マニキュア

10.変貌


隆は、爪にマニキュアを塗ろうとし…自分の手を見つめた…少年とはいえ男の手、これにマニキュアをしたら…「ふぅ…」…気分が萎えた。

「…ばかな思いつきだった…あ?…」
ミー…スリスリ…
足元でミミが鳴いて、足に体を擦り付ける…

「…よしよし…そうだ、お前に化粧をしてやろう…ミミおいで…」
手招きをすると、ミミが隆の膝の上に飛び乗る…
軽くミミの手を握り、マニキュアをチョンチョンチョン…反対の手にもチョンチョンチョン…
「ほーら綺麗、綺麗…」

ミミはおとなしくマニキュアをつけてもらうと、ピョンとベッドに飛び移る。
うずくまって、ペロペロ手を舐め、顔を洗う…
ピクッ…ミミの動きが止まった…
一瞬硬直した後、毛布の下に潜り込んでしまった…毛布の下でもぞもぞ動いている…
「ミミ?…」隆はミミの様子をいぶかしむ。
「どうした?…え…」
ムクリ…毛布が動いた…一回り大きくなったような?…
ムクッ…まただ…少し形が変わった…
ムククッ…人の形?…

ムクッ…ムクッ…と毛布が蠢く…
「ミミ?…」
隆は毛布をめくろうと手を伸ばす…
「フゥゥゥゥゥゥゥ…」
毛布の下でミミが唸る…ビクッ…あわてて手を引っ込める…
「ゥゥゥゥ…ァァァァァ…はぁぁぁぁぁ…」
声の調子が変わっていく…唸り声が…次第に人の声に…女の喘ぎに…

…毛布の裾から白い物がはみ出て来た…手?…赤い爪の女の手…
音もなく毛布が…その中身が伸び上がっていく…
スルリ…毛布が滑り落ちる…白い肌…ふくよかな胸…たっぷりとした尻…

それは…裸の女…さっきまでパソコンの画面でしか見たことの無かった隆の憧れ…
ゴクッ…隆は生唾を飲み込む…
年は20歳ぐらいだろうか…
髪は黒のショート…その色合いは…黒猫ミミの毛皮にそっくり…
女の尻の辺りで何か動いている…尻尾…猫の尻尾…
耳は人の耳の形…ただし尖っている…
女が隆を見た…潤んだその目は…まん丸に開いた猫の目…

「はぁぁぁー…隆様…」…女が隆を呼ぶ…唸るような…誘うような…そう、さかりのついた雌猫のような声で…
「ミ、ミミ?…」隆の声が震える…それが『ミミ』である事は判っている…しかし、何が起こったのか理解できない…

スッ…ミミは音もなく床に降り…手をついて四つんばいになる…
(あ…ビデオみたい……)
ミミは上目遣いに隆を見つめ…舌で唇を舐め上げる…ペロリ…その赤い唇の間から、白い鋭い牙が僅かに見えた…
(…た、食べられる…)隆の心に恐怖が芽生える…

ジリ…ジリ…隆の足に白い猫女がにじり寄ってくる…
ガタタッ…隆は椅子ごと下がろうとするが…後ろは机、下がれない…

「んー隆…様ぁ…」
スリスリ…ミミが隆の足に擦りよる…ゴロゴロゴロ…ミミの喉から甘える声が…静かな部屋に大きく響く…
隆は僅かに安堵する…どうやら『喰う』つもりはないらしい…
「ミミ…」そっと呼びかけると、ミミが顔を上げる…その瞳がすうっと細くなり、にぃーと笑う…猫…いや女豹の微笑み…
「ひっ…」怯える隆…

ミミは隆の膝頭を両手で掴み…隆の足を開かせる…
そして、上体を隆の足の間に滑り込ませる…胸のふくらみが、太ももを押し広げる…
チリチリチリ…微かな痛み…膝頭を爪が掻いたらしい…

スリスリ…ミミは隆の股間に頬擦りする…
カチリ…ミミの牙がチャックを捕えた…微かな金属音…
チチチチチチチ…
ミミが頭を巡らすと、ズボンのチャックが下りていく…
若く固い強張りが…?…出てこない…
「ふにゃ?」

ミミは不器用に隆のベルトを外し、ズボンをずり下げた…隆の下半身はブリーフのみとなる…
ブリーフの下で、隆の男根は哀れに縮こまっていた…布団に潜り込んで震える幼児のように…

「くす…それなら…」
ミミは口を開け、人差し指を咥える…
チチチチチチ…舌で爪を舐め上げる…いや…『爪』が舌の真中に線を引いた…

ヌラー…長い…ヘビの様に長くなった舌がミミの口から伸びていく…
スルッ…ブリーフの前から長い舌が滑り込む…
「ふぃ!…」…隆が切なげな声を上げた…
ミミの舌はヒクヒク動きながら、ブリーフの中へ中へと潜り込む…
「ひっ…ミミ…や、やめっ…ひぃ…ふひぃ…」
ザラザラザラ…長い猫の舌が…隆の陰嚢に巻き付き、締め上げ、舐めあげる…
「!…!…」男の証の中からキュゥン…キュゥン…と切ない快感が湧き起こる…
こみ上げてくるものが、ミミに対する怯えを、少しずつミミへの欲望に置き換えていく…

ヒクッ…ヒクッ…隆の男根が、ブリーフの下で痙攣する…そして確実に『男』を示し始める…
「ふみ…」
ミミの舌もさらに伸びて行く…舌の先端は陰茎の根元に巻き付いた…
赤い濡れた蛇…ザラリとした感触を擦りこみながら陰茎を這い登る…目指すは隆の…男の兜…
「ひぃ…ひぃ…」ひきつったような声を上げ、隆はミミの舌に酔う…ザラザラした濡れた舌の感触は、例えようの無い危険な快感…
これでいってしまえば…もうミミのものになるしかない…そう直感する…

隆の一物がブリーフを押し上げ、上に伸びていく…見方によっては、亀頭がミミの舌から逃げようとしているようだ…
ズヌッ…亀頭の先端がブリーフからはみ出した…そこに舌が追いついてきた…
スルスルッ…ザラザラザラ…舌がカリに巻きつき…ザラザラと舐めしゃぶる…
「ひ…だめっ…い…」もう鈴口以外は全てミミの舌に包まれている…ザラザラした肉のリボンは容赦なく一物を舐めあげている…
「い!…い!…」隆は首を横に激しく振って耐える…

スルルッ…ザラーリ…鈴口までが一気に包まれ…舐め上げられた…
隆の陰嚢に、熱いのか冷たいのか判らない異様な感覚が溢れ…一物を痺れさせながら亀頭に向って吹き上げた…
亀頭まで達した時、強烈な快感であった事をやっと体が理解した…
「ひぃぁぁぁぁぁ…」男根が隆を裏切り、ミミの舌の下僕となった…ミミの舌に愛撫されるままに喜びを見いだし…白い液体を激しく迸らせる…
息が止まりそうな激しい快感…隆が硬直する…長い射精…それがミミの舌や顔を汚していく…
くたっ…唐突に隆の体から力が抜け、椅子に体を預ける…
「はぁ、はぁ…」荒い息をつき余韻に浸る…

(弄ばれた…)そう感じた…なのにミミに怒りも嫌悪感も湧いてこない…
隆の太ももにはミミのつけた『爪』の痕が赤く残っていた…

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