ミルク

36.聖なる場所


カルーアが力を抜くと、白い谷間から騎士がすべり落ち、粘る音を立てて『クリーム』に沈む。
すぐに娘達が彼をささえ、水面に浮かび上がらせた。
ユラユラと白い水面に漂う男の瞳はどんよりと曇り、手と足を伸ばした格好で大の字に漂う。
そして、男の証だけが張り詰め、天を指し示して存在を誇示している。
「アハ♪」
一人の白い女が男の足の間から顔を覗かせ、手を伸ばして固い棒を包み込むように握る。
ふぅ…
ため息のような声が男の口から漏れたが、彼は抵抗する素振りは見せない。
女は顔を寄せ、亀頭の裏筋から鈴口にかけてを舐めあげる。
リ…リリリリリリ…
舐めらかな舌の動きは、男の頭の中にだけ響く音を奏でる。 男の証が、その音に合わせて喜びの踊りをおどる。
「ン…イイミタイ。 サァ、ミンナオイデ」
プカリ…ポカリ…男の周りに白い頭が次々と浮かび、指を咥え、わき腹に吸い付き、耳を噛む…
はぁ…はぁ…
徐々に熱くなっていく息を感じながら…男は目くるめく快感に漂う。
ビクリ…ビクリ…イチモツが大きく脈打ち始めると、股間を舐めていた娘は亀頭くわえ込んだ。 そして、合図をするように強く吸う。
うっ…
男の体に漣のようにその感触が伝わると、陰嚢のなかでトロリとしたものが動き、溢れ…そして迸る。
ビュック…ビュクビュクビュク…
男は『クリーム』の上に漂ったまま、蕩けていく快感によがる…そして、その体の厚みが徐々に、しかし確実に減っていく…

「くっ…」もう一人の騎士は、カルーアの腰辺りにしがみ付いたまま、仲間の最後を見ている事しか出来なかった。
正面に回ろうとしたのだが足場が悪く、まごまごしているうちに仲間がカルーアの胸で揉み解されてしまったのだ。
あたりを見回しても、抵抗している兵士も騎士もいない。 正気なのは自分だけらしい。 もっとも遠くから騎士団長の怒鳴り声が聞こえてくるから全滅ではないようだが。
「このっ!ふんっ!」
やけくそ気味に目の前の白い壁(カルーアの腰)に短剣を突き立ててみるが、文字通り刃がたたない。
「ネェ…オイデヨ」「ヤサシクシテアゲルカラ」
すぐ側では、『クリーム』の中から女達が顔を出しては誘い、嘲るように身を翻して、『クリーム』の飛沫を上げてみせる。
(馬鹿にしやがって…この魔人どもが…)
心の其処で呪いの声を上げるが、その彼も腰が…男根が疼く。 手も足も痺れ始めている。 いつまで正気を保てるか判らない。
刺すような視線を女達に向ける。 見られた女はくすりと笑い「オオ怖イ」と言って、とんぼをきって頭から『クリーム』の中に逃げ込む。
一瞬、触手に変形した女の足がさらけ出され、すぐに見えなくなる。
その時あるものが男の目にとまった。
(!?…そうだ下からなら…しかし…)
男はドロリとした『クリーム』の湖に目をやった。 さっきまで其処で溺れていた…ここにもう一度入ったらどうなるか…
「ええい!ままよ!」
一声叫んで男は『クリーム』に飛び込む。 そして無理やり下に潜っていく。

「ああ!馬鹿め!自分から飛び込みおった!」ルトールが地面を蹴って罵る。
「こうなったら油だ!油を湖に流して火をかけ…」「やめな」ガフが冷たい口調でルトールを遮る。
「貴様!傭兵の分際で何を!」「カルーアや女達に捕まってる連中はまだ生きてる。生きたまま火あぶりにする気か?」
ガフの指摘にルトールは口篭もった。 部下を見殺しにする上官についてくる者はいない。 まして部下を自分から手にかけた指揮官が、その後皆からどう思われるか…ルトールにもそのぐらいは判る。 
「ならば矢だ!一匹ずつ狙い撃つ!」
「少し遠いね。専門の弓兵はいないだろ」とアマレット。「絡み合ってる。どっちに当たるか判らないよ」
ルトール「き…!!」口を開きかけ、真っ赤になって押し黙る。 挙句は石を拾って投げ始めた。
「やれやれ…」ガフ呆れて呟いた。 その横でアマレットが何か指をおって数えている。
「どしたい」
「ん…いやね…カルーア達の数が…と40…」アマレットが首を傾げた。「村人だけで50人はいたんじゃ…」
「少ないか…まあ年寄りもいたろうし…うえ」つい『白い婆さん』に襲われる自分を想像してしまい身震いするガフだった。

