ワックス・フィギュア

25.ミスティ奮闘


 −−− 妖品店『ミレーヌ』 −−−

 エミは妖品店ミレーヌで、ミスティのサポートを行っていた。 他に、ミレーヌとブロンディがいたが、ブロンディは人形のように立ち尽くしている。

 「ミスティが居ないと、ブロンディは人形同然ね。 ミレーヌ、あれは何? 『ワックス・フィギュア』が分裂したの?」

 エミがスマホの画像をミレーヌに見せた。 ミレーヌはフードの奥から、スマホの画面を見ている……らしい。

 「……おそらく……あれは『ワックス・フィギュア』ではないでしょう……」

 ミレーヌは、あれは肉体が『ワックス・フィギュア』化した人間だろうと言った。

 「……『ワックス・フィギュア』が、人間達の願いを叶えるため……肉体を同化したのかと……」

 「それ、願いをかなえたことになるの?」

 「……多分ですが……肉欲を暴走させ……結果として……そうなったのでは……」

 エミはため息をつき、スマホの画面に映る『赤い女体』達を観察する。 喘ぎ声のような音を発し、辺りをうろうろしたり、互いを慰め合ったりしている。

 「知性があるようには見えないわね。 動きものろいし、ゾンビみたいじゃない?」

 「……ゾンビは……あたっているかも……ただ、人肉に対する食欲の代わりに……肉欲が残っているのではないかと……」

 「肉欲ゾンビ化した『ワックス・フィギュア』? ほっとくとどうなるの? 他の人間を襲って、同化を繰り返すとしたら、大変じゃない」

 「……それはどうでしょうか……」

 ミレーヌが言うには、一般のゾンビは人間を食料として消費するので、食料を求めて移動し、被害が拡大する。 一方『肉欲ゾンビ』は、互いに慰め合って

肉欲を満たすこともできるので、移動する必要がない。 よって被害が急に拡大することはないはず、と言った。

 「……とはいえ、時間が立てば……増えていくでしょうから……」

 「となれば、閉じ込めるか、封印するか……うーん、厄介なことになったわねぇ。 もしもし、ミスティ? 聞こえた」

 ”ほーい、聞こえたよ。 で、どうするの?”

 「あんたが考えなさいっ! て行っても無理か……ミレーヌ? どうすればいい?」

 「……ここは……『アイテム』を封印する結界で守られています……なので……ここに連れて来れば……」

 「ここに、連れてくるの?……あの数を」

 スマホに映っている『肉欲ゾンビ』は6人、他にいる可能性もある。

 「町内ならともかく、海の向こうよ。 こちらから行って、結界を張るとかできない?」

 「……かなりの時間をかければ……可能ですが……」

 「最終解決として、それも考慮に入れましょう。 他に、すぐ実行できる対策はない? 時間稼ぎでもいいから」

 「……そうですね……『ワックス・フィギュア』の肉体が……人の肉欲を包んでいると仮定して……」

 「うん?」

 「……『ワックス・フィギュア』は……人間の欲望で点火し……活動開始します……」

 「それで?」

 「……『肉欲ゾンビ』は……自分の肉欲で点火……でから肉欲がなくなれば……活動を停止するはず……」

 「満足させればいいの?」

 「……自信はありませんが……たぶん……」

 「しかたない……それでいってみましょう」

 エミはミスティに連絡を取った。


 −−− 某国 北部の軍研究施設 −−−

 「整理するね、この子たちは『ワックス・フィギュア』本体じゃなくて、『肉欲ゾンビ・スライム娘』化して人間達で、『ワックス・フィギュア』は別にいるから、

そっちは回収する。 で、この子たちは、満足させればいいと……オーケー、オーケー」

 ”自分で言っといてなんだけど、具体策はあるの? それと、怖いおじさん達もやってくるはずだから、そっちも何とかしないと……”

 「おっさんが大量に来るんでしょう? じゃぁ、そのおっさんたちを『肉欲ゾンビ・スライム娘』にあてがえば……」

 ”ちょい待ち! その方法だと、今いる子たちは満足するかもしれないけど、おっさんたちが同化されたらどうするの!”

