マニキュア2 〜ビースト・ウォーズ〜

39.麻美の危機


 あ……う……

 麻美に組み敷かれた学は、呻き声を上げつつ彼女の動き合わせて体を揺すっている。 麻美は学の動きに

喘ぎで応えながら、彼に身体を優しく摺り寄せていた。


 「ふん……」

 ミスティは腰に手を当てて二人の交合をじっと観察していたが、不満げに鼻息を飛ばし、部屋の中をぐるりと

見回した。

 「ご不満?」

 斜め後ろに控えたエミが、マニキュアの小瓶を手で弄びながら尋ねる。

 「いろいろとお膳立てしたのに、これじゃお子様の遊び?」

 ミスティは無言でエミの方を見た。 彼女は部屋の中に視線を送って何かを探していたが、鷹火車保険医の顔に

捜していたモノを見つけて呟いた。

 「あれね、お膳立ての元凶は」

 全身に青い鱗を生やしドラゴン女と化した鷹火車保険医の額に、微かに赤く光るものが張り付いている。

 「マニキュアのラベル……あれが呪符か何かで、彼女を……いや彼女だけじゃない、多分麻美さんを操っていた、

違う?」

 エミの問いかけに、ミスティは肩をすくめて見せた。

 「ミスティが作ったわけじゃないから、知〜らない」

 「貴方じゃない?」

 「そ、もともとはおば様と前のミレーヌちゃんがやったことだもの」

 ミスティの上げた二人についてエミは何も知らなかったが、ミスティの関係者と辺りをつけて会話を繋ぐ。

 「そうなの? でも今回の騒ぎについて、ある程度は予想していたんじゃないの?」

 「さぁてねぇ……」

 ミスティは曖昧に答えてから、眼をすっと細めた。

 「それより、あちらは雲行きが怪しくなってきたみたい♪」

 「え?」


 うっく……

 一声呻いて、学が動きを止めた。 達したのではないようだ。

 「ねぇ?」

 「す、すみません……」

 謝るの顔に疲労が滲んでいる。 無理もない、ドラゴン女と虎女に責められた後、今度は魔女の相手をして精気を

吸われ続けているのだ。 これがRPGならHP1,MP0,empty寸前というところだろう。

 「んー……」

 麻美は困惑し、部屋の中をぐるりと見回した。 さほど広くない保健室の中には、ドラゴン女を筆頭に、ネズミ少女、

馬女、虎女、蛇女とビースト娘(一部少女)がひしめき、その相手をさせられていた少年たちが死屍累々と床に

のびている。

 「……」

 魔女としての麻美の『魔力』は主として男性の精気を元にしている。 なので、精気の供給源がボーイフレンドの

学一人の麻美は、『魔力』の供給に限界があり、たいした事は出来なかった。 鷹火車保険医が、ビースト娘を

量産し大勢の少年を集めてハーレムを造ったのは、精気を大量に、かつ安定して集めるのが目的だったのだ。


 「人だろうと国だろうと、エネルギーや資源の安定供給を目指しての囲い込みは迷惑以外の何物でないわね」 

 ”メーワク、メーワク”


 「んー……ね……」

 麻美は、問いかけるような視線を学に送った。

 「学、貴方からこれ以上は精気を吸えないの。 だから……他の……いい?」

 言葉足らずであったが、学には麻美が何を言いたいのかよーくわかった。 そして、その結果がとうなるかも。

 「……」

 学の表情が曇る。 それはそうだろう。 どんな男でも自分の彼女(or彼)が、他の彼と『親密なお付き合い』を

するのを喜ぶ人はいない。 まして目の前で。 

 「ふっふっふっ……アーハッハッハッハッ」

 突如として部屋の隅から高笑いが巻き起こった。 麻美の剣幕に恐れをなして床にうずくまっていたドラゴン女

(鷹火車)が、麻美の気合が減少したと見るや復活してきたのだ。

 「よくわからないけどそれが貴女の限界みたいね。 お子様は引っ込んでおいでなさい。 この力を使うには、

どんな困難も恐れない、強い心が必要なのよ!!」


 「恥知らずなだけだと思うけど〜」

 「貴方に言われちゃおしまいだけど……みなぎる性欲に溢れる下心はありそうねぇ」

 ”マー、オゲレツ”


 「このエロ年増……」

 麻美はぼそりと呟いたが、内心焦りを感じていた。 もともとこの『床勝負』は学をいかせた方が勝ちというルール

で、虎女とドラゴン女(鷹火車)が始め、我慢できなくなった麻美が乱入したのだ。 激怒した麻美が、気合で虎女と

ドラゴン女を学から引きはがして今の状況に至っている。 怒りが収まってみれば、大勢の少年から精気を集めた

ドラゴン女や圧倒的な肉体を誇る虎女、その他大勢のビースト娘に対して、麻美は対抗するすべがない。

 (このままじゃ、また学をこの女の取られてしまう……)

 そうなれば、床に倒れ伏している少年たち同様、学も精気を抜かれて哀れな姿で床に転がることになる。

 (どのみちこの人たちには精気はほとんど残っていない……あの女やビースト娘達に吸い尽くされて……あ)

 麻美が目を見開いた。 何か思いついたらしい。


 「お〜何か思いついたかな」

 「何かって何?」

 ”ナニナニ?”


 「……学」

 「先輩?」

 「えーと……あなた以外の『男』には手も触れない……だから勘弁してね」

 「え?」

 麻美は大きく息をすって胸をそらせ、小ぶりだが、見事に整った胸がプルンと震える。

 「そこの淫乱女魔女教師!」

 「何よ? 小娘」

 戸惑っているドラゴン女に、麻美はびしっと指を突き付けた。

 「覚悟しなさいね」

 「は?」

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