マニキュア

21.そして女は爪を研ぐ…


麻美と隆は、ベッドに腰掛け、戯れていた。
麻美はベッドに座り、隆がその太ももに座って麻美に背中を預けている…麻美が隆を背後から抱きしめ、股間をやさしく揉んでいる…
普通は、男女が逆か、女同士の体位だ…ごくまれに男同士もあるが(見たくない)…

隆は蕩けきった表情をして…ときおり甘い吐息を漏らす…
「ふぁ…あはぁ…」

さっきまで、麻美は隆を弄んでいた。
しかし、隆の急所を握りしめた時、隆が消耗しきっているのに気がついた。
「…ミミに全部吸われたのね…これ以上出させたらさすがにまずい…なら…」
それから、自分の太ももに隆を座らせると、股間を柔らかく揉み始めたのだ…

隆は、抵抗できない…そして、不思議な甘い快感の虜になった…
男根が大きくならない…固くならない…むしろ麻美に揉まれていると…どこまでも、柔らかく、柔らかくなっていく…
気色いい…股間が切なく…ジーンとした痺れに包まれて…それでいて射精したいという感覚が高まってこない…
隆は、姉の腕の中でゆっくり身もだえし、腰を動かす…

隆の腰…へその下辺りで、麻美の右手がやさしく『爪』を動かす…
そして、麻美の瞳がひときわ赤く光る…
「うふ…」

「ふみっ!…」
妙な声で、隆が鳴く…お腹が変だ…温かくぼっーとした感じがする…
「ああっ?…あ…あ…あん…あん…あああっ!…」
暖かく…ヌルヌルするような…初めての感覚に戸惑い…突然、快感として認識する…
「あふぁ…何?…いい…いい…いいよぉ…」
腰が動く…男性自身がトロトロになっていくようで気持ちいい…自然にお腹が突っ張り、股間に力が入る…
「あああっ!…あああっ!…あああっ!…」
背筋を駆け上る生暖かい快感…足を突っ張って弓なりに沿って耐える…股間がぎゅっと縮まり、快感も一緒に凝縮されていく…イチモツを、お腹に引き込んでしまいそうだ…
絶頂感が数秒続き…緩やかに落ち着いていく…
「ふはぁぁぁぁ…」

凄い絶頂感に頭がまだぼうっとしている…男性器だけでなく、下半身全体が痺れている…乳首までむずかゆい…
「どう?…よかった?…」
「うん…お姉ち…お姉様…とっても…」
「うふ…そう…もう一度…」
「はぁい…」
隆は喜んで姉の愛撫に身を任せる…
「そうそう…これでいき過ぎると女の子になるからね♪…」
「ふーん…え!…ちょ、ちょっと…あぁぁ…」
ぎょっとして、姉の手を払いのけようとする隆。 しかし、『爪』が性器をやさしく掻きはじめると、手から力が抜け、体が甘い快感に弛緩してしまう…
「…やめて…女なんかに…」
「くすっ…がんばりなさい…朝まで男でいたら許してあげる…」
隆は何とか抵抗しようとしているらしいが、甘い痺れはそれを許さない…
「あはぁ…だめぇ…オ××××は…気持ちいい…もっと…してぇ…」
あっさり陥落する…男でいられるのも時間の問題のようだ…
「根性なし…少しは抵抗しなさい…いっそ犬にしてポチとでも…ポチ?…そう言えば…何か忘れているような?…」

さて、その忘れられたポチ…もとい、魔女難の相が出ている男の方は…

−−−妖品店『ミレーヌ』近辺−−−

路上で、学は女悪魔に抱きしめられていた…さらに学の体は、悪魔の翼で包まれている…

学は、悪魔の瞳を見つめ、人形のように身動きも、瞬きすらしない…美しく金色に輝く瞳に魂を吸い取られているかのようだ…
『それで…その麻美さんに襲われたのね…』
『はい…』
学は、ずっと彼女の尋問(?)を受けていた…思考力を奪われ、今夜の記憶を洗いざらい調べられた。

彼女は、瞳の光を消し、大きく息を吐いて首を振る。
(…変な気配を漂わせていると思ったら…精気がほとんど抜かれている…この子の記憶が正しければ、この子の彼女が吸精魔になって、飼い猫が化け猫になった…この子の妄想じゃないわよね…)
女悪魔は翼をしまい、学を解放した。
学は、よろけて尻餅をつく。
意識が戻ったようだ、こちらも首をふって、しきりに瞬きしている。

その様子を見て女悪魔は微笑みつつ、思考を先に進める。
(猫娘の件は、私には関係ないけど…吸精魔が次々現れたらまずいわね…『マニキュア』を取り上げた方がいいかしら…)

