マニキュア2 〜ビースト・ウォーズ〜

13.大穴森少年と鷹火車保険医


 麻美がミミを放ち、ミスティが畳を担いで徘徊していたのと同じころ、マジステール大学付属高校の保健室に大穴森少年の姿が

あった。

 「名前は?」

 「お、大穴森です」

 「オオアナモリ……ああ、これね」

 白衣の鷹火車保険医が、パソコンで彼のデータを検索し、何やら確認している。

 (いったい、なんなんだ?)

 大穴森少年は困惑していた。 放課後になると同時に、保健室に呼び出され、そのまま日が落ちるまで待たされていたのだ。

 (授業中ならともかく、放課後にここに居ても意味がないだろう……)

 心の中でそう思いつつも、なぜか『帰る』と言う選択を思いつかず、おとなしく待ち続けること一時間、ようやく鷹火車保険医が

姿を見せ、彼の問診を始めたのだ。

 「健康そのもの……条件にはぴったりね」

 「健康だったら、帰ってよいでしょうか?」

 大穴森少年は、しごくまっとうな事を述べたが、鷹火車保険医は取り合う様子がない。 

 「ふむ、あの子の見立てどおりね」

 「あの子?」

 「そう、その子」

 鷹火車保険医は、カーテンで仕切られた一角を指さした。 彼が視線を向けると、カーテンが割れて、緑色の何かが這い出して

くる。

 「!……あ……」

 ずるずると床を這ってくるのは、上半身が人、下半身が蛇の蛇女だった。 昨夜、彼は彼女に『襲われた』のだが、今の今まで

そのことをきれいに忘れていた、いや、思い出せずにいたのだ。

 「……せ、先生。 この子って……先生!?」

 視線を鷹火車保険医に戻した大穴森少年は、目を丸くして硬直した。 鷹火車保険医は、白衣の前をはだけて、下着姿をさらし

だしていたのだ。 煽情的な黒い下着が、白い肌が、彼の目を引きつける。 だがそれだけではなかった。

 「先生……それは……刺青?」

 鷹火車保険医の胸には、青く細い線の様な模様が書き連ねてあった。 複雑な文様は彼女の胸だけでなく、首筋や下腹を

埋め尽くし、ショーツの中に消えている。

 「クフフフフ……」

 鷹火車保険医は、妖しく笑いながら立ち上がり、手を広げて椅子に座っている彼に体を寄せてきた。

 「先生!?」

 驚いて身を引こうとする大穴森少年の首筋に、彼女の爪が食い込み、引っ掻いた。

 「ひっ!?」

 首筋に異様な感覚が走った。 痛みではない、痺れにも似た奇妙な感触が、爪で引っ掻かれた後を追う様に走ったのだ。 

未知の感覚に襲われた大穴森少年の動きが止まる。

 フフッ……フフフッ……

 鷹火車保険医が含み笑いを漏らす。 と、彼のシャツのボタンが外されていく。 目で追うと、緑色の鱗の生えた手が、器用に

ボタンをはずしていた。

 「き、君は……うっ!」

 むき出しになった肌に、鷹火車保険医の爪が食い込み、彼の肌に線を刻んでいき。 その後を追って、あの奇妙な感覚が彼の

肌を走っていく。

 「せ、先生……これは……」

 「フフ……これはね、魔法の爪よ。 この爪に引っ掻かれると、魔法の線、『呪紋』が後に残るのよ」

 彼女の爪は、彼の肌にくっきりとした青い線を残している。 この線が彼女の言う『呪紋』なのだろう。

 「そ、それは何で……ひっ」

 鷹火車保険医が、口を開けて舌をのぞかせた。 なんと、舌に『呪紋』がびっしりと引かれている。 彼女はその舌で、大穴森

少年の『呪紋』を舐めた。

 「ひっ……あぁ」

 彼の『呪紋』に甘い痺れが走り、それが何とも言えぬ脱力感と陶酔感に変わった。 大穴森少年は陶然とした表情で、鷹火車

保険医の舌の愛撫に酔いしれる。 


 鷹火車保険医は、数分ほど大穴森少年の首筋を舐めてから口を離した。

 「フフ……よかった?」

 「あ……はい」 

 大穴森少年、夢見心地で答えた。 

 「すごく……よかった」

 「これが『呪紋』の力……貴方に刻んだ『呪紋』は、すばらしい快感をもたらすわ。 代わりにあなたの体の精気は、私に流れ

込むのよ」

 「精気……なんです、それは……」   

 「よくは知らないわ。 魔法の元らしいけど」

 鷹火車保険医そう言うと、爪を大穴森少年の胸に食い込ませ、腹に向けて『呪紋』を刻んでいく。

 「ああ……ああ……爪だけでも……いい」

 「そうでしょう……フフ……この爪で引っ掻かれると『呪紋』を刻まれるだけじゃない、心も削られていくの」

 「心が……ああ……爪が……あそこに」

 「気持ちいいでしょ? 心が削られると意志の力が弱くなる……気持ちいいわよ……」

 呟きながら、彼女の手は彼の下着の中に潜り込み、若いオスの証を淫らに弄り回している。

 「あ……ああ……」

 抵抗するそぶりも見せず、大穴森少年は鷹火車保険医の思うがままになっている。 そして、彼女は彼の下着を一気に

はぎ取った。

 「……うわぁ……」

 シャー

 大穴森少年が間の抜けた声を上げ、見物に徹していた蛇女が何やら興奮の声を上げた。 鷹火車保険医が何をしたのか

判らないが、彼のモノは緑色の細かい鱗で覆われ、一見して蛇の様な姿になっていた。

 「フフッ……貴方はあの子に抱かれたでしょ? だから蛇の精気が体に残っていたのね……」

 鷹火車保険医はゆっくりと白衣を脱ぎおとし、ショーツを脱ぎ捨てた。 白い下腹に、無数の青い『呪紋』が踊っており、それが

神秘の入り口でもつれ合っているように見える。

 「先生……」

 大穴森少年がぼんやりと呟いた。 何が起こっているのか、理解する事ができなくなっているようだ。

 「おいで……貴方のそれで、私のここにおいでなさい……そして精気を注ぐのよ、私の体に」

 鷹火車保険医は、女の箇所を高々と持ち上げて大穴森少年を誘う。

 「代わりに快楽をあげる……そして、貴方は私の思うがままになる、いいえ、そうしてあげる……」

 大穴森少年は、ぶつぶついいながら鷹火車保険医を見つめ、そしてゆっくりと彼女に体を重ねる。 緑色の蛇と化した彼の

モノが、彼女の濡れた『唇』に触れる。

 「う……あ……」

 「ふふ……うっ……アウッ……アハッ……」

 二人はヒクヒクと震えながら、不自然な快感を味わう。 蜜の様に甘く、泥のように纏わりつく快感が、大穴森少年の、そして

鷹火車保険医自身の意思を奪い去っていく。

 「いい……」

 「キヒィ……イイ……キモチイイ……タマンナイ……」

 ”それでいいわ……それで……もっと……もっとよがり狂うがいい……”

 よがり狂う二人の声にかぶさるように、別の声がどこからともなく響いてきた。 それは、控えている蛇女の声とも違っていた。

 ”望むままに……欲するままに……狂いなさい……”

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