マニキュア2 〜ビースト・ウォーズ〜

15.籠絡される駒潟野


手詰まりのエミが月を見上げていた同じ頃、駒潟野がマジステール付属高校に戻ってきた。 いや、正確には連れてこられた

と言うべきだろう。

 (ここは……どこ?)

 夢うつつの状態の駒潟野は、何かの背中に乗せられ、高校まで運ばれてきたのだ。

 カッ、カッ、カッ……

 リズミカルな音が、足の方から響いてくる。 単調な音が子守歌の様で、意識が夢の中に入りかけては、ふっと現実に戻って

くる。

 ”じきに到着だよ”

 あの元気のよい女の子の声が聞こえた。 なんだか、頭の中に直接響いたような気がしたが、気のせいだろう。

 カーン、カーン、カーン……

 校舎の中に入ると音が大きく響くようになり、駒潟野の意識が夢側から現実側に大きくシフトする。 彼は目の前にふさふさ

した黒い毛があることに気が付く。 人の髪の毛ではない。

 「……あれ?」

 黒い毛を視線で追うと、自分が黒っぽい大きな生き物に跨っていることに気が付いた。 そして、なぜか自分は裸だ。

 「え、馬ぁ?」

 彼が跨っていたのは、まさしく『馬』だった。 彼は高校の廊下で乗馬をしていたのだ、裸で。

 「な、なんで?……」

 混乱する駒潟野をよそに、彼を乗せた『馬』は歩を進め、やがて扉の前で止まった。

 ”ついたよ”

 『馬』が振り返って、彼に告げた……様な気がした。 栗毛の馬の愛らしい瞳は、さっきまで肌を重ねていた女の子にそっくり

……な気がした。

 「……まさか、君が……君なの?」

 駒潟野は『馬』に尋ねたが答えはなく、代わりに馬が大きく身を震わせた。 裸馬のに乗っていた裸人間の駒潟野は、馬の

背から滑り落ち、したたかに尻を打った。

 「あてて……」尻を抑えて立ち上がる駒潟野の前で、扉が音もなく開いた。

 「!?」

 駒潟野は扉の向こうの光景に、言葉を失った。


 シャー、シャシャー

 オゥ……アァァァ

 威嚇するように息を吐き出している鱗の生えた『蛇男』が、白衣(の上着だけ)を着た女を犯している。 駒潟野は白衣の

女性をよく知っていた。

 「鷹火車先生!? そいつは…… いけない! 今助けます!」

 駒潟野は、裸のままで扉の向こう側−−保健室に飛び込み、手じかにあった箒を掴みあげ、『蛇男』に殴り掛かった。

 シャー!?

 「化け物! 先生になにをする!」

 『蛇男』は驚いて飛び下がる。 駒潟野は、『蛇男』の背後に『蛇女』もいることに気が付いた。

 「い、いったいこれは、先生! 大丈夫ですか!?」

 駒潟野は箒で『蛇男』達をけん制しながら、『蛇男』と鷹火車保険医の間に移動し、背後に鷹火車保険医をかばう。

 「ァァ……あん。 いいところだったのに」

 「え?」

 意外な言葉に、駒潟野は背後の鷹火車保険医に視線を向けた。 全裸に白衣の上着を着ただけの、乱れた姿の保険医が

ベッドの上で身を起こそうとしている。

 「せ、先生?」

 「その子たちなら心配いらないわ。 私が作ったのだから」

 駒潟野は絶句すると、構えを解いて箒をおろし、鷹火車保険医に歩み寄った。

 「つ、作った? 先生が?」

 「そうよ」

 鷹火車保険医は眼鏡をかけなおして、ニタリと笑った。

 「こうやって」

 鷹火車保険医の爪が、駒潟野の首筋に食い込む。


 「ぐうっ!?」

 爪の先端から痺れるような衝撃が走り、駒潟野の体を貫いた。 硬直する駒潟野。

 「クッ……ククククッ……楽しんでくれたみたいね、あの子と」

 駒潟野は、頭だけを動かして鷹火車保険医の視線の先を追う。 その先には、先ほどの『馬』がいた。

 「!?」

 『馬』が足をおって蹲っている。 と、その姿が溶けるように崩れ、色黒の筋肉質の女の子に変わっていく。 それはまさしく、

先ほどまで彼と情を交わしていた女の子だ。

 「これは……ひっ!?」

 鷹火車保険医の爪が、首筋から肩に、そして胸へと移動していく。 身動きできない駒潟野の肌に、奇妙に甘い疼きを刻みながら

 「クッククク……悪くないでしょ……この爪の感触は」

 淫らな笑み浮かべた鷹火車保険医の爪は、胸から腹へ、そして彼自身へと移動していく。

 「せ、先生? うぁ」

 鷹火車保険医は、両手で彼の男性自身を擽りながら、彼女の方へ誘うように動かす。 すると、硬直していた彼の男性自身が

さらに伸びていくではないか。

 「こ、これは」

 「クッ……ククククッ……まさに『馬』なみね」

 「ど、どういうこと……」

 駒潟野が混乱し、事態を理解できないでいるうちに、伸びていった彼自身が鷹火車保険医の女性自身に触った。 女史の

花びらが、彼の先端を舐めるように蠢く。

 「ああ……アァァ」

 艶めかしい声で喘ぐ鷹火車保険医、その体に奇怪な変化が起きる。 女性の花弁の辺りに青い筋が浮かび上がったのだ。 

青い筋は、植物の根が伸びるように、女史の下腹部に広がり、さらに先へと延びていく。

 「アァ……いいわぁ」

 『筋』が伸びる毎に快感が高まるのか、鷹火車保険医は腰をゆすってよがっている。 そして、その動きに合わせるように、

駒潟野の体にも快感の波と、青い筋が広がっていく。

 「うぁ……ああ……」

 快感が広がっていくにつれ、意識が朦朧となっていき、同時に体の痺れが薄れ、自由が戻ってきた。 だが、今度は意志の

力が快感の波に呑まれようとしていた。

 「ククク……イイキモチニナッテキタデショウ……サァ……」

 女史が指で駒潟野を招く。

 「……オイデ」

 駒潟野は、吹き上がる欲望のままに、『馬』なみとなった自分自身を静かに突き入れ、同時に、自分の意識が青く染まって

行くのを感じた。

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