一方、最後の男はドロドロと纏わりつく『クリーム』を掻き分けて深く潜り。 見当をつけて上に向った。
目指すはカルーアの足の付け根…其処には大事な…そして弱い部分が集中しているはずだ。
(もはや騎士の戦いではない。これは俺の意地だ。)
フニャリ…顔が柔らかなものにぶつかった。 さっきまでつかまっていた腰に比べると頼りなげな感じだ。
間髪をいれず、そこに右手の短剣を突き立てた。
ズブッ。 右手が肘までめり込み、それがビクリと動いた。
(やった!…!?)
ソレがめり込んだままの右手をねじ上げる。 思わず短剣から手を離すと、ソレが短剣と右手を押し出した。 手を離れた短剣がすぐ脇を沈んでいく気配がした。
(駄目か…おわっ!)
頭が当たっていた所が動いた…と思ったらソコが二つに割れて頭を挟む。
(こ…ここは女の…ひゃぁぁぁ!!!)
肩までを柔らかな肉が挟み込み、柔らかく動く…『クリーム』付けされた体がそれに応える。
我慢していた分が爆発するように、熱く甘い快感が上半身を襲う…
(…!…!)
ヌッチャ、ヌッチャ…『クリーム』ごと、男の体を咀嚼するように肉の顎が蠢く…柔肉が男を捕え、奥へ奥へと誘う…
(たばっ…と…溶けてしまう…)
男は自分が巨大なペニスとなったかのような快感に襲われていた。 
彼は必死で絶えた。 ここで漏らせばあっという間に全てを出し尽くしてしまう…そう直感していた。
フニュァァァァ…フニュァァァァ…
(あ…ああ…)
巨大な肉の壁が感じられる…皺の一つ一つまでが…うねって吸い付き…摩り捏ね上げる…
…おいで…なかにおいで…それはそう言っていた。
(…!…!)
漏らさないように耐えるのが精一杯で、肉襞の動きに逆らう事ができない。
ズブリ…(駄目だ…うう…呑み込まれた…)
頭の天辺からつま先までが熱い肉に包まれたのを感じたとき、男は自分の敗北を認めた。
それでも「いく」事を拒みつづけたのは、男自身にもわからない意地だったのだろうか。
気の遠くなるような肉の愛撫に…その恐ろしい快感に、男の意識は白く染まっていく…
ニュル…不意に体が解放された。 どこかに押し出されたようだ。
「くう…!」体を襲う快感の余韻にうめく。 震える瞼を引き剥がすようにして目を開けた。

…其処に女神がいた…
淡い光に包まれた女…神々しい光を放つその人は『女神』に間違いない。 彼は考えるのでなく直感した。
「…あなたは…」”よくぞ、ここまで来た…我が直に相手をしようぞ。 さあ、来やれ…”
そう言って女神が手を差し伸べる。 かれはつられる様にその手を取った。
「!!!」手に冷たいものが走った…それが瞬時にゆっくりと暖かさに…捕えどころの無い柔らかく暖かい快感に変わっていく。
「あ…あ…」背筋がゾクゾクして、身動きが取れない。
”恐れるな”そう言って彼女は彼の手を握り締め、引き寄せた。
彼の体は、恐れ多くも女神に抱きとめられる。
「!…!!!」
女神に触られたところが冷たくなり…そして暖かくなる…体が内から蕩けていきそうだ。
硬直してしまった彼…まるで射精寸前の怒張の様に…手を回し、足を絡め、腰を擦り寄せる。
「だ…だめ…」あまりの快感にか細い声で拒絶するが、女神の秘所が彼を捕えるとその声も無くなる。
彫像のようになった彼に、しがみ付くようにして女神は己を貫かせた。
そして、奥深くに男の証を受け入れると…一言命じた。
”きやれ”
キューン…耳鳴りがする…頭の中が白い…股間が自分のものでなくなったようだ…
陰嚢の中が熱い気持ちいい…熱くて気持ちいい…それが陰茎に…亀頭に…
「あ…」ヒクッ…何かが漏れた…ヒクッ…ヒクッ…ヒク…ヒク…ヒク…
出て行く…女神の中に…熱く濡れた所に…漏れていく…
男はそれが自分自身であることに気づいた…女神の中に魂だけが出て行く…
そしてそれが何かに触れた
「…!…」
男の魂に限りない優しい何かが染み透っていく…男の魂と女神の魂が混じり…一つに溶け合ってしまった。
ニュル…ニュル…ニュル…女神の一部となった男の魂はその体を抜け出して、女神の胎内に…在るべき場所にかえっていった。
そして抜け殻となった体は…バシャリ…瞬時にミルクと化し床に流れ落ちた。
女神は体を起こす…男の魂を慈しむように己が下腹をそっと摩った…

其処は生命を生み出す場所…女にだけ存在する神殿…ゆえに神は其処にいた…

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