VS

22.延長Round:ミスティ&エミ VS 『組長グリーン』 VS ?


ほっふほっふほっふ…

『組長グリーン』は手をダラリと下げ、体を上下に揺すりながらエミとミスティをじろじろ見ている。

もともと知性的には見えなかったが、これでは野生の動物と変わらない。

「はげたオランウータンみたいねぇ。透ちゃん?鶴透組長?あたしがわかる?」エミは自分を指差して話しかけた。

『組長グリーン』はエミの問いかけに、腕組みをして考える風になる。 ポンと手を叩いて胸をそらした。

ウー!!ル・トール…ツー!! びしっと指を二本出す。

「『ル・トール』? 自分の名前がちゃんと発音できないのかな?」楽しそうなエミ。 珍しいオモチャを見つけたような

態度だ。


ミスティはエミをつんつんとつついた。

「何よ」「ねぇ、遊んでていいの?」

ミスティの言葉にはっとするエミ。

「いけない…そうだった」頭をかくエミ「どうも珍しい生き物や現象を見ると探究心が刺激されて」

「へぇ?」ミスティが感心半分、呆れ半分といった表情を作る。(ミレーヌちゃんみたいな事言ってる)

「さて…どうしたものかしら」エミは眉をよせた。「このまま放置していたら、警察じゃなくて病院送りになりそうねぇ」

「ほっとけばぁ〜」めんどくさそうに言うミスティ。「ミスティには関係ないもん」

「そうねぇ…」エミは同意しかけて、何かを思いついた「…そうだ。あなた『知力』がどうとか言ってたわよねぇ」

「えぇ〜?うん…」嫌な予感がしたのか、ちょっと後ずさるミスティ。

「その力で、このおじ様に何が起こったのか判らない?」

「うーん…」躊躇うミスティ。

「ねぇ。貴方の『凄い』悪魔の力…見せてくれない?」

「うーん」『凄い』という言葉にちょっと嬉しそうな顔するミスティ。

「電脳悪魔ミスティちゃんには判らない事は無いわよねぇ?」

「うん!もっちろん!」そう言ってミスティは胸をトンと叩き、赤いセルフムームの眼鏡を取り出した。 それをかけ

『組長グリーン』を見つめる。

「шГрфт…」口の中でブツブツと唱えだすのと左頬には、星型のタトゥーが鮮やかなブルーに変わるの同時だった。

星型の頂点にはピンクが残り、見ているうちにじわじわと青い領域が減っていく。


「ふぅ」ミスティはすぐに呟きを止め、眼鏡を外した。 一度瞬きをしてエミを横目で見る。

「な…何よ」責められているような気がして、口を尖らすエミ。

「半分はコーモリ女ちゃんのせいだ」とミスティ。

「…どういう意味。ちゃんと説明して」苛立った口調のエミ。


ミスティによると、鶴組長はエミに『精気』をほぼ吸い尽くされている。 こうなると『意識』が戻っても『衝動』が起きない。

 刺激を与えてもそれが行動に結びつかない為、一見するとボケとしまったように見える。

「でも、時間がたてば回復するでしょう?」

「うん、でも組長さんの体には別種の『精気』がたっぷり入っていたみたい」

「は?」エミが目を丸くする。「何よ?それ?」

「ほら、最初に会ったときに『杉の木さん達の精気』の小山に組長さんが飛び込んだでしょう」

「え?…ああ」エミはようやく思い出した。 確かに鶴組長は他の組員達に突き飛ばされて…「ちょ…ちょっと待って。

スギ花粉を吸い込んでもせいぜいくしゃみが出るだけで、毒にも薬にもならないわよ」

「うん、普通は」とミスティが肯定する。「でも、あの『スギ花粉』はミスティの媚薬1号で発生したの。そして組長さん

達は媚薬2号も吸い込んだし…」

「貴方の媚薬2つが妙な効果を引き起こしたと?」

「ミスティのせいじゃないもん」と言い訳がましく言うミスティ。 エミはかまわず先を続けさせる。

「『精気』が足りなくなった分が『スギ花粉の精気』で補われたけどぉ、今ひとつ馴染まなくてぇ。だから『人の意識』が

戻らなくて『衝動』だけで動いているの…それも変に空回りして」

ミスティの話の間中、組長は辺りをじろじろ見ていた。 とりあえず、暴れる気配は無いようだ。


エミはミスティの話を頭の中で整理する。

(信用するにたる証拠はないし検証も出来ない…待って、彼女の分析能力が確かならこれから組長がどうなるかを

予測できるはず。それが正確かどうかで判断しましょう。)

