VS
9.Round 1−2:エミ VS ミスティ
ふくれっつらのミスティは縛られたままのエミを起き上がらせ、ベンチに座らせた。
エミは特に逆らわない。 余裕の表情だ。
「ふん、澄ましちゃって」そう言って、エミの股間から腹に伸びる茶色い紐(?)に指をかけくいっと引っ張る。
キュッ…
『縛り』の基本通りに、女性器の急所を押す位置にある結び目…いや、そこだけ紐が膨らんでいる…がエミを刺激した。
ん…
エミは吐息を漏らす。
「どうよ」ミスティがねめつける。
「…こ…この程度?」微かに上気しながらもエミが応える。
「むーっ!」
ミステイは両手を紐に絡めて、今度は強く引く。
ギュッ…ひっ…
エミが小さく声を上げ、ミスティが笑みを浮かべた。
「うっふっふっ…体は正直よのう…」
エミはミスティを睨んだ。(あんたは悪代官か何かか!) と腹の中で突っ込む。
エミと対照的に、ミスティは余裕の表情を見せた。
「まだ強気ね。 さーて何処まで持つかしら…」
ミスティはエミに体を寄せ、縄を手繰りながら指先でエミを刺激する。 エミの表情を観察しつつ、エミの体を弱点を探しているようだ。
エミは唇を噛みしめ、悔しそうな表情でスティの指先から逃げる素振りを見せる。
しかし、表情と裏腹に心の中では思う壺だと考えていた。
(そうよ…頑張りなさい…小悪魔ちゃん…もっと…ふふっ…)
エミは男と…そして女とでも…体を重ねる事で、相手から何か…『精気』と呼んでいるが…を吸い取り『力』とする事が出来る。
楽しむつもりで快楽に身を委ねる事も、そして快楽に溺れるふりをしつつ自分を保ちつづける事もできる。
体の自由を奪われていても、『ネコ』の振りをしながら『タチ』の子を快楽の渦に引きずり込んで立場を逆転させるなど簡単…そう思っていた。
ミスティは指でエミの割れ目を触る。 喰い込んだ紐を柔らかに咥え込んだ谷間は、細い指に纏わりつき微かに濡らす。
「うふん…感度はいいのね…」ミスティの眼がすっと細くなる。
ピンク色の細い指が紐をつかみ、きゅっとしごく。 紐が微かに震えた。
「?」エミが眉を寄せた。 紐の感触が変わったような気がしたのだ。
「…蛇!?…」 紐一面に鱗のような模様が浮き出ている。 身を固くするエミ。
「違うのよねぇ♪」ミスティが楽しそうに言って、紐をくいっと引っ張った。
紐は滑らかな鱗をエミの肌に擦りつけつつ、ミスティに引かれるままに動く。
ズズズズッ…ゾゾゾゾゾッ…
「ひっ…」鱗が体を撫でる嫌悪感、同時に滑らかな凹凸が女の真珠を擦りあげる感触にエミが声を漏らす。。
「うっふっふっ♪ほれ♪」
ズズズッ…ゾッ…ズズズッ…ゾッ…
ミスティが軽く引くだけで、エミを縛った紐は自在に肌の上を滑る。
はぁ…ため息を漏らしたエミは、自分の声に混じる艶に愕然とした。
(うそ…) 必死に感覚を制御しようとするがうまくいかない。 体に冷たい蛇の感触が走るほどに背筋を冷たい刺激が走る。
ズッ…ズズズッ…(なによ…この紐は…)
エミは首を左右に振って否定の意志を表すが、頭の無い蛇と化した紐はエミの体を縛り上げたまま、白い肌を這いずり回る。
はぁ…あはぁ…エミの口から甘い声が漏れる。
蛇がクレバスを擦りあげる感触に体の奥が不満を漏らしている…もっと奥だと。
エミの意識に桜色の靄がかかって来る。
蛇が体を滑りながら、心が緩やかに絡めとられていく。
ミスティはエミの目を慎重に覗き込む。 トロンと曇りはじめた目の色に満足げな表情になる。
「手も足も…尻尾も出ない…なーんちゃって」
ミスティはエミに体を重ね、エミの肩に頭を持たせかけるようにした。 そのまま、互いの首筋を擦り合わせる。
は…ふぁ…
極上の絹で摩られたような愛撫にため息を漏らすエミ。
ミスティはそのまま耳に囁く。
「コウモリ女ちゃん…どう素敵でしょ」その声がエミには天使の囁きに聞こえた。
「え…ええ…」エミが陶然とした口調で応える。
「ねぇ、ミスティのものになって…」
「ミスティのもの…」言葉の響きが心を揺さぶる。 応えたい。 応えてピンク色の闇に身を委ねたい…
フッ…ミスティが勝利を確信したその時、エミの心の奥で金色の閃光が走った。
(!) 突然エミが瞬きをした。 大きく身震いをしてミスティを跳ね飛ばそうとする。
ミスティは慌てず、一歩飛び下がった。
はぁ…はぁ…荒い呼吸をしてから、エミはミスティを睨みつけた。
「何を…この紐はなんなのよ!」
激しい怒りと屈辱でエミの顔が赤くなった。 (こんなアホな小娘に! この紐の力ね!)
ミスティはエミを見下ろすようにして、「ふん」と鼻先で笑った。
「ミスティちゃんの傑作『悪魔のハンモック』の力、思い知った? ミスティちゃんを甘く見るなよ。 へっへっー♪」
いばってそっくり返るミスティ。
「ふん!あなたの力じゃなくて、そのハンモックとやらの力でしょう!」悔しげに言うエミ。 だが、ミスティは余裕綽々の態度だ。
「負け惜しみぃー♪負け惜しみぃー♪」そう言いながらさらにそっくり返る…そしてとうとうバランスを崩した。
「ひゃぁ」
背後にひっくり返りそうになり、とたとたと後向きに2歩、3歩と後ずさり…トムッ…ハンモックに受け止められた。
ヒュル…ヒュルルルルル…
「ふんにゃぁぁぁぁ!?」
『ハンモック』がミスティに絡みつく。
ミスティはじたばた暴れたが、雁字搦めにされた上、エミと同じ様に服、リュックサックを剥ぎ取られ、「ぺっ」と言う感じで放り出された。
「…」エミは目の前の地面に放り出されたミスティを呆れたように見つめた。
裸に剥かれて縛られているのはエミと同じだが…ミスティは何故か縦横に『紐』が懸けられて荷造りされてしまっている。
ご丁寧に荷札もつけられていて、『お持ち帰り』と書かれていた。
「うー」涙目でエミを見上げるミスティ。
「あんた馬鹿?」呆れ口調でエミが言う。
「馬鹿じゃないもん!」口を尖らせるミスティ。
「そうは見えないけど?」エミがからかうような口調で言う。
「うっさい…」力なく応えるミスティ。
ひゅう…二人がいる空き地を一陣の風が吹き抜け、テーブルに敷かれていたスポーツ新聞が飛ばされてエミの顔に被さった。
エミが顔を振ると、二人の間に新聞が落ちた。 二人はついそれに目をやる。
一面は女子プロレスの記事だった。
『女子プロレスラー ピンクデビル VS ブラックバットの壮絶な対決!!
第一ラウンドで両者ロープに絡まりリングアウト!!
判定:第一ラウンドは引き分け。』
二人はがっくりと頭を垂れた。
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