ワックス・フィギュア
22.融解
”もっと……突いて……”
”ねぇ……”
女達に促されるままに、研究員は腰を動かす。 すでに人の形を失いつつある女達が、それで感じているのだろうか?
”感じてるわよ……ああん……”
女の喘ぎが、ねっとりと耳に絡みつくようだ。
ズブリ……グチャリ……ズルゥ……
オルガの中、生暖い何かがモノに絡みつき、糸を引く。 その糸に引かれ、モノが再びオルガの中へ……
”そんな入り口で遠慮しないで……ねぇ……”
オルガが足を開き、ワーリャが研究員の背を押す。 背中に粘りつくワーリャの感触は、巨大なナメクジの様だ。
”うぁ……”
ビクビク震えるモノを、オルガの奥深へと突き入れた。 オルガの秘所は柔らかく広がり、彼を受け入れていく。
”ああっ……あ……”
広がる陰唇が彼の腰に吸い付き、さらに奥へと誘い入れる。 滑る肉の愛撫に、モノから腰、尻へと快感が広がっていく。
ヒクン……ヒクッ、ヒクッ……
男の精の泉が疼き出し、終わりが近い事を告げる。
”い、いきそう……だ……”
しかし、その小さな泉から湧き出す情熱だけでは、肉欲の塊と化した二人の女を満足させることはできそうもない。 オルガとワーリャも、その事を悟った。
”もっと……感じて……”
”全部……頂戴……”
二人は研究員を間に挟み、グジュグジュと音を立てて容赦のない愛撫をくわえる。
”ああっ……”
全身に加えられる快感が、精の泉に注ぎ込まれ、彼の体に溢れ出す。
”ひぃ……”
ヒクヒクと腰が、尻が、腹が蠢く。 快感に震え、中身が蕩け、男の情熱で満たされ、彼は人の形をした男のモノと化した。
”い……ぐぅ……”
オルガの中で、モノが硬直し、先端から情熱を、赤く蕩けた研究員自身を吐き出す。
ドクッ……ドクリ……ドクリ……
”ひきぃ……きたぁ……あう……”
研究員の体だったものが、オルガの中へ注がれる。 それは、オルガとの中でのたうち、暴れ、彼女を歓ばせた。
”あん……あたしも……”
ワーリャが研究員の顔を自分に向けさせ、その唇を奪う。
”ごぼっ……”
”んぐぅ……”
研究員の溶けた体が、ワーリャの口へと吸いだされる。
”ごふっ……ごふっ……”
研究員の上半身がヒクヒクと歓喜に震える。 彼の口は鈴口に、頭は亀頭と化して、ワーリャに彼自身を捧げる。
”ごふっ……”
”ああん……”
”ンクッ……”
研究員だった体は、風船から空気が抜けるようにしぼみ、縮んでいった。
ホウッ
アクリルパネルが吐息で白く曇る。
「……あ……」
主任は我に返りって後ずさり、後ろにあった椅子を倒した。 その音に、研究室のオルガとワーリャがこちを見た。
「ひっ!」
二人とも、もはや人の形をしていなかった……いや、形こそ人間の女だが、その皮膚がすべて剥げ落ち、赤い半透明のゼラチン状の体をさらしている。
そして、二人の足元には三人分の白衣と、しわくちゃの白っぽいビニール袋のような……中身を失った研究員の皮らしきものが……
「お、お前たちは……う、宇宙人なのか!? 二人の体を乗っ取ったのか!?」
オルガとワーリャは顔を見合わせ、肩をすめて見せた。
”宇宙人じゃないですよ”
”そうですよ、主任。 自分たちは、ここの研究所の所員ですよ”
「だ、だが……その……彼を……た、食べてしまったろう!」
主任が指さしたのは、研究員のなれの果て、中身がなくなった皮だ。 オルガがそれを掴み、持ち上げる。 グロテスクな塊が、濡れたタオルのように
だらしなく垂れ下がる。
”どうなったのかしら、この人”
”気持ちよくなって、アタシたちに交じったみたいよ? 中で喘いでるもの……あん……”
”ほんと……あはっ……これもいいわね”
オルガと、ワーリャは自分の体を撫でまわし、時折ため息をついている。 それを見た主任は、がくがくと震えて腰を抜かした。
「し、正気なのか!? お前たちは!?」
オルガとワーリャは再び顔を見合わせ、主任に視線を戻した。
”正気……だとおもいますよ”
”たぶん……んふ”
二人の眼が光った、様に見えた。 二人はアクリルパネルの横にあるドアに手をかけた。
ガチャ
”主任、鍵を開けてください”
「な、なんだと」
”ねぇ……こっちに来てくださいよ……”
ワーリャがアクリルパネルに顔を押し付けた。 平らに変形した顔に、主任が真っ青になる。
”あはは、変な顔”
”やーねぇ、もう”
「い、いかん。 いかんぞ、私は!」
主任は、背後の壁まで後ずさり、辺りを見回す。 この部屋は隔離されていて、アクリルパネルの隣のドアしか出口がない。
「だ、だれかが来ないか」
”残っているのは警備員だけですよ”
”朝になれば、他の人も出勤してきますけど”
二人は、ニマァと笑い、アクリルパネルの向こうから手招きをした。
”ねぇ……こっちにきて……”
”気持ちいい事……しましょう”
”そして……混ざりましょうよ。 私達と”
主任は生まれて初めて祈った、神に。
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