 「そしたら、次に来るおっさんたちに……」

 ”ばかもの! それじゃ状況が悪化する一方じゃない!”

 「むー……じゃあどうするの?」

 ”地道に行くしかないかなぁ。 貴女が、あの子たちを一人ずつ満足せて。 動かなくなったら、どっかに閉じ込めるとか。 それと使える超能力、なんか

ないの。 こう、ピンクの星でレズ能力が向上するとか……”

 「そーいうのはないなぁ……」

 連絡中のミスティに、『肉欲ゾンビ・スライム娘』の1人が抱き着いてきた。 ミスティは慌てる様子もなく、その手をべしっとはたいた。

 「こら、おいたしない!」

 しおしおと引き下がる『肉欲ゾンビ・スライム娘』。 どうやら、ミスティには彼女たちの『技』は通用しないようだ。

 「しかたない、一人ずつお相手するか」

 ”あと『ワックス・フィギュア』本体は?”

 「あ、めっけた。 甕に納まってたから、帰るときに持って帰るね」

 ”注意してね。 それじゃ、状況に変化があったら連絡して”

 「りょーかいっと」

 ミスティは通信を切り、タブレットをコンセントに繋いで充電モードにする。

 「さーてと……君!」

 ビシッと『肉欲ゾンビ・スライム娘』の1人を指さす。 ミスティが知る由もないが、彼女は元オルガだった。

 「きたんさい。 かわいがったげる」

 「ハィ?」

 
 −−− 某国 北部 某研究所守備隊 駐屯地 −−−

 「師団長、研究所より救援要請が来ています」

 「連隊長に伝えよ」

 「はっ!」

 

 「連隊長、師団長が『研究所より救援要請あり』対処せよとの事です」

 「大隊長に伝えよ」

 「はっ!」

  :

  :
 「分隊長、中隊長が『研究所より救援要請あり』対処せよとの事です」

 「よし招集をかけ……まて、救援要請の詳細は?」

 「不明であります」

 「……対処の想定と装備を中隊長に確認せよ」

 「は?」

 「研究所でバイオハザードが起きていたらどうする」

 「確認します!」

 「あーそれと、下請けに回せるかも聞いといてくれ」

 「下請け?……ああ、民間の業者ですか」

 「ヤバそうなら、そっちに行ってもらおう」

 軍の出動には時間がかかりそうだった。


 −−− 某国 北部の軍研究施設 −−−

 「ア……ァァァァ」

 「んふふ……」

 ミスティは、オルガをベッドに押し倒し、秘所をゆっくりと弄っていた。 普段はドジが目立つミスティだが、腐っても小悪魔。

 彼女の体はシルクの手触りの肌に覆われ、マッサージだけで極楽、いや闇の快楽へと相手を誘うことができた。

 「ひっさしぶりだねぇ……ほうれ……」

 「ヒッ……」

 一声上げてオルガは崩れ落ち……溶けて床に広がっていく。

 「あれ?……もしもし、エミちゃん。 この子どうなったのか、ミレーヌちゃんに聞いて」

 ”待って……多分、肉欲が満たされて、核が消えて、形を保てなくなったんじゃないかって言っているわ”

 「ほー……じゃあこれでいいのかな?」

 ”とりあえずは……でも時間が立てば復活するかもって言ってるわよ”

 「んじゃ、復活する前に他の子もいかせないといけないか……あーめんどくさい」

 ”手伝えないから、頑張りなさいな”

 「他人事だと思って……んじゃ、悪い子、じゃねぇ、欲求不満の子はいねがぁ!」

 「キャー♪」

 ミスティは次の『肉欲ゾンビ・スライム娘』を捕まえて、秘所に手を伸ばした。

 「ニャァ♪」

 たちまち『肉欲ゾンビ・スライム娘』の息が荒くなってくる。

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