マニキュア3

6.少女


 ピク……ヒク……ヒク……

 ルゥの体が震える。 股間のモノが心地よい痺れで満たされ、震えている。

 あ……ダメ……来る……

 再びの絶頂……と思った時、それは来た。

 キュゥゥッ……ギュッ!

 あっ!……

 蠢めいていたモノが一気に縮み上がり、モノを満たしていた心地よい感覚が、小さな熱い塊になり……

 ズン!

 熱い塊が、股間から下腹の中に一気に入ってきて、そこで破裂した。 ルゥの背筋を、快感の衝撃が駆け上がり脳天を突き上げる。

 くぅ……

 ルゥは背筋を弓なりに反らし、その姿勢で硬直する。

 ふぅ……

 数舜後、ルゥの体から力が抜けベッドに横たわる。

 ……?

 ルゥは奇妙な喪失感を覚えた。 股間が涼しい。 太腿をすり合わせる。

 ない……

 さっきまであったはずのものがない。 手を宛がってみるが、やはりない。

 ……落とした?

 そんなはずはない、が、頭がぼんやりして、モノを考えることができない。 ルゥは意識せずに股間を弄っていた。

 フニ……

 指先に柔らかで、濡れたモノの感触があった。 自然に指が、その形をなぞっていく。

 溝……

 柔らかな溝を認め、そこを指でなぞる。 溝の間に指が入った。

 ヒクッ!

 『何か』を感じ、ルゥの体が震えた。

 あ……また……

 ルゥの指が勝手に動き出す。 自分では溝を『なぞっている』つもりだが、指は溝の中『爪で軽く引っ掻ぃて』いる。

 はぁ……

 ルゥの息が荒くなってくる。 それをルゥは他人事のように聞いていた。

 はぁ……はぁ……

 指が溝を往復している。 その動きにつれて溝が広がり、奥から濡れた肉襞が現れ、指先に絡みつく。 ルゥの体に甘い疼きが広がり、喘ぎ漏れる。

 あぁ……

 股間から甘い疼きが生じ、それが波のように体に広がっていく。 体が蜜のような甘い液体に満たされていくようだ。

 気持ちいい……

 ベッドに横たわり、甘い喘ぎを漏らすルゥ。 その股間では、黒い爪の生えた手が、別の生き物のように蠢き、ルゥを快楽の夢に誘う。 黒い爪の舞踏は

次第に早く、深くなり……

 ああ……ああ……あ……

 ささやかな喘ぎ声と共に、ルゥは達した。

 
 ん……

 ルゥは体を起こす。 腕に力が入らず、起き上がるのに苦労した。

 なんか……変……

 目の前をかざし、表、裏と返してみた。 爪は黒いままで、指が細くなっているような気がする。

 よっ……と?……

 ベッドから起き上がり、立とうとしてよろけた。 腕と同じように、体に力が入らない。 足まで細くなっている気がする。

 なに?……

 ルゥはクローゼットを開いた。 クローゼットの扉の裏に鏡がついていて、それで自分を映してみる。

 ……?

 鏡の中に女の子がいた。 自分と同じプラチナブロンドで、目が青い。

 お姉ちゃん?……じゃない……

 鏡の少女を見て、自分の体を確かめる。

 ああ……僕だ……

 ルゥは、鏡に映った少女が自分であることを認識した。

 まだ夢を見ているのか……

 しかし現実は認識できていなかった。

 
 うーん……

 鏡に映るルゥの体は少年っぽさが残り、胸は微かに膨らむ程度で、腰周りも小さい。 服を着れば、女か男か見分けるのは難しいだろう。

 どうかな……

 クローゼットから、姉の下着と服を取り出し身に着ける。 女物の服を着てみると、一応女の子に見える。

 これでいいかな……

 ルゥはそう呟くと、靴を履いて外に出た。 そして夢遊病者のような足取りでフラフラと歩き出した。

 ……

 ルゥは、自分がどこに向かうのか、判らなかった。

 
−− 『妖品店ミレーヌ』 −−

 店の奥のスペースで、麻美が大学の課題に取り組み、エミがそれをサポートしていた。

 「……だから、代替えの船舶燃料を確保すればいいんでしょう?」

 「現在、存在する物という条件があるでしょう? そうなると選択肢は限られるのよ」

 「メタンなんとか、ほら燃える氷とか……」

 「採掘技術が確立していないわ」

 「そんなこと言ったら代替の燃料何て、ないじゃない」

 「その通りよ」

 「え?」

 麻美はぎょっとしてエミを見直した。

 「実のところ、代替えになる船舶燃料の候補あるけど、必要量が確保できる目途は立ってないの」

 「えー?……でも、そんなに深刻な問題があるなら、もっと大騒ぎに……」

 「他に問題がいろいろあるから……。 50年、100年先の話なら、『優先度が低い』で後回しになるものよ」

 「そんなぁ……」

 麻美は大きくため息をついた。

 「取りあえず……さしせまった課題を片付ないと……あ」

 「ほら、そうなるでしょう?」

 未来の大問題より、大学の課題の方が大事な麻美だった。

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