ともしび

21.紙谷


「お!?」石炭が薪之森を指差した。 

薪之森を呑み込んで蠢く塊が、『炎の女』の座っている大ロウソク這いずって行き、一体化していく。

そして、雪のように白い塊が溶けていき、薪之森の頭や肩が露になり、最後には大ロウソクにめり込んだような形と

なってしまった。

ああ…あああっ…

彼のうめき声は、見えない部分に何かされ続けている事を示していた。 そして、ロウソク本体から、白いロウ人形の

様な女の顔や手が生えて、薪之森の剥き出しの部分を愛撫したり舐めたりしている。


「に…人間ロウソク」 我知らず呟いた枯草の声に『炎の女』が妖しく笑う。

”ねぇ…おいで…もっとボクを燃えさせて…男が二人じゃ足りないんだ…”

その言葉に訝しげな顔になる一同。 と、石炭がロウソクの後ろのほうを指差した。

「あそこに誰か捕まってