ミルク

23.選択


ティフィンは、ルウをそっと草の上に横たえた。
少年の体は、ほぼ少女の体に変わり、肌の色は健康的な褐色から魔性を秘めたミルクの白さに塗り替えられていた。
女の子に間違えられる事の多かったルウの容貌は逆に男性的な要素が目立ち、ボーイッシュな美少女というところか。
はぁ…はぁ…深い呼吸はルウの感じている快感の深さを表しているようだ。
ティフィンはルウの…さっきまで男だった部分に視線を注ぐ。

ヒョコ…ヒョコ…生まれたばかりルウの秘所…そこから真っ黒い不気味なものが覗いている。
亀の子ががびくびくしながら様子を伺っているようで、ティフィンは思わず笑う。
「ウフフ…」
ティフィンは、亀の頭に手を延ばし掛け、その手を止めた。
「ソウカ…コレカラ先ハ…」小さく呟くと、ルウの肩に手を掛けて軽く揺する。
「るう…るう…」

「いい…イイノ…アン…あれ…僕ドウシチャッタ…」
ルウはゆっくり体を起す。
熟睡中に無理やり起されたようで、頭がはっきりしない。
軽く頭を振ると、ティフィンが自分を支えてくれているのに気がついた。 ティフィンの白い手が胸にまわされている。
「ソウダ…僕の胸が腫れて…あ…」
ルウはあらためて自分の胸が膨らんでいること…さらに自分の体が白くなっていることに気がついた…ようやく…
だが、ルウの心に驚きが生じない…恐怖も感じない。 恐怖を感じる心を失ったかの様に… 
ティフィンはルウに立つように促した。 そして、近くにあった泉まで連れて行く。

「これが…僕ナノ?…」
ルウは泉に移った自分の姿に驚き…そして見とれた。
細い首、スラリと伸びた手足、優しい胸の膨らみ、くびれた腰、細く妖しさを湛えた谷間…そして…そこから顔を覗かせる黒い小亀…
「あれ?…」ルウの表情が曇る。 大事なものだったはずなのだが…こうなってみるとひどく不細工に見える。
「ティフィン様?」
「様ハヤメテ。 るう…ドウ?ソノ体…女ノ体ハ?」ティフィンが笑みを浮かべて聞く。
「え…綺麗です…ケド…」戸惑うルウ。 ティフィンの意図がわからない。

ティフィンはルウを見つめて言う。
「るう…選バセテアゲル」「選ぶ?…」
ティフィンは頷く。
「マダ貴方ハ男ニ…人ノ世界ニ戻レル」
「人に…」
「但シ…」そう言ってティフィンはルウの股間をすうっと撫でた…
「!」ルウは膝をついた。 亀の子がフルフル震えて、甘い痺れをにルウに伝え…白い秘所がヒクついて、下腹の奥に生まれ掛けている熱い物の存在をルウに教える…
「あ…あ…」
「…フフ…男…人ノ体ダト…コウハ感ジナイケド…」
ティフィンはルウを覗き込む。 ルウの目にはまだ瞳が見える。 ルウがまだ『人』である証だった。
「るう…ネ…ドウスルノ…」そう言いながら、ティフィンはルウの首筋を撫で、耳に息を吐きかける。
「やん…あっ…あん…」ルウの体がヒクヒクと不規則に震える。 女の…それも魔性の女の快感を植えつけられた体がルウの心を犯しているようだ。
今更ルウがこの快楽に抵抗できる筈もない。
ルウの心はあっさり屈服する。

「あん…ティフィンさ…ティフィン…オ願イ…シテ…」
だが、ティフィンはルウの体から離れ、四つんばいで快感に耐えているルウの傍らに立つ。
「意地悪シナイデ…オ願イ…」
「意地悪ジャナイワ…るう…自分デスルノ…」
ルウはティフィンを見上げた。
「自分で…」「ソウ…自分ノ意志デ…サア…ルウ…」
ティフィンはルウの手を取り、ルウ自身の秘所に導いた。

ルウの指がおずおずと震える小亀の頭を撫でる。
あうっ…ツーンとしたものが生まれ、陰茎を伝わって来る。
スリ…スリッ…スリリッ…スリスリスリスリ…
細い指はゆっくり…そして次第に早く…縮こまった亀の頭を撫で…摩る。
「ああ…いい…」性に目覚めかけた少年の声でルウが喘ぐ。
”こっちも…さわって…”
頭の中で誰かが誘う。 指の数が増えて、白い秘所をめくってピンクの肉襞を優しく摩る…
「ヤン…イイ…」ルウの口から艶かしい少女の声が漏れる。

白い指は、別の生き物のように動き、ルウの男の子と女の子の部分を優しく、的確に愛撫する。
はぁ…ハァ…男と女の声で喘ぎながらルウは次第に腰を高く持ち上げていく。 頭が地面に…泉に接するほどに近づいた。
「ハァ…ア…」ルウは泉に移った自分の顔を見た。 白く喘ぐ少女…その目が白く濁って行く。
「あ…アア…」自分が変わっていくのを今更ながら確認し、目を閉じた。
あ…アア…
男の力強く熱い快感が、女の甘く優しい…しかし深い…底なしの深さの悦楽に呑み込まれていく。
あう…ルウが…    犯されちゃう…     いいよぉ…     すごくいいの…
アフ…    るうヲ…       犯シテル…     イイワァ…トッテモイイノ…
そしてルウの男が溶けていく…

”ルウ…”
誰…誰なの…
”ルウ…いらっしゃい…私達の娘…”
娘…貴方は女神…様?…
”ルウ…ルウ…”
ルウはそれが一人でないことが判った。 大勢の白い女…『女神』達が…手招きをしている。
闇の中、ルウの体が女たちの手の中に滑っていく…
あ…
彼女達の手がルウを捕らえ、その体を愛撫する。
ああ…
例え様のない心地よさ…ルウは理解した。 いま自分が女…魔性なのか、人の理解できぬ異形の神なのかは判らぬが…それとして完成させられていく。
心を蕩かす妖しい魂の快楽…なす術もなく心が奪われ、新しい何かが加わっていく…
人を誘う為の唇、人を慰める為の秘裂、そして人を癒し身も心も蕩かす『ミルク』を湛える胸の膨らみ…
その使い方が、それを使うことの喜びがルウの心を変えていく。 そして…
”可哀想…”
可哀想?…誰が…
”人が…”
人が…どうして?…
”…掟に縛られて…痛がりで…欲しがりで…”
…可哀想…可哀想…カワイソウ…
ルウの心に痛みが走る、ミンナカワイソウ…可哀想…
”ソウ…ダカラ…”
ダカラ…救ッテアゲナクチャ…
『女神』とルウの想いが一つになった時…ルウの心に『女神』が滑り込んで来た…
”ルウ…”
僕…は…女神様…ノ…アア…
ルウの心に甘く…そして冷たい衝撃が走り…ルウは『女神の娘』となった。

「あっ…アッ…アアアアアッ…」
泉の辺に突っ伏したルウの股間から白い『ミルク』が迸る。 ルウの『男』は『女』奔流に呑まれて消えた…
ルウはそのまま動きを止めた。
そして、地面手をつくと優雅な動きで立ち上がる。
新たな『女神の娘』がそこにいた。 
彼女の股間にはもう不気味なものは残っていない。 
そして、彼女の目に瞳はない…それはルウに人としての迷いが無くなったことを意味していた。
薄いピンクの唇から哀れみの言葉が漏れる。
「可哀想…ぼぶ…」

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