく出来ないの!」エミが怒鳴るが、『色っぽく』などと言われても巨大『スライム』女には判らない

ようだ。

巨大『スライム』女は両手で招いたり、足指を触手に変えて直接捕まえようとしたりするがうまくいかない。

「…攻撃力より運動性を重視すべきじゃなかったのかなぁ〜…」

「…」反論できないエミ。 ガックリ首を垂れた姿がおかしくもあり、ミスティはエミの首筋をすうっと撫でる。

「ひぇぇ!…」 ヒェェッ!… エミと巨大『スライム』女が、同時に声を上げた。

「あり?…ぬふっ…ぬふふふふっ♪」ミスティが笑う、悪戯を思いついた子供のように。

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