エミはミスティに聞く「それで?彼はこれからどうなるの?」

「んーとね。多分『精気』が馴染んでくると『衝動』が正しく働いて…正しい『性衝動』に…」

横目で鶴組長を見る二人。 ピクッピクッと腰から下げたものが段々持ち上がって…ミスティの言うとおり臨戦態勢に

変わっていく。

うーん… エミは額を押さえた。(どのみち時間がない…この子の話が正しい方にかけるしかないか)

「それで?放置していたら正気に戻るかしら?」

「多分…その前にもっとおかしくなって暴れだす」

「ちっ…じゃあ急いで元に戻すには?」

「うーん。やっぱり『杉の精気』を抜かないと」

またそれかとエミは思ったが、それならばやりようはある。 たださっきから男を襲いまくっているので『精気』は満タン

だが、肉体的には少々疲れている。出来れば静かに相手をしてもらいたい。

彼女はミスティに言った。「ねぇ、話が通じるかどうか、貴方が確かめてみて」

「えぇ〜」嫌そうに言うミスティ「どーしてミスティが?」

「だって…やっぱり『組長グリーン』が生まれた主原因は貴方の媚薬の力でしょう」そしてビシッとミスティを指差すエミ

「つまり貴方は『組長グリーン』の母親!」

「ぶーっ」口を尖らせて不満を表明するミスティ。 しかしエミに促されてしぶしぶ『組長グリーン』に向かい合う。


ウー…ウー… 盛んに唸っている所を見ると、そろそろ『その気』が高まっているようだ。

ミスティは『組長グリーン』に呼びかける。「息子よ!」

ウー? ムズゴー? 『組長グリーン』が応じた。

「うー…そう、私がママよ」そう言って胸の前で手を合わせ、じっと『組長グリーン』を見つめる。

ウーウー…マンマー!! 『組長グリーン』はミスティを指差して叫んだ。 ミスティはひきつりながらもこくこくと頷く。

ウーウー…ムズゴー!! 『組長グリーン』は自分のモノを指して吼えた。 ミスティは嫌そうな顔エミを見た。

「ふぇーん…こんな息子嫌だぁ」

「そんな事言っていると息子がぐれちゃうわよ」

「だってぇ…」そう言ってムクッムクッと膨れていく鶴組長の『息子』を指差す。「緑色してるよぉ」

「あんなものキュウリだと思えばいいでしょう」

「キュウリ…にしては大きいよぉ」よく見ればミスティの言うとおり、鶴組長の『息子』は僅かの間に非常識な大きさに

膨れ上がり、とてもキュウリとは言えない大きさになっていた。

「ならヘチマだと思えばいいでしょう!!」と見た感じをそのまま口に出してから、エミはめまいを覚えた。「ヘチマ…

なみ…」


ウー…ウォー!! 「きゃぁ!」「いやぁ!」

ついに『組長グリーン』が動いた。 エミの髪を掴みむとソファに手を突かせ、バックから一気に貫く。

「いやぁぁぁ…」一声叫んでから、エミは腰を降り始めた。

グッフ…グッフ… 『組長グリーン』はエミの尻に手を掛けて、腰を突き入れるように動く、動く。

ひぃっ…ひぃっ… エミは声こそ弱々しいものの、腰はしなやかに動いて『組長グリーン』を積極的に迎え入れている

ように見えた。

「出た!極悪非道なコーモリ女ちゃんの『やられたふり』!相手がいい気になって攻撃を続けると…」とミスティがソファの

向こうに逃げて、解説を入れる。

ウ…ウググ… 『組長グリーン』の顔がゆがみ、動きを止めて全身を戦慄かせる。

デ…イグー!…

「早っ!」

ビクッ…ビクビクビクッ… 二人が激しく震え…そしてまた動き出した。

グッフ…グッフ… ひぃっ…ひぃっ… 

「凄っ!でもこの調子なら…あり?」エミがちょいちょいと手招きをした。 ミスティが顔をよせる。

「どったの?」

「手伝え」

「へ?」

「手伝え!」


エミに強く言われて、ミスティは『組長グリーン』の背後に回った。 そのまま逞しい背中に擦り寄りながら、小さな手を

股間に伸ばしていく。

「うふふっ♪」

組長のお尻の割れ目と陰嚢をさわさわと触る。 ミスティの肌は絹のようなにきめ細かく、男を魅了する力がある。 

もっとも事に及ぶまでが下手な上に気が短い為、たいてい実力行使に出てしまうのだが。

スーリスーリ♪ 肩甲骨の辺りの乳首を吸いつかせながら、下で背骨をなぞる…しかし。

