マニキュア2 〜ビースト・ウォーズ〜

6.保険医のたくらみ


 あぅ……

 因幡少年は黒バニーの中で果てた。 いつもなら虚しく宙を舞う熱い迸りが、雌の胎内を熱く濡らしているのが判る。

 キュゥッ!! キュキュキュキュ!!

 一拍おいて、黒バニーが愉悦の声を上げてのけ反り、因幡少年の体が黒バニーの上で弾む。

 はぁ…… キュウ……

 二人は、そのまま脱力してベッドに沈みこんだ。 けだるい沈黙が保健室の中を満たす。


 ツィ……

 「?」

 因幡少年は、背中を固いものが引っ掻いたの感じ、首をねじってそちらを見た。 白衣を着た鷹火車保険医のが、彼の背に

手を伸ばしているのが見える。

 「先生、何をしているんです?」

 「ふふ、すぐに判るわ……」

 鷹火車保険医はそう言うと、手を大きく動かし始めた。 因幡少年からは詩文の背中は見えないが、複雑に引っ掻かれて

いるようだ。 そして、その動きは次第に腰のほうに移動している。

 「先生?……あっ!?」

 因幡少年は驚きの声を上げた。 鷹火車保険医の手が、急に彼の足の間に滑り込んだのだ。 そして。

 「あっ?……先生、なんだか変な感じが……」

 「変? ふふ……どんなふうに?」

 「なんだか……あの、あそこから……変なかんじが……」

 因幡少年は、形容しがたい奇妙な感覚に襲われていた。 さっき、彼は黒バニーの中に熱いものを送り込んだ。 そして今、

黒バニーの中から生暖かいものが、彼の中に入ってこようとしている。

 「なんだか……あったかくて……ドロッとして……あぅ」

 ドロリとしたものが、黒バニーの中から因幡少年の中に流れ込み、生暖かいものが男の子の証に溜まって……溢れだした。

 「あぅ……ああ……これ……いい」

 トロトロと生暖かいものが、体の中に流れ込んでくる。 それを気持ち良いと認識すると同時に、因幡少年はその感覚の

虜になった。

 「うにゃ……溶けちゃいそう……変になりそう……」

 「変なものにはならないわ……貴方は、ウサギさんになるのよ」

 鷹火車保険医の言葉を因幡少年が理解するのに、数秒を要した。

 「はい?ウサギさん?」

 「手を見て御覧なさい、自分の手を」

 言われて自分の手を見た因幡少年は、自分の手に白い毛が生えているのを見た。

 「毛……毛が生えた?」

 みるみるうちに、彼の手や腕に白い毛が生えてくる。

 「え、ええー……」

 驚きの声を上げかけた因幡少年だが、自分が何に驚いたのか判らなくなった。 なにより、体の中に流れ込む生暖かい

快感に、思考力を奪われていたのだ。

 「先生?……なんか変です」

 「安心なさい、物を考える力は衰えているだけだから。 だから安心して……貴方は、気持ち良くなっていればいいのよ」

 そう言うと、鷹火車保険医は因幡少年の頭を軽く抑え、黒バニーの胸に沈みこませた。

 「ふみゃぁ……」

 「キューン……」

 「ほーら、この子の匂いがたまらないでしょう? この子が貴方を誘っている匂いよ。 もう逆らえない……」

 鷹火車保険医は、黒バニーと絡み合う因幡少年の体に手を這わす。 細い指先を彩る深い青のマニキュア、その色と同じ

複雑な文様が、彼の体に描かれていく。

 「ああん……きゅ……きゅーん」

 「アハ……イイ……」

 黒バニーの腕の中で、少年の体は次第に小さくなり、やがて可愛らしい一匹の白ウサギになってしまった。

 「ふふ……ふふふふ……おーほっほっほっほっほっ!」

 鷹火車保険医は、白ウサギをみて満足そうに笑っていたが、やがてそれはあの高笑いへと変わっていった。

 「大成功だわ。 ふふ、こうやって男の子を獣化して無抵抗になったところで精気を集め、さらに私への服従を刻み込んで

人に戻す……おーほっほっほっ!!」 

 高笑いする鷹火車保険医、その前で。

 ヘコヘコヘコヘコ……

 ウサギにされた因幡少年と黒バニーは、まださかっていた。  


 同時刻、『妖品店ミレーヌ』の裏庭で、小悪魔ミスティとサキュバス・エミが対峙していた。

 「エーミちゃーん……ミスティに勝てるつもり?」

 「そちらこそ、そんなものが通用するとでも?」

 エミは素手、ミスティはモップを構えている。 ただし、このモップはただのモップではない。 持っている者の掛け声に応じて、

自在に伸びたり曲がったりする武器で、その名も『なぁーりゃあー棒』と言う。

 「この棒の威力は知っているくせ」

 「知っているわよ。 だから通用しないと言っているの」

 「ふーん」

 ミスティは、くるりとモップを回し、その先をエミに向けた。 そして気合をこめて叫ぶ。

 『なぁーりゃぁー!!』

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