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9.悪魔の裸エプロン


「じゃーん」
ミスティはエプロンを着ていた、他には何もつけていない。
「うふふ…似合う?」
”おお…これぞ悪魔の裸エプロン…ああ…動けない自分が恨めしい…”
もし、今のヒロシに目があったら涙を流していたろう…泣きつづける卵…何となく怖いが…

ミスティは台所にいって何か始めた。
「水をお鍋〜に八分〜♪」鍋に水を張り、ガスコンロにかけ、お湯を沸かし始める。
”?”いやーな予感がする。
”あのー、何をなさるんですか…”
「お・り・ょ・う・り・♪」
”何の料理を…”
「ゆ・で・た・ま・ご・♪」
”ひょっとして…”
「あったり〜♪」卵(ヒロシ)を指差す。
”助けて〜!”

ぐらぐら、湯がたぎる。
ミスティは騒ぎつづける卵(ヒロシ)を持ってきて、鍋に放り込む。
「グラ〜、グラッとゆでる〜♪」
”ギャアアアアアアアアアアア”
「大げさね、たかが熱湯に放り込まれたぐらいでー」
”だれでも叫ぶわ!全く…では、改めて、ギャアアアアアアアアアアア”
結構余裕である。
ミスティはお構いなしで、ギャアギャアわめくヒロシをゆで卵にしてしまった。

「卵をだして♪、お水につけて♪か〜んせいっと」
”完成じゃねぇ!熱かったじゃないか!”
「もう死んでるから大丈夫でしょ♪、さーて、傷をつけないように…」
手近のスプーンを取り上げ、コチコチ叩いて卵にひびを入れる。
”あへ?”
ヒロシは皮膚の感覚のようなものに戸惑う。
ペリ、”およ?”、パリ、”ひょ?”、ペリパリパリ、”おっひょひょ?”。
「うふふ…おっもしろいー…」
”なんか…感じるんですけど…”
「魂が卵に宿ってるから…カラを取ったあとは…裸になったようなものかしらねー」
”はぁ…ところで…この後おれはどうなるんだ?…”
「ミスティに食べられるの♪…」
”!やだー…食べられるのはやだ!…”
「でも…このままにしていても…腐っちゃうだけなんだけど…」
”…もうくさってるよ…”
「きゃはは…うまい、うまい…」
言いながら器用に卵をむき終る。

”あのー…どうしても?…”
「まだ、諦めつかないの?…じゃ…心変わりさせてあげるわ…」
色っぽい、大人びた雰囲気になる、ミスティ。ヒロシをそっと持ち上げてやさしく舐め始める。
”な、何…うぁ…ふぁ…いい…”
悪魔の舌の感触…それを剥き出しの魂で感じていると…食べられてもいい…食べられたいという気持ちに変わっていく…
”ふぁ…”
「ねぇ、どう…」チロチロ舐めつづけながら、甘く囁く。
”…はい、なんか…食べられたく…食べられたいような…”
あっさり堕ちてしまった。

もはやヒロシのはミスティのいいなりだった。


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