マニキュア3

20.青い爪の魔女


 −−マジステール大学附属高校 保健室−−

 『保健室』……それは、禁断の愛欲の場所……等ではない……(”〇8金”コミックでは鉄板ネタ)……はず……

 「あの……鷹火車先生……」

 「生方君だっけ? 部活の怪我? 熱射病?……」

 高校の保険室勤務の鷹火車女史は、3年の男子学生を前に身をかがめる。 胸元の深い切れ込みに、目を反らす生方。

 「あら、名前の通りうぶねぇ」

 顔を真っ赤にする生方に、にっこり笑ってみせる鷹火車女史。 黒く長い髪に整った顔立ちの彼女は、一見するとモデルか女優と思われる容姿をしている。

 おかげで、男子生徒の保健室利用割合は非常に高い。 但し、高校の裏HPの『恋人にしたい女性ランキング』に顔を出すことはなかった。 その理由は……

 「ふむ、女性関係の悩みかしら?」

 「は、はい」

 生方の返事に、ずいっと身を乗り出す鷹火車女史。

 「私に告白したいとか」

 「それはありません」 きっぱりと答える生方。

 「もう少し……まと……いえ、おとなしい人が好みなので」

 鷹火車女史の表情が、やや強張った。

 「そう? それは残念ね(正直な子ねぇ。 まぁ、当然の反応だとは思うけど)」

 一応は笑顔を保ったまま、鷹火車女史は背筋を起こし、生方の顔を見なおす。


 鷹火車女史は、養護教諭としては極めて優秀であった。 しかし、夕方になると学校の屋上に出て『高笑い』をすると言う、極めて特異な『趣味』を

持っていた。 学校側から、『趣味』を控えてはどうかと遠回しに注意されたこともあったが、演劇部の発声練習と同じで、腹の底から声を出す健康法の

一種だと言い、やめる気配はない。 そして、この『健康法』ゆえに、学生たちから引かれている所があった。 (その反応を引き出すこと、つまり『男避け』こ

そが彼女の真の狙いではないかとの噂もある)

 
 「えーと……先生はは女性ですよね」

 「もちろん」

 「でしたら……女性の……夜の生活とか……どうするのか……」

 鷹火車女史は小首をかしげ、生方の表情を伺った。

 「性交渉の相手を聞いているの?」

 「い、いえ!」

 「質問内容を具体的に言ってくれる? 大丈夫、どんな内容でもハラスメントとは取らないし、怒らないから」

 生方は息を吸い込み、身を乗り出した。

 「女性は、SEXの時どうすれば感じ……あー気持ちよくなるんでしょうか」

 鷹火車女史は、少し考える風になった。

 「そうね。 まず外部では陰唇の上の方、クリトリスという突起を擦過すると快感を感じるわ。 女性器内部では、Gスポット、ポルチオが感じるわ」

 「ろ、露骨ですね」

 「体の部分の名称に露骨も何もないでしょう。 保健体育で教わらないの?」

 「えーと……」

 「仕方ないわねぇ。 確か大学の方では、実践講義があるらしいからそれを取れば、生の女性器がみられるらしいわよ」

 「ええっ!? あ……それは聞いた事がありますけど……その聞きたいことは、少し違うんです」

 「?」 鷹火車女史は、生方の質問の意図を掴みかね、首を傾げる。

 「えと……つまり僕は男の子ですから、女の子がどんな風に感じるか、判らないんです。 だから……」

 「ああ……女の子がどう感じるか、想像できないというのね」

 「はい……僕は……ヘンタイでしょうか」

 「そんなことはないわ。 むしろ、相手の事を考えることが出来ているか、いいことよ。 ところで……」

 鷹火車女史はずいっと身を乗り出す。

 「相手がいるの?」

 「え!? いや、いえ……ただ……興味が……あって」

 「あ、そう……じゃあ……体験してみる?」

 「え……? ええっ!? た、体験って……ふ、筆……」

 「ああ、そっちでもいいけどね。 『女の子の体験』をしてみる?」

 ゴクリとつばを飲み込む生方の前で、鷹火車女史は右手の親指を口元に当て、爪の先を軽く噛む。

 パキ

 小さな音がして爪の表層が−−つけ爪がはがれ、その下から深い青に染まった爪が現れる。

 パキ、パキ、パキ……

 鷹火車女史の右手の爪が全て青い爪に変るのを、生方は固唾をのんで見つめていた。

 「せ、先生は……やっぱり……」

 「その様子だと、知っているのね」

 「噂……いえ、『学校の七不思議』のひとつ、『保健室には魔女がいる』って……」

 実際には、『不思議』とか『異常物体』はマジステール大学と付属高校合わせると、三桁に上ると言われていた。 アルファベッド三文字の国家機関や

民間団体が調査員を大学、高校に送り込んで来ているが、有益な情報を得られずにいた。

 「『魔女』……どうもあか抜けない呼び名よねぇ」

 「すみません」

 「まぁ、いいわ。 さて、ズボンを下ろして、ペニスを見せなさい」

 「え……えー!?」

 「何驚いているの。 私は養護教諭で、『魔女』よ。 男子生徒のペニスを見ても問題ないでしょう」

 「いえ、前者はともかく後者は……」

 「ごちゃごちゃ言うな!」

 「わぁ!」

 生方は飛び上がり、強制的にズボンを下ろされ、パンツを下げられた。

 「なによ。 若いのに、女性を前にして元気がないわねぇ。 礼儀を知らないの? 貴方のペニスは」

 鷹火車女史は、手の平に消毒用のアルコールを溢し、ダランと下がった生方のペニスを包み込むようにする。 冷たい感触に、生方は縮み上がった。

 「せ、先生」

 「消毒よ……さて」

 今度は鷹火車女史が立ち上がり、スカート、ストッキング、ショーツを脱いで下半身を露出する。

 「わ……魔女じゃなくて痴……」

 ギロリ

 鷹火車女史が殺意の籠った視線で、生方を黙らせた。

 「さてご覧なさい。 これが女性の生殖器の外観よ」

 指で自分の陰唇を広げて見せる。 生方の眼が見開かれる。

 「なによ。 今時、動画、静止画、見放題でしょうに」

 「い、いえ。 そんなことは」

 真っ赤になって口ごもる生方に、鷹火車女史は自分の性器と、生方の性器を比較しながら説明していく。

 「ほら、ここが外尿道口。 その上にあるのがクリトリス」

 初めて『生』で見る女性器に、生方は興奮……できずにいた。 鷹火車女史が、保健体育の実習のように教師口調で説明していた為だろう。

 「ほら、ここが外尿道口。 その上にあるのがクリトリス、陰核亀頭とも言うわ」

 「あれ? 亀頭って……男の……」

 「そっちは『陰茎亀頭』よ。 この二つは、同じものと考えてもいいの。 女性に男性ホルモンを投与していると、ここが肥大化とて男の亀頭に近づくのよ」

 「へぇ……」

 「そして、尿道の下にある開口部が膣口で、この奥に子宮、卵巣があるわ。 一方で男の方は、尿道から精子が出てくる訳だけど、尿道の奥に分岐路が

あって、精巣とそれぞれが膀胱と精巣に繋がっているわね」

 「それは授業で習いました」

 「そうね。 それで私の言いたいことは、男と女の生殖器は、形こそ違うけれども、構成要素−−パーツは同じだと言うことよと。 もっとも、形が違うから

快感を感じる場所が違う訳だけど」

 「へぇ」

 「さて、男性の場合は生殖器が露出しているから、刺激するのは容易よね。 でも女性の場合、クリトリスはともかく、ポルチオ、Gスポットは、膣の中に

あるから刺激するのが面倒なのよ」

 「そうか……男のペニスが『立つ』のは……」

 「そう、ポルチオ、Gスポットを刺激するため。 もちろん、子宮内に精子を届けるのが第一だけどね」

 「うーん」

 「だから、女性が自慰を行為でポルチオ、Gスポットを刺激するには、男性器を模した梁型、棒状の食品などが必要になるの」

 「食品?」

 「そう。 殆どの食べ物は、粘膜に接触させても安全だからね。 辛子なんかは例外だけど」

 「なるほど……為にはなります。 けど……思ったほど……興奮しないですね」

 生方は、自分のペニスに視線を落とす。 さきほど『消毒』された時に、一気に立ち上がったのだが、今はまた力を失っている。

 「それはそうよ。 お勉強してたんだもの。 そして、ペニスが小さくなると、女は快感を得られなくなる。 だから、『若い男はに限る』と言うことになるの。 

さてと……」

 鷹火車女史は、前かがみになって生方のペニスに手を伸ばした。 女性の手の感触に、ペニスがググっと力を取り戻す。

 「ペニスは尿道をくるんでこの形になっているの。 だから、ペニスの裏側には縫い目があるわ」

 裏筋をツツーっと爪の先でなぞる。 異様な刺激がペニスを走り、生方はブルブルと体を震わせた。

 「せ、先生?」

 「それでこうすると……やっ!」

 鷹火車女史の人再指が、鈴口を撫でる。 そして、彼女は人差し指を生方のペニスに宛がい、力を込めて指をペニスに突き入れた。

 ズ……ブブブッ!

 ペニスが生方の股間に追しこまれ、続いて睾丸が巻き込まれるように股間に押し込まれた。

 「ふにゅぁぁぁぁ!?」

 痛みはなかった。 生方は股間に、やわらかな異物が入ってくる感触に妙な声を上げる。 未知の感覚、それは苦痛部はなかった。

 「一丁上がりと」

 鷹火車女史はパンパンと手のひらを打ち合わせた。

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