マニキュア

9.帰宅…そして次の問題


−−学と麻美が元に戻って数分後−−

麻美はベッドに腰掛け、うなだれてていた。
備え付けのバスローブを羽織り、両手で体を抱いている。

麻美の体は小刻みに震えていた。
先ほどまでの異様な快感は抜けていた…取り合えず…
ズキッ…
「!…」破瓜の痛みか、時々膣の奥が痛む…その度に腕に力が入る…

(あたし…どうしたの…)
思い出す…『爪』が…自分を変えた…変えようとした…
ズクッ…
「う…」今度は疼き…子宮の奥が疼く…快楽の残滓…暖かく粘るものの感触…もっと…
ブン!…力の限り首を振る…
(あたしじゃない!…あたしは欲しくない…)
感情が錯綜する…恐怖…否定…怒り…戸惑い…そして…気がつけば満たされなかった欲望の事を考えている…
麻美は自分自身に怯える……

「んー」学は廊下の自販機の前で考えていた…麻美は学に言った。「…コーヒー…」と。
思案の末、HOTとCOLDを一本ずつ買う。
部屋に戻ると…麻美はまだベッドに座ってうつむいていた。
そっと横に座り、口を開けたCOLDの缶を麻美の手に…
麻美は、無意識のうちにコーヒーの缶を手にとって飲み始めた…

(よかったみたいだ…)
自分はHOTを飲む。

「…ごめんなさい」 一息入れて麻美があやまった。
「…何があったんです?…話してもらえますか?…」学は平静を装って聞く。

麻美はマニキュアを入手してからの経緯を話し始めた…

「…『悪魔のマニキュア』…」 
「信じられないと思うわ…馬鹿馬鹿しい話よ…」
「信じます…」
「…」
「さっきまでの事は普通じゃない…ぼくもその『マニキュア』は尋常なものじゃないと思います…」
「小池君…ありがとう…うっ…うっ…うっ…」麻美はコーヒーを握り締めたまま泣き出した…
「…先輩泣かないで…それよりその『マニキュア』は?…」
「家よ…机の上…」
「捨てましょう、これ以上とんでもない事が起こらないうちに」
「うん…」 こくりと頷く麻美…

二人は、後始末をすませて(初体験であった事に気がつき、赤面しつつ)、ホテルを後にする。
日付が変わってしまい、警官や知り合いに合えば面倒なことになるところだったが、幸い何事もなく麻美の家についた。
学が入るのはまずいが、事情が事情だ…

「えーと、御両親はお留守なんですね?」
「ええ…弟は多分寝てると思う…けどそっと入りましょう…」
そーっと足を忍ばせて、麻美の部屋に入る二人…だが…
「!…ない!」
「え…」
「ない…確かに机の上に…」
「出たときはもう正気…えーと変になってたわけでしょう…持って出たということは…」
「いえ…そんなはずは…?…」
ハァン…

二人は顔を見合わせた。
「今の声は…弟さんにしては…」
「女性の声みたい…」
そっと廊下に出る…

アハァ…ハァ…ハァ…
女の声…それもよがっている…
「…まさか…隆があれを?…」
「確かめましょう」
学は厳しい顔で促す。
再び忍び足で廊下を進む…といっても数歩で目的の場所だ…
ハァ…アハァン…
間違いない、声はドアの向こう側からだ…

そっとドアを開ける…
ムッとする雌の匂いが流れてくる…そして…「アハァ…いい…いい…」女の喘ぎ声…
「隆!…」麻美が部屋に飛び込む…
二人が見たのは、ベッドの上で艶かしく動く女の背中だった…

麻美の弟の身に何が起こったのか…時間は麻美が出かけた直後に遡る…

−−如月家、麻美が出かけた直後−−

隆は中古のパソコンを使って英語の勉強中…
「Hand Jobs…えと…ああ『手コキ』か…」
何を見ているのやら…

「んー…うわー…女の人にしてもらうと良さそう…」
パソコンの画面では、Porn Movieが再生中…
金髪の女性が赤いマニキュアをした手で、テラテラ光る男性器を擦っている。 男は目を閉じて、女にされるがままに喘ぐ…

「…そーだ…確かお姉がマニキュアを持ってた…さっき出かけたみたいだし…あれで…」
自分ではいい思いつきのつもりで、隆は姉の部屋に忍ぶ…やはり麻美はいない…

目的の物は机の上にあった。
隆はマニキュアを取り上げ部屋に戻ろうとする…
ナー…
「…ミミ…しょうがないな…邪魔するなよ…」
飼い猫が足にじゃれて、一緒に部屋に入ってしまった…

椅子に座って、マニキュアの蓋を捻る。
隆は蓋を開けた…

【<<】【>>】


【マニキュア:目次】

【小説の部屋:トップ】