ともしび

27.枯草…


トトト…

敬は物音を立てないようにそっと階段を下りて外に出た。

走り出しかけて足を止め、後ろを振り返った。

(ジョーカーさん…ごめんなさい)

敬は心の中で詫びると、走り出した。 蛍を助ける為に。


「ぐうっ…うっうっ…」 枯草は食いばった歯の間からうめき声を上げる。

腰から下が石の様に固くなり、身動きが出来ない。

それでいて感覚だけは普通に、いや、普通以上に鮮明にある。

ヌチャ…

柔らかい肉のカーテンが、固く張り詰めた男根をそっと撫で、糸を引きながら離れていく。

粘液の糸がツーッと伸び、プチリと切れるところまではっきりと判る。

かっ…はっ… 肺が空気を吐き出し、空を掴んだ手が震え、立ちち尽くす枯草。

彼の前には非現実的な大きさの女陰が口を開き、花びらのように開いた陰唇が蠢いて今にも彼を呑み込みそうだ。

しかし…


(くそう…どういうつもりだ…) 枯草は苛立っていた。

獲物を捕らえようとするアメーバの様に肉襞がにじり寄り、濡れた襞で下半身をじわりと撫でては離れる…さっきから

それを繰り返していた。

ヌメヌメしたその肉襞が性器の周りを這い回ると、背筋がゾクゾクして股間が高ぶってくる。

そしてそれが離れると… 寂しさとも空しさが一緒になったような不快感が襲ってくる。

「この…金縛りにしてなぶりものにする気か…ぐふぅ…」 喘ぐ枯草に『炎の女』が応える。

”金縛り?…知らないよボクは…”

「嘘をつくな!体が動かせねぇ…お前がやってるんだろう!」 

『炎の女』は小首をかしげ、そして笑い出した。 ”あははははは…”

「何がおかしい!」

”はは…体のほうが正直だね…”

「何だと?」 枯草は不吉なものを感じた。

”うふふ…それは…” 『炎の女』は横たわった巨大な女体…その局部を示す。 ”君が望んだもの…だからそれから

離れたくないんだ”

「ば…バカを言うな!!」 枯草は否定しながら自分の声の大きさに驚いた。 そして激しく咳き込み前のめりに倒れる、

その妖しい物体の上に。


「うわあっ!」

枯草の上体が女体の下腹に受けためられ、下半身は局部に浅くはまり込んだ。

慌てて手を付いて上体を起こし、そのまま力を込めて、体を女体から離そうとする。 しかし、下が柔らかすぎてうまく

いかない。

(まずい!…)彼の下半身が女陰の谷間に押し付けられている。 さっきみたいに肉襞が包み込んできたら… しかし

予想に反し、女陰が動く気配が無い。

しばらくじたばたともがいてから、枯草は女体が動こうとしない…いわゆるマグロ状態になっていることに気がついた。

(?…) 枯草は動くのをやめ、『炎の女』を見た。 「はぁ…はぁ…どうした…もう終わりか…」

”くくっ…強がり言っちゃって…”

「なんだとぉ…」

”ほぉら…自分で動いてごらんよ…大事な所が柔らかいところに擦れて…たまらないから…”

「な!…うくっ!…」

腰が動いた。 女体ではなく枯草の腰が。 

巨大な女陰の肉壁に男根が擦り付けられ、剥き出しになった亀頭が陰肉と擦れ合う。

「!!」 

固くなった男根が魚のように跳ね回り、ネットリとした感触が下腹にべったりと残った。

「くっ…くううっ…」 呻く枯草。 しかし、どうすれば望みがかなうのか、知ってしまった彼の体はもう止まらない。

ヌルルル… ヌルルル… 傍目から見れば間抜けな屈伸運動で、濡れた陰肉に性器を擦り付ける枯草の体。

「あう…ああ…」 枯草は空ろな目で喘ぐ。

股間が溶けてしまいそうに気持ちいい。 しかし、腰が上下するだけ体が思うように動かない為、もどかしさで気が

狂いそうだ。

「た…助けて…」

”我慢すること無いのに…” 呟く『炎の女』。 ”したいようにすれば良いのに”

「し…したいように…だと…」 ごほごほと喘ぐ枯草。 「お…おれは…」

ヒクヒクと顎が動き、女の腹を突き放そうとしていた手がから力が抜ける。

単純な上下運動を繰り返していた腰が、微妙にグラインドし始める。

”あん…” 『炎の女』がかすかに喘ぐ。


「うう…」 枯草は視線を下に移した。 夏みかん程もある女の真珠が目に入る。

片手を宛がい、そっと円を描いて撫で回す。

ビククッ… 女陰が大きく震え、陰唇が再びウネウネと動き出した。

「おうっ」 ピンとたった男根に陰唇が優しく絡みつき、愛液を塗りつけながら、枯草の腰に沿って這い回る。

枯草は腰をゆっくりと動かし、甘く痺れるような快感を堪能し、より感じる動きを捜す。

ふぁ… ああ…

上下だった腰の動きは、次第に前後に変わっていく。

枯草の腰が突き入れられると、股間のものは襞のうねりをかき回し、腰が肉の花びらを押し広げる。 花びらはすぐ閉

じて、男の尻を包み込む。

枯草が下がろうとすると、滑る花びらが名残惜しげに腰に纏いつき、粘る音とともに男の尻が解放される。

”ふぁ…すごいじゃない…” うっとりとした『炎の女』の声 ”もっと…きて…”

「ああ…」 陶然とした声で応じる枯草。

腰を捻り、撃ちつけするうちに、腰から下全てが女陰にはまり込んでしまった。

ざわざわと肉襞がうねり、枯草の下半身を一斉に舐る。 枯草は背筋を駆け上る快感に一瞬気が遠くなる。

「たまらない…蕩けそうだ…」

”いいでしょ…さあ、もっと動いて…”

「ああ…」 枯草はぼんやりと『炎の女』の声を聞きながら、腰をグラインドさせて骨盤で女陰をかき回す。

”ふにゃぁ…それいい…感じるの…”

『炎の女』の囁きと共に、陰唇は枯草の腹から胸に掛けてを愛撫し、甘い痺れで彼を包み込んでいく。

枯草は目を閉じて体の芯が蕩けていくような快感に身を委ねる。

彼の両手は別の生き物の様に動き、女の真珠を捕らえて再び擦りだした。

枯草をくわえ込んだ女陰がビクンと振るえ、次に置くからドロリとした白い液体を吐き出す。

ドップドップドップ…

ねっとりとした暖かい液体にまみれた枯草の体は、力を失ったように動かなくなった。

そして、女陰がニチャニチャと枯草を咀嚼するよう蠢く。

枯草は、突如として強い幸福感に襲われた。 そして自分が精を放っていることに気が付く。

ヒック…ヒック…ヒック…

股間の物が蠢いて、トロリとしたものを断続的に吐き出し、疼くたびに心地よさが込み上げてくる。

「いい…いい…」呟きながら、枯草の体はじわじわと女陰に呑み込まれて行く。

”いいでしょ…君ももうボクのもの…もっと…燃えさせて…”

『炎の女』の言葉は、もう枯草の耳には届かなかった。

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