「あの…」
「気がついたわね…」
「なにも…しないんですか?…」
「したわよ…もっとして欲しい?…」女が妖しく笑う。
学はブンブンと首を横に振る。

「あなたは…一体、何者です?…」
「ふふ…それより大切な用があるんじゃなかったの?…」
学は、はっとし、慌てて立ち上がり…途方にくれる。
「そうだ…入るどころか…見えないんだった…?…」
女悪魔の表情が険しくなった…『妖品店』のある方を見据える…
ユラリ…闇が揺れ、フードの付いたマントの人影が現れる…

「…」
「『ミレーヌ』…さん…」
学は、声を搾り出す…
「深夜に…騒ぐのは…近所迷惑…」
『ミレーヌ』の声は笑みを含んでいるようだ。

学は『ミレーヌ』に問いかけようとする。
が、『ミレーヌ』は学を制し、すいと片手を突き出す。
その手には、水晶球がのっていた。

「?」学と女悪魔はつられて覗き込む…

ベッドの上で、麻美と隆が絡み合っている…
目を丸くする学。 
興味深そうに見つめる女悪魔。

声も聞こえてくる。
『はぁ…変になりそう…』
『うふ…男の子でしょう、我慢できないの?…』
『我慢…何を我慢するんだっけ…』
『くすっ…そうね我慢することないわ…もっと変にしてあげる…』
隆は至福の表情で、姉にされるがまま、緩やかに悶える…
そして、冷笑する麻美の両目は、赤い光を放っている…

「なんなんですか! これは!」 学が驚愕する。
「水晶球…」ボソッと『ミレーヌ』が答える。
「いや…そうじゃなくて…またおかしくなってる…どういうこと…」続けて聞こうとするが、うまく質問をまとめられない。
学はパニックに陥った、何とかしないといけないのはわかるが、どうしていいかわからない。
見かねて女悪魔が助言する。
「電話してみたら?」
はっとして、学は携帯を取り出し…時刻を見て、一瞬躊躇し…麻美の携帯へプッシュする…

−−−如月家 隆の部屋 −−−

「あはぁぁぁぁ…!…」
隆は、姉の腕の中で何度目かの絶頂を迎える…
力が抜けて、姉の腕の中で荒い息をつく…
息が穏やかになって…眠ってしまった…
「すぅーすぅー」

麻美は、隆に対して責めを再開しようとして…止めた。
(さすがにこれ以上は…どうせなら、体力が回復してから…)
麻美は、隆をベッドに横たえる…
(さて…次は何を…)

タッタカター…着メロが響く。
携帯を取り上げ、発信者を確認…麻美はようやく思い出す、もう一人のオモチャの事を。
パカッ…チッ…「もしもし…小池君?…何をしてたのよ…」
「えーと…いや…あの…その…それより…えと…そう、隆君!…隆君はどうなりました?…」
麻美は、学の口調に違和感を感じる、学は何かを隠している。
(嘘のつけない奴…)
自分の喉に『爪』をあて、細かく動かす…
「小池君…戻って来て…」声に妖しい響きが加わる。
電話の向こう側、学の声が変わる…抑揚が乏しく、のろのろした口調になる…
『…はい…直ちに参ります…』
プッ…電話が切れた。

「うふふ、素直な子って好きよ…そうか、私は小池君が好きだったんだ…」
感情の起伏が大きくり、自分の思いがストレートに出てくる…そして、麻美は学に対する愛情を自覚する。
一度自覚すると、学が欲しくてたまらなくなる。
学がきたら、どうやって楽しもうかと妄想に浸りだした。

「待ってよ…正気に戻ったら…逃げ出すかしら?…うーん…どうしよう…心か体をいじって…」
…かなり物騒な事を考え始めた。

「『マニキュア』 小池君を魔女…じゃない魔男…何か変ね…なんでもいいわ、彼に『マニキュア』を塗れば…私みたいに変える事はできる?…」
(…我が魔力を蓄えることができるのは…生命の源…『子宮』のみ…一度女性化すれば…)
「駄目!…それは駄目!…どうしよう…『爪』で考えを変える事はできる?」
(一時的には…日単位しか持続しません…)
「んー…説得するまで口封じするとか」
(今のあなた様なら…猫にするぐらいは可能…)
「却下!」
(…『呪縛』では?…)
「『呪縛』?」
(心を縛る技です…子宮に魔力を湛えた魔の沼を作り…そこで魂を快楽に溺れさせ、魔力で絡め取ります…)
「…うふ…それいいわね…どう変わるの?…効果はどのくらい続くの?」
(呪縛の程度は術者次第…思考力を奪って奴隷とすることも…恋の虜とすることも可能…年単位で持続します…)
「…どうやるの?…」
『マニキュア』は麻美に『呪縛』の技を伝えた。
麻美は楽しげに爪を研ぐ…文字通りに…

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