ミルク

38.性教育


触った瞬間、妙な感じがして声が漏れてしまい、思わず力が入った。
幸い握っていると、多少もどかしさは紛れ落ち着いてくる。 だが、今度はコロコロした所が膨れ上がってグニグニ動いている。
(…変…それにジンジンいってる…)
今度は両手を使って全部握る。
ふぅ…
ようやく落ち着いた。 そのまま変なのが収まるのを待つ事にする。

(…風邪かな…汗かいたし…)
ちょっと熱っぽいような気がしてきた。 少年は股間を押さえたまま木に寄りかかった。
ザラッ。  身じろぎをする度に麻の服が肌に擦れるのが気になる。
気色悪くて肩を上げ下げしたり、背中を木に擦ったりするがどうにも落ち着かない。
熱が上がってきたのか頭も少しボウッとしてきた。

サク…正面で軽い足音がした。
顔をあげると…「あ…」
白い顔、瞳の無い目…さっきの白い女だ…それが20歩程の所に立ってこちらを見ている。
(追っかけてきた…ああ…逃げなきゃ…)
頭の中では逃げないといけないと判っている。 しかし、熱っぽさで考えがまとまらない。 それに…
(服が…気持ち悪い…ザラザラして…)
それどころではないはずなのだが、生理的な不快感は高まる一方だ。 そこでようやく自分がどんな格好をしていたか思い出した。
(いけない…変なところを握ってた…じゃなくて…ああどうしよう…)
少年は木にもたれかかったまま混乱し、無意味にもじもじしている。

白い女は小首を傾げて少年を見た。 離れたところから声を掛ける。
「…漏レソウナノ?…」「違うよ…体がムズムズして、気持ち悪いんだよ!」
そんな会話をする相手ではないはずなのだが、体の不調のせいか、今度は今ひとつ恐怖心が沸かない。
彼女が笑ったようだ。
「脱ゲバ?」
「え?」
「服ガ気持チ悪インデショウ。脱ゲバ?」
「…」
少年は女の顔を見て、自分の体に目を落とし、そして微かに赤くなった。 それを見て女が言う。
「私モ裸ダケド?」
「…」
少年は迷う…しかし言われて見ると服の感触が不快であり、一度そう思うと我慢できなくなってきた。
ちらちらと横目で女を見ながら服を脱ぐ。

「ふぅ」少年は裸になって一つ息を吐いた。
熱っぽい肌に森の涼しい空気が心地よい。 もっともムズムズした感じは消えていないし、楽になった分警戒心が湧き起こってきた。
「こっちに来るなよな!」と強がって見せる。
「サッキハ泣イテタクセニ」
少年はむっとする。 言い返そうとしかけ、もどかしさが強くなってきた。
両手で体を抱きしめて見るが、今度は股間が妙な感じとなる。
「カユイノ?」
「何か…変なんだ…」少年の声に不安が混じる。 さっき女にされた事が原因だと判りそうなのだが、なぜかそれが思い浮かばない。
サク…また草の擦れる音がした。
少年がそちらを見ると、女が仰向けに横たわっている。 そして両手を広げた。
「?」
「オイデ」
「え?」
「抱キシメテアゲル。落チ着クワヨ」

少年は何度か瞬きをした。
この女達を退治しに来たはずで…あれ…何で?…
頭の中であれこれ考えるのだが、うまく考えがまとまらない。
何より、皮膚がムズムズして我慢できない。 何より、横たわった女の姿を見ていると不思議と心が安らぐ。
少年はしばらく身を捩じらせて耐えていたが、結局我慢できなくなり女のもとに歩み寄る。
そっと女に寄り添い、彼女に体を重ねた。
「…」
少年の顔は女の胸の谷間にうずまった。 鼻腔を濃厚な乳の香りがくすぐる。
大事なところは少年の女の下腹の間に挟まった。
「ふぅ…」
女のいう通り、肌が触れ合っているところはムズムズした感じが収まっている。
何よりこうしていると、そう遠くない昔に自分がいた所を思い出す…
(…ママ…)
女はそっと両手を少年の背中に回し、やさしく摩る。 それだけで背中の皮膚も嘘の様に落ち着いていく。
「…」
女の手はすべすべしていて、背中を滑る感触はとても心地よい…
女の足が、少年の足に絡みつくようにしてそっと摩ってくれる
足の方も落ち着いてきた。
少年は安心しきって目を閉じ、女の愛撫に身を委ねた。

程なく、もどかしさは殆ど無くなった…大事なところを除いて…
「ドウ?落チ着イタ?」
「うん…」少年は口ごもる。
「マダドコカ…アア…」女は笑った。
そして密着している腹部に手を滑り込ませる。

「わっ!」さすがに少年が慌てるのを女が制した。
「大丈夫ヨ」そう言って少年の大事なところをそっと手で触る。
「そうじゃなくて…汚いよ」少年はすまなさそうな口調で言った。
「汚イ?イイエ。ココハトッテモ大事ナトコロ…ソウ教ワラナカッタ?」
「それは…」少年は口ごもる。
実のところ、排泄器官が大事であると言う事は彼の中では大いなる謎なのであった。 彼はその部分の真の役割を知識としても、経験としても持っていなかったから。

女は再び笑うと少年の手を自分の股間に導く。
少年は驚いて手を引っ込めようとする。
「わっ!汚い!」
「マァ」女がちょと睨んでみせる。
「いや…ごめんなさい…いや…でも!」言い訳する少年。
その隙に女は少年に自分の秘所を触らせた。 彼はフニャリとした感触にぞっとする。
そして、微かに濡れた指の匂いを嗅がせた。
「ドウ」
「…ミルクの匂いがする…」少年の心の中で何かがチクリと動いた…しかしそれはすぐに忘れられる。
「汚イ?」
「いや…でも…」少年は指と女の顔を交互に見る。「でも…ここがなんなの?」
少年の問いに女がキョトンとする。 そして笑った。
「アア…ゴメンナサイ。ソウネ…知ラナイワヨネ…アハハ」
「むぅ…」少年はむくれた。
「アハ…ゴメン。ツマリ、女ノ子ノココハ、男ノ子ノソレヲ受ケ入レルヨウニナッテルノヨ」
今度は少年がキョトンとする。 頭の中で彼女の言葉を反芻する。
「えと…つまり…剣と鞘みたいに?」
「ソウ」
「そんな!」
少年にとって、驚愕の事実であった。

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