ともしび

24.石炭……


「い…石炭」 枯草は我に返ると、石炭に絡み付いている『白い水』を引き剥がそうと手を伸ばした。

枯草の手が触れる直前に、其処が大きな泡のように盛り上がり『乳房』の形を成し、枯草の手がそれを掴んでしまう。

「ぬおっ!?」

”ああん…”

予想外の柔らかな手ごたえにとまどいと恐怖を覚え、枯草は思わず後ろに引いてしまった。

その隙に『白い水』はドボドボと石炭に降り注ぎ、頭から肩にかけてを不定形の塊で覆ってしまい、石炭は出来の悪い

ソフトクリームのようになってしまった。

(見えん!お…重い!おっ?)

視界を奪われた上に頭と肩に余計なものが乗っかった石炭は、バランスを崩してその場にひっくり返った。

仰向けに倒れた石炭の上に、さらに『白い水』が降り注ぎ、その体を包み込んでいく。

ふにゃ…ふにゃ… 大事な所が揉まれてる感触に石炭は慌てた。

(うわ…うわっ! 女ならともかく、化け物相手ははいやだ!)

そう考えた途端、体に乗っている白い塊がみるみるうちに形を変えていく。

僅かな時間の後、大の字に倒れた石炭は、女に圧し掛かられ、両手両足を押さえ込まれた格好となった。

”はぁぃ。 これがお望み?”

石炭の目の前で『白い女』…『薫』がにこやかに笑う。

目線を下げれば、自分の胸に吸い付くように形を変えた白い果実が目に入った。

恐怖の怪物が欲望の女神に姿を変えると、あさましい欲望が男根を固くする。

”あら、正直…うふ…”

『薫』は、己の腰を石炭の腰に摺り寄せた。

淫らな谷間が男根をレールにして前後するにつれ、得体の知れない滑りが性器を覆って行く。

ニュル…ニュル… 「う…ううっ…」

その音と共に、石炭の心から恐怖と嫌悪感が滑り落とされ、悦楽と欲望が塗り込められていく。


「石炭!」枯草は石炭に跨った女に手をかけた。 しかし手が女に潜り込み、つかみ所が無い。そして…

ぬるっ…ぬるっ… 「ひっ!」 滑った感触とともに、女の体が溶けて腕を昇って来た。

慌てて手を離し、その妖しい液体から逃れる枯草。

女は枯草を追おうとせず、形を戻して再び石炭の腰に自分の腰を擦り付ける。

”ほら…固くなってる…さぁ…来て…”

『薫』大きく腰を上げ、柔らかなそうな白い肉襞の間に、赤黒い肉棒を呑み込んで行く。

「うくっ」 妙な声を上げる石炭。

”柔らかいでしょう…ほら…”

『薫』はゆっくり腰を振りながら囁く。

”私達はいやらしい事をしたいだけ…ねぇ…もっといっぱい感じさせて…あなたを…”

「うう…ううう…」呻く石炭。 体を振って『薫』を振り落とそうとしているようだが、力がうまく入らないようだ。

『薫』は石炭に覆いかぶさり、その体を抱き締めた。

ズブリ… 白い女体に石炭の体が半ばめり込む。

そのまま、『薫』全身をくねらせて石炭を貪るように動き続ける。

『薫』の体は石炭に隙間無く密着し、皮膚の皺、毛穴の一つ一つまで入念に愛撫している。

「ふぁぁ…やめ…うぁぁ…」 

石炭の抵抗は次第に弱まり、呪いの言葉は愉悦の呻きへと変わっていく。

”ねぇ…もっとしましょう…もっといっぱい…”

『薫』の囁き声が次第に石炭の心を犯していく。

石炭の両手が『薫』の背中にまわされ、腰が動き始めた。

「ああ…ああ…」空ろな声を上げ、石炭は『薫』と唇を合わせた。


「くそ…」 枯草と油山は、石炭が『薫』に犯されるのを見て切歯扼腕していた。 

と、油山が妙な事に気が付いた。

「枯草さん、なんであいつはあの『光』を使わないんですかね?『炎の女』本体がはいってこれないとか…」

「なに?」枯草が油山を見た。

「それにあれは?」 油山が『薫』の背中を指差す。

先端がなくなったシャワーの口から白いホースのような白い紐がのび、『薫』の背中に繋がっている。

「あれは『白い水』がまだ…いや、違う? あの『女』は…あれで本体から操られているのか!」

「きっとそうですよ!」

「よし! あの紐を切ればあの『女』は動けなくなるかもしれん!」

枯草と油山は辺りを見回し、モップとデッキブラシを見つけた。

それを振りかざし、女の紐をなぎ払う。

「どりゃこの『ヒモ』め!」「てえぃ!」 

すかっ… 『紐』が大きくたわんで避け、二人はバランスを崩して転倒する。

「あいたっ…」「くそ…」

と、『薫』と交わっていた石炭が、『薫』を抱き上げて突然立ち上がった。

「…いくぞ…いくぞ」ぶつぶついいながらシャワー室の扉に向かう。

”行きましょう…はやく…”

『薫』は蛇のように腕を石炭の首に絡め、耳をしゃぶりながら囁き続ける。

「よせ!」「駄目です!」 無様に這いつくばった二人の言葉に耳を貸さず、石炭は扉に手をかけ、あらん限りの力で

押し開けた。

扉は物凄い勢いで開いて壁にぶつかり、ひどい音がして蝶番が壊れた。 そして、淡く輝く光が三人を照らし出す。

「うわ…」「あ…」「…」

呻き声を漏らす三人を『炎の女』が手招きをする。

”おいで…さぁ…”

石炭が躊躇無く足を踏みだし、枯草と油山は手を翳して光を見ないようにしながらその後を追う。

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