マニキュア

8.ロスト…


学は夢を見ていた…

水…池…美しい池…白い靄がたゆたう池…緑色の丸い葉がお盆のように点々と浮いている…蓮の葉?…ここは極楽?…
一つの葉の上に白い人影…麻美だ…
透けそうな薄絹をまとい…葉の上に横座りしている…神々しい…女神様のようだ…(先輩…)
自分の体が見えない…ここにはいないらしい…

ググッ…(う…)
亀頭の先端に圧力を感じる…体は無いのに…
同時に蓮の上の麻美が顔をゆがめる…(苦しい?…痛い?…)
グッ…グッ…グッ…プチチッ…(ああっ…)
麻美が前のめりになって下腹を押さえた…
直感する…麻美が処女を失ったのだと…

ヌ…
澄んだ池の表面に黒いものが…
ヌー…
何か伸びてきた…黒い棒…蓮の蕾?…何処か見慣れた形…(自分の亀頭?…)
それは自分の一物に似ていた…随分長くなっているが…

(暖かい…先っぽが…)
見ているものと感じているものが違う…亀頭がひどく気持ちのいい場所にある感じ…暖かく湿った場所で…柔らかな滑る圧力…
亀頭の中でギンギンした快感が響く…響く…体の中から熱くドロリとした形容できない快感がこみ上げる…
キュゥゥゥゥ…(あぁぁ…)
睾丸が強烈に痺れる…痺れが竿の中央を上る…もう止まらない…止められない…

ドロロロロロロ…
水面の亀頭が真っ黒い液体を噴出した…粘っこそうなそれは池に流れ落ち…澄んだ池を真っ黒に染めていく…
池は見る見る黒くなっていく…黒い水に触れた蓮の葉は茶色く枯れていく…
ドボ…(あ…)麻美が黒い水に落ちてしまった…
一瞬水面下に沈み…直ぐに水面に上半身を現す…真っ黒になって…

薄絹は黒く染まり、体に張り付いて少女の裸身を浮かび上がらせている…
その顔は…先ほどまでの神々しさは消えうせ…淫靡な笑みを浮かべている…
麻美は黒い水をすくって体に塗る…すくって飲む…清楚な女神から黒い淫らな女神に変わっていく…
(先輩が…僕の欲望で…汚れていく…)
情けないようであり…ひどく嬉しいようでもある…亀頭は黒い欲望を噴出し続ける…止まらない…止まらない…止…

学の意識が現実に引き戻される…夢と変わらぬ現実に…

「う…あ…あぁぁぁぁぁ…」
意識が戻る…射精感が鮮明になる…ドクッドクッドクッドクッ…亀頭が痙攣しながら粘っこい液体を吐き続けている感覚…
「あぁぁ…止まらない…いい…」 学は夢見心地で呟く…

ドロンと曇った目が麻美の姿を捉えた…
「あぁ…先輩…」 
恐怖を覚えてもおかしくない光景があった…
麻美の下腹部が昆虫の腹のように波打ちながらヒクヒク蠢く…中で自分のものがしゃぶられ吸い出されているのが判る…
麻美の女陰から腹、胸、足に向って黒い筋が伸び、複雑な模様を描きながら全身に広がっていく…その模様は妖しく蠢き、少女を魔性の女に書き換えようとしているかのようだ…
麻美の体が学の欲望で黒く染まっていく…

頭を垂れていた麻美が顔を上げる…うつろな目は宙を彷徨う…快感に酔っているのか…
麻美の口から異様に長い舌がデロリと吐き出される…口が笑みの形に…
「イイワ…イイワ…アナタノ欲望…アナタノ精…モット…モットチョウダイ…『麻美』ガ魔ニ染マルマデ…」
「…どういう意味…ひぃぃぃぃ…」
学は疑問を最後まで口にすることはできなかった…麻美の女性器が、学を強烈に吸い上げ始めたのだ…
ズッズズズズッ…麻美の女陰は下品で淫靡な響きを奏でつつ、強烈な吸引で学の全てを吸い尽くそうとしている…
「ホラ…イイデショウ…全部吸イ出シテアゲル…」
ズズ…「うぅぅ…」
ズズズ…「はぁぁ…」
ズズズズズズッ…「ひぃ…た、玉が…す、擦れる…」
体の中から何かが吸い出される時、睾丸を激しく摩擦して、悶絶しそうな快感を生み出していた…睾丸が吸い出されそうだ…

(うぅ…先輩…何が…あぁぁ…)
何が起こっているのか…思考することさえままならない…考えようとしても…ズズッ…間断なく何かが吸い出され激しい快感で頭の中が真っ白になる…
このままだと学は骨と皮だけしか残らないか…全部呑み込まれるか…
「あぁぁぁ…吸われる…全部…堪らない…気持ちいい…もっと…もっと吸って…」
思考が止まる…もう学は麻美の虜…逃げ出す事などできはしない…

ズ…
「ウ?…」
唐突に吸引が止まった…
学の心に失望が生まれる…(止まった…もっと吸って…)
そして、快楽の虜になっていた学が徐所に正気に戻っていく…
「あ…あれ?…先輩?…」
麻美は硬直していた…黒い紋様は薄れ、舌も元の長さに…何より爪の輝きが消えていく…
「ク…時間切レ…残念…」 麻美が呟く…
くたりと麻美が学に倒れこむ…
学はあわてて麻美を受け止める。
「先輩!?…大丈夫…あらら…」
力が入らない…どちらかというと学の方が大丈夫ではないようだ。

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