マニキュア2 〜ビースト・ウォーズ〜

37.龍虎対決


 学はまどろみから覚めつつあった。

 ”先輩……夢?”

 夢なのだろう。 大人びた麻美が、優美な肢体を見せつけて学を誘っていた。

 ”来て……”

 積極的な麻美をやんわりと押し返す。

 ”……だめですよ”

 ”いいから……”

 ”……だめ”


 「ええから! こいっちゅうとんじゃ!」

 「ひえっ!?」

 耳元で怒鳴られ、学は跳ね起きた。 目の前に濃い赤色の水着(リングコスチューム)に包まれた、グラマラスな女体が

鎮座している。

 「……えーと。 先輩、新しい変身か何か試しているんですか?」

 「寝ぼけとるんか、ワレ。 お前のつがいはあっち」

 目の前のグラマーが指さす方を見ると、壁にもたれて不機嫌そうな麻美と、黒いレオタード姿の妖艶な美女がこっちを見ている。 

彼は、美女の方にも面識があった。

 「先輩と……エ……?」

 学が美女の名前を口に出しかけると、美女が人差し指を口に当てた。 どうやら名前を呼ぶなと言う意味らしいと判断し、口を

つぐむ。

 「力づくはカンシンしないわ」

 四人目の女の声が背後からし、冷たい腕が彼の首筋に絡みついた。

 「いっ!?」

 彼の胸元を這いまわる腕は、青い鱗で覆われている。 勇気を振り絞って振り返ると、予想通り爬虫類の様に青い鱗で

覆われた女の顔が眼前にあった。

 「せ、先輩……あの」

 泣きそうな顔で麻美に助けを求める学に、麻美が不機嫌極まりない顔で応える。

 「今、説明してあげるわよ」


 「……えーと? 僕が勝負の対象になるんですか?」

 釈然としない様子で学が訊き返した。

 「そう、そこのドラゴン女に変身した鷹火車先生と、こちら側の虎女さんで、どちらが貴方を先にいかせるかの勝負をするの」

 「なんでそんなことに!?」

 「なりゆきよ、なりゆき」

 投げやりな様子で麻美が応えた。

 「そんな……!!」

 抗議する学に、虎女がのしかかった。

 「ごちゃごちゃ抜かしなさんな」

 「ソウソウ、男は黙ってなさい」

 わさわさと胸元を這いまわる腕は、冷たく不気味なドラゴン女の腕。 一方の虎女は、彼の男性自身を狙っている。

 「ひっ!?」

 歯科医が見たら、感涙にむせびそうな見事な牙が並んでいる覗いている口が、彼のモノを咥えようとしている。 貞操よりも、

男性の、そして生命の危機だ。

 「こら、暴れるんやない。 怪我すっど」

 乱暴な口調でいうと、虎女は牙の生えた口から長めの舌を吐き出し、ベロリと彼のモノ舐めあげた。

 「!!」

 ネコ科動物特有のザラザラの舌がに舐めあげられ、縮こまっていた彼のモノが一気に臨戦態勢になった。 もっとも彼の感覚

では、”痛いっ!”だったが。

 「わっはっはっ、かわいいやっちゃ」

 豪快に笑うと、虎女は赤色のリングコスチュームに締め付けられている胸を屹立したモノに押し付けてきた。

 「ふみっ!?」

 サラサラした感触と共に、以外に柔らかいな谷間にモノが包まれた。 虎女は、そのまま学の股間に上体を摺り寄せてきた。

 「ち、ちょっと……」

 虎女の逞しい上体は、その厚みも幅も少年の下半身の倍はあった。 その溢れんばかりの筋肉が少年の下半身をベッドに

押さえこみ、同時に巨大な乳房が学自身を包み込んだまま下腹部の上を這いまわっている。

 「ヤルナ」

 ドラゴン女は呟くと、背後から少年の右肩の上に自分の顎を乗せる。 そして鱗に覆われた自分の首筋を、少年の首筋に

擦り付ける。

 「いっ?」

 人の首筋は急所の一つであり、かつ肌が敏感な場所だ。 其処を冷たいうろが這いまわる感触に、学の背筋が総毛立ち、

冷たいものが走り抜ける。

 「ククッ……」

 ドラゴン女は含み笑いを漏らすと、背後から腕を回し、力を込めて少年を抱きしめた。 ふくよかだが、鱗に覆われた冷たい

乳房と言う、およそ有り得ないものが、彼の背中に押し付けられる。

 「ソーレソレ……」

 ドラゴン女はいやらしく笑うと、学の背中と胸、首筋をを鱗に覆われた肌で摩りあげる。 その体から、甘いとも何ともつかない

不思議な臭気が立ち上り、彼の鼻腔をくすぐった。

 「ぐふぉ!?」

 不思議な香りに、学は激しくせき込んだ。 しかし咳が納まると、今度は奇妙な高揚感がこみあげてくるのを感じた。

 「ぐふぉっ……ぐっグッ?」 

 喉から異様な唸り声が上がり、体が火照ってくる。 すると、ドラゴン女の冷たい肌が心地よくなって来た。

 「ううっ、ウウウッ……」

 唸り声を上げ、学はドラゴン女の腕を捕まえて口元に持ってくると、その指を噛んだ。 ドラゴン女はニタリと笑い、肩越しに首を

伸ばし、学に頬ずりをした。

 「ウウッ?」

 学がそちらを向くと、ドラゴン女が彼の唇を奪う。 一瞬たじろいだ学だが、すぐに彼女の唇を奪い返す。 熱いモノが頭に昇り、

理性が失われていく。

 「グルルルッ……」

 獣の様に唸りながら、学は次第に自分からドラゴン女を求め始めていた。


 虎女が劣勢と見て、エミが虎女を応援する。

 「虎女! がんばれ」

 「……」 

 エミの応援に負けじと、鷹火車保険医の使い魔たちも、自分の主人を応援する。

 『マスター、ガンバレー』『ワーワー』

 「……」 

 押し黙って学とドラゴン女と虎女の狂宴を睨み付けていた麻美だが、その表情は爆発寸前、そしてついに。

 「いー加減になさい!」

 一声吠えると、ずいと前に出た。

 「黙って見てれば調子に乗って!!」

 ワナワナと震える手をずいと伸ばす麻美、その爪が深紅色の光を放っていた。

 「みてらっしゃい!」

 麻美は、両腕をクロスして自分の肩を掴むようにし、そのまま自分の服を引きむしった。

 「!」

 両肩から胸にかけて、真紅に輝く赤い『呪紋』が現れた。 続いて、その紋様から全身に赤い『呪紋』がツタの様に伸びていく。

 『……』

 一同はその光景に凍りついた。

 「グルッ」

 ……学君を除いて

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