7:尾


”尻尾…”
舌の時と同じように、動かしてみようとする。
が、今度はもともと無いものが増えた為どうすればよいかわからない。
腰をふってみるが、腰の動きにつれフルフル揺れるだけであった。
収納できるかどうかも分からない。

”困った…どうしよう…”
さすがに尻尾の扱いは思いつかない。
”腰に巻いて、一度帰ろうかしら。”
間抜けな事を考えながら、雑居ビルとビルの狭い隙間に入っていく。
知らぬ間に人目を避けている。
その恵美の後ろに人の気配があった。
恵美の感覚は鋭くなっているのだが、尻尾、尻尾と考えている為気づかない。

いきなり前に突き倒される。
「きゃ!」
”なに!痴漢!強姦魔?”
自分のことは棚に上げ、振り向く。
怒りの形相の男が立っている?
「おい、後輩に何をした!」
「!?」”しまった、さっきのを見られた…”
「みたぞ、お前、あの尻尾はなんだ、宇宙人か!?」
肩を掴み恵美を壁に追い詰める。
パーカー男と同じかそれ以上にたくましい。
”発想が貧困…ぐはっ?”
「答えろ!貴様!何者だ!」
男が首を締める…いや他と首の付け根を強く掴んでいる。
興奮して、相手の呼吸を阻害している事に気づいていない。
”息が、く、苦しい…”
ばたばたもがく、そして…
ヒュン…
「うあっ!?」
恵美の尻尾が男の股間を抜け、男の背後から首に巻きつく。
今度は男の方が息ができなくなる。
思わず口をあけるところに、尻尾の先が滑り込む。
「ぐぼっ、ごぼっごほ、ごは!?」
尻尾の先から何か液体が、それも大量にでて、男はそれを飲んでしまった。
尻尾がずるりと首をはなれる。
恵美「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…」
男「げほっ、げほっ、げほっ、げほっ、…」
2人とも地面に座り込み、呼吸を整えている。

恵美は尻尾の使い方を覚えていた。
”急に、つながったような…”
その時男が、ゆらりと立ち上がる。
”まずい…瞳で…あ!?…”
男の顔は情欲にあふれている、焦点が合っていない。
”何?…シッポ…媚薬…飲マセスギ…そうか、制限なしに尻尾の媚薬液を使ったから…?”
恵美の心に疑問が浮かぶ、自分は何故そんなことを知っている?
が、考えている暇はない、狂った男が正真正銘の強姦魔と化し、自分を襲う。
正気でなければ瞳の力はうまく効かない。

男が覆い被さってくる、こうなれば同じ事。
と、思ったがズボンが邪魔だ、男はズボンを脱ぐほどの知能も残っていない。
恵美の股間にズボンごと自分の股間を押し付けるのみ。
”バカな男って嫌い!…”
もう一度尻尾を使う、男の後ろから腰に巻きつけ、自分から引き剥がす。
男が暴れだす前に、体を起こして舌を使って一瞬でズボンを脱す。
いきり立つ男の物に、舌を巻きつけ刺激を加える。
男「ああ、へへへへ…」
男が大人しくなる、恵美は額をおさえてため息をつく。
”ここに脳があるのかしらね、全く…”
自分でやっといてひどい物言いであった…

一息ついて、男を舌と尻尾から解放する。
男が猛然と挑んできた、恵美を、突く、突く、突きまくる。
さすがの恵美も深く突かれて防戦一方「あん、はっ…もっと…深い…あん…」
しかし、サキュバスの性感は深い、まだまだ余裕がある。
そして徐々に男を己が物としていく…
腰をくねらせ、尻尾を伸ばし、男のアナルに突きこむ。
「うひ!」妙な声を上げるが、男は腰の動きを止めない。
尻尾がうねりながら、男のアナルにもぐりこみ、隠された男の性感帯を見つけ突き、さすり、なぶる。
後ろの方が気になり、振り向こうとするが、アナルから加わる快感で痺れてきて、自由に動くこともできない。

恵美は辺りに人の気配を感じ始めた、さっきの騒ぎを気づかれたようだ。
尻尾を細かく振動させる、同時に女陰も男のものを深く飲み込み、痛いほどに吸い、ねぶる。
アナルからの振動、女陰の締め付けと動きで男は一気に昇りつめ、大量の精を吐き出す。
ドクドクドクドクドク…ドック、ドクン、トロッ。

恵美は男から離れる、まだ精気はたっぷり残っているが、人がこちらに向かってくるのがわかる。

コートを羽織りなおし反対側に抜けようと考える、が、そちらからも人の気配がする。
”どうしよう…こいつは正気に返らないと思うけど…さすがに今見つかると切り抜けられるかどうか…”
「うぐっ…」
恵美の背中に鈍痛がはしる。
”ここのところ残業が続いてたから…肩こりが…違う?…これは!…”

通行人1「こっちのほうだぞ…男と女の怒鳴り声がした」
通行人2「痴話喧嘩かも…!?おい、どうした。…」
男「ああ、へへへへ…」
1「まともじゃないぞこいつ…見ろこのコート!」
2「女物だな、破けてる、こいつがやっのか?」
1「女は?いないぞ、逃げたのか…ああいた」
2人の入ってきたのと反対から、女が現れた。
通行人3「どうしたの、何があったの…」
女は恵美ではなかった。
1「あんたのじゃないのか?…このコート」
3「違うわ。…何これ、背中がこんなに破けて、いいコートなのに勿体無い」
2「あんたじゃないのか?…先に逃げたのか…」

恵美は3人の頭上にいた。
翼をはためかせて、空を飛んでいた。皮膜状の黒い翼で。
黒い翼、それは夜の住人、否、夜の支配者の証であった。


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