携帯

8.ミスティの本性


”おい…何がどうなったんだ!…”
ミスティはドレッサーに向き直り、鏡に向かって、ずいと卵を突き出す。
目の無い卵(ヒロシ)に見えるはずがないのだが、何故か周りが感じられる。
”…えーと…おれが…卵になったわけ?…”
「正解ー」
”…何故…こんな事に…”
「ミスティが、あなたの魂を抜き取って、卵に宿らせたからー」
”…ざけんじゃねぇ!だれがいつ、そんなことを!…”
カチ、ミスティが携帯を押す。
『…死んでもいい…』
”ばっか野郎!あれはそんな意味じゃねえ!さっさ元に戻しやがれ…ヒッ!?”

ミスティの雰囲気が変わる、表情が変わったわけではない、しかし、さっきまでの親しげで優しさする感じる雰囲気から、底冷えのする抜き身の刃のような剣呑な雰囲気になる。
「…みすてぃハ子悪魔ト名乗ッタ…認メマスカ?…」
”…み、認めます…”冗談や嘘が通るような雰囲気ではない…
「…アナタハみすてぃニ死ンデモイイト言ッタ…認メマスカ?…」
”…”
ミスティが凍りついた笑顔のまま、卵を顔の前に持ってくる。
「…認メマスカ?…」
”…み、認めます…”
急にミスティの雰囲気が元に戻る。
「ほーら、やっぱり言ったじゃない、というわけでーお願い聞いちゃいましたー」
”ぐわー”人のままであればひっくり返っていたであろう。
もっとも、ヒロシにはさっきのミスティが演技していたとは思えなかった。
”おれは、マジでヤバイことになりそうな…”
「そーんなことはないわよ」
”そ、そうか?…”
「もう死んじゃってるから、これ以下はないって♪…」
”うわー!…”

「さって、それでは次の準備♪…」
ミスティはクローゼットを開けて、着るものを探す。
「おっ、包丁もないのにこんなものが…これにしよー…」
何か取り出して、着はじめた。
ヒロシは今後の運命をあれこれ考えて恐怖していた。
”おれ…どうなるんだろ…”


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