(変だな〜いまいち手ごたえが?) 首を捻っていると、いきなり『組長グリーン』の首が180°回ってミスティを睨み

つけた。

ガウッ!! 言いたいことは明らかだった。「邪魔をするな!」と言っている。

ミスティはペコッと頭を下げると、前に回って『組長グリーン』に責め続けられているエミに話しかけた。

「ごめん。ミスティの技が通じないみたい」 するとエミが口をパクパクさせる。

「え?…判ってる?…コーモリ女ちゃんの技も通じてない? またまた〜 え?嘘じゃない? おまけにモノが長すぎ
て間合いに入れない?」

そう言われてミスティは、彼女が陰嚢を触れていたことを思い出した。 エミは陰嚢ごと中に呑み込んで責めるのを

得意にしていたはずだ。

「何? 奥に当たってこっちがいかされてる? それに底なし… ねぇ…先に逃げていい?」

エミが怒って喚きだした。 もっとも喘ぎながらの合間なので迫力に欠けるが。

「そうは言っても…え? 何か残ってないかって? んと…後は女性用の媚薬3号しか…」

再びエミが呟く。

「それを撒け? スキモノねぇ… 違う? 表に?」

こくこくとエミが頷く。

「男用でスギ花粉が出たから? 女用を杉林に撒けば雌花が咲く…その匂いにつられて離れるかも…なるほろ」

ようやくミスティはエミの意図を把握した。

「ん?破裂するかもしれないから注意して…大丈夫!」

とんと胸を叩いてミスティはソファから離れた。


ミスティはピンク色のリュックを持ってベランダに出た。 小さな庭を挟んでぐるりが杉林…どっちに煙が流れても効果が

でるはずである。

ミスティはしゃがんで『○ル○ン』の缶を開けようとして七輪を見つけた。 これに缶を入れれば破裂しても大丈夫だろう

と考え、七輪に缶をスポッと入れた。

缶の上のピンを抜くと、幸い破裂する事無く煙が出てくる。 しかし、風が無いので煙が上に上ってしまう。

ミスティはそばにあった団扇でパタパタ仰ぎだした。 はたから見ると魚を焼いているようだ。

杉林の方に薄く白い煙が流れていくものの、何かが起きる気配は無い。 それに煙が薄いのが気に入らない。

「もっとも派手にでないかなぁ」呟きながらリュックに手を突っ込む。

原色の薬を取り出して、片っ端から『○ル○ン』の缶に入れるが。煙に色がつくだけだ。

「他に…あれ?」ミスティはリュックの中から紙袋を見つけ出した。

「こんなの入れてたっけ?まあいいか」袋をあけて灰色の粉を『○ル○ン』の缶にあけた。

モクモクモク… ネットリとした灰色の煙が凄い勢いで噴出し、地を這うようにして杉林に流れていく。

「やった!凄い凄い!…?」ミスティが眉を寄せた。

杉林の中で何か動いた…目を凝らしてそれを見極めようとする…


はっはっはっ… 一方エミは息つく暇も無く責められ続けられていた。

「こ、このままじゃ…警察が来てしまう…あうっ…」

ドクリ…ドクリ…お腹の中にネットリと熱い蜜が溢れる感触… 脂っこい鶴組長の精気と違い、『組長グリーン』の精気は

爽やかな野菜サラダのようなのだが…

「き…吸収できない…ダイエットにはいいかも…」息切れしながら冗談を飛ばし、自分を元気付ける。 しかし、『組長

グリーン』はまったく疲れた様子が無い。

「う…ミスティはまだ…」エミがそう言った途端、ピンク色の風が二人の脇を駆け抜けた。

ミスティはピョント飛び上がってソファの背を飛び越えて向こう側に隠れ、顔だけ出してエミ達…いやその後ろを見て

いる。

「…ちょっと…どうなったの…」エミがだるそうに言った。

「えーと…いま援軍が来るから…」と消え入るような声で言うミスティ。

「援軍?」エミは首をかしげ、やっとの事で背後を振り向いた… その目が見開かれ、尻尾がピンと立った。

ミスティが入ってきたベランダの引き戸のところから何かが這いずって来るのが見える。

ズルズルズル… 濡れた音を立てて、目を光らせたそれは…リビングの光の中で緑色に濡れた半透明の女の形を

取りつつあった。

「あ…あんな何をしたのよ!」エミがミスティを詰問する。

「いや〜♪」ミスティが手に持った紙袋をパタパタと振ってごまかす。

その紙袋にはこう書いてあった。

『可塑性擬似生命体素材試作9号』

【<<】【>>】


【VS:目次】

【小説の部屋:トップ】