ミルク

44.ガフとアマレット


ガフは扉を開けようと鍵を調べていた。
(ちっ…並みの鍵じゃなかったか…まずいな…?)
カチリ
小さな音がして扉が開く。 空気が動いて誰かが入ってきた。
「アマレット?」小さく呼びかける。
「待たせたね」確かにアマレットの声だ。
「お前…意外に器用だったんだな?」
「『ミルク』の力さ…中に溶け込んだ…命の力や魂の技が引き継がれるみたい…」
そう言ってアマレットがガフに近寄ってきた。
ガフにはアマレットの言葉の意味が判らなかったが、雰囲気が違うのは感じていた。 何より…
「…この匂い…」
予想していたとはいえ、あの…甘い『ミルク』の匂いがアマレットの体から漂ってくる…思わず腰が引けた。
「…」
無言でアマレットが皮袋を突きつけた。
タプン…重々しい音がする。
ガフは唾を飲み込んでからそれを受け取った。
「これが…あれか…」
「ああ…嫌ならやめてもいいんだよ…」アマレットが言った。 微かに悲しそうな気配がする。
答える代わりにガフは皮袋に口を付け、一気に口の中に流し込む。
(む…)
人肌に温まった『ミルク』…その香りが口腔に満ちて鼻に抜ける。
舌に絡みつくようなそれが何をもたらしてきたか…吐き出しそうになるのを堪え、一気に飲み下した。
「うぐぅっ…」
ガフは喉に絡みつく感触に嘔吐感を覚え、腹に収まって落ち着くまで口を押さえていた。
「何もそんな嫌そうにしなくたって…」アマレットが顔をしかめる。
「いや…そうじゃなくて…おりゃ『ミルク』が苦手でな…」情けなさそうに言うガフ。
「これがて酒だったらなぁ…『末期のミルク』じゃ今ひとつぱっとしねぇ」そう言って今度はガフが顔をしかめる。
アマレットはガフの物言いに苦笑した。

無粋な牢の中は不潔で湿った匂いが立ち込めている。 しかし、その中にあの『ミルク』の匂いが混じりはじめた。
…ガフ…
アマレットの呼びかけにガフが頷く。 体の芯が疼いている。
二人は着ていた麻の服を脱ぎ、腐った藁の寝床に重ねた。
ガフはそこに腰を落とし、アマレットを招いた。
アマレットはガフの脚を跨ぎ、中腰でガフの頭を胸に掻き抱く。
「なんだ、もっと胸がでかくなってるかと思ったのに」アマレットの胸は『ミルク』を飲む前と変わっていなかった。
「これから大きくなるのさ…あん…」
ガフはアマレットの乳首を咥え、舌先で転がした。
アマレットの喘ぎを頭の上に感じながら、手をアマレットの股間に差し入れる…フニャ…指先にアマレットの『女』を感じた。
(うお…柔らけぇ…)
押せばへこみ、離そうとすると名残惜しそうに纏わりつく。 ヌルヌルしたその感触が素晴らしい。
アマレットの秘所を太いガフの指が摩っていく。
「あん…やらしい…」アマレットが濡れた声を上げる。
「いいじゃねぇか。 今更気取ったところで…う…」
アマレットが手でガフの男を捕まえ、秘所に導き、そのまま前後に動かした。
こげ茶色の亀の頭が、畑に鋤を入れるように溝をなぞる。 何度も…何度も…
ガフの手が止まり、息が荒くなる。
「う…くぅぅ…こ…これは」「はぁ…いいだろう…あふ…あたし…アタシモ…何か…変…変ニ…」
アマレットの陰唇がうねって亀頭を舐め、吸い付く。 うねうねと動いて奥に誘う。 ガフの頭の中で声なき声が響く。
…オイデ…ハヤク来テ…アタシノ中ニ…
「これはたまらん…みんな喜んで…はぁ…溶けちまうわけ…ああ…」
「ああ…あたしも…たまんない…あんたが…アンタガ欲シイ…全部…アア…」
アマレットの声が頭に響く。 逆らうつもりも無かったが、こうなってみると抗えない分、引きずり込まれそうで怖くなって来た。
「う…吸い込まれるようだ…もう少しゆっくり…うおっ!!」
アマレットは我慢できなくなった。 一気に腰を落とす。 二人は深く繋がり…動きを止めた。

はぁ…はぁ…ハァ…ハァ…
互いの息遣いだけが闇の中で響く…
ガフは固い棒が果てしなく柔らかい、甘い肉の袋に包み込まれているのを感じていた。
ピク…ピク…うっ…うっ…
僅かな動きが、甘い疼きとなる。 一度擦りあげれば盛大にいってしまうだろう。
ふぅ…うん!…
覚悟を決めて、腰を振った。 褐色の棍棒は鞘からすべりでて、一気に突き上げられた。
ズ…ン
凶悪な衝撃がアマレットの内を叩く。「アヒィ!…」
そしてガフは…「あ…あ…あああ…」…全身に溢れる甘美な感覚に酔いしれていた。
彼の男がアマレットの中を一気に進んだとき、甘い肉襞はそれを受け止めるように纏わりついて来た。
想像を越えた悦楽に貫かれたのはガフの方だった。
冷たいとさえ感じられるそれが、一気に体の芯を突き抜けた…それが氷が溶けるようガフのうちで溶け…蜜の様に甘い快感で体を満たした。
「た…は…と…蕩け…」「アハァ…今の…凄かった…ネェ…モット…」
アマレットがはしたなく腰を揺するが、ガフはあまりの快感に白目を剥いていた。
しかしまるでアマレットの声が聞こえたように、ガフは再び腰を使い始めた。
ズン…ズン…ズン…
「アン…アア…逞シイ…モット…モット…」
アマレットの嬌声を耳にしながら、ガフは奇妙な感じに捕らわれていく。
甘い…子供のころに一度だけ口にした蜂蜜…体の中が蜜でいっぱい…溢れそうなほどに…溢れる…溢れてしまう…
「あ…駄目だ…蕩けて…い…」
「キテ…がふ…」
「あ…ああ…いく…すまんな…先に…あ…」
ガフは最後にか細い声をあげ、アマレットの中に放ち始めた…
ヒクッ…ヒクッ…ヒクヒクヒクヒクヒクヒク…股間が痙攣するように脈打つ。  粘る液体を放つ感触が止まらない。
は…はぁ…はぁぁぁぁ…ガフは放心したように天を仰ぎ、彼の男根は別な生き物の様に精力的にアマレットに放ち続ける…
ガフの全身が心地よい脱力感に包まれる…薄ら寒かったはずの牢の空気が、次第に湿った暖かさに変わっていくようだ…
(ああ…そうか…おれはアマレットの中に…)
ガフは理解した。 自分はいま『ミルク』になってアマレットに呑み込まれつつあるのだと…
心が安らぐ…当然だろう…出てきたところに帰って行くのだから…
ガフはそっと目を閉じて、安らかな温もりと蕩けるような妖しい肉の快楽、その両方に身を任せ…変貌しつつあるアマレットの胎内に己を放つ続けた。
…後は…お前次第…だな…
ビュクビュクビュク…ビュクン…
「ア…アア…アアアッ…ハァ…」
アマレットは体の奥にひときわ熱い奔流を受けた失神した。 
ズリュ…ズリュ…ズリュ…
そして、濡れた皮袋を引きずるあの音が響き、アマレットは一人に…そして『女神の娘』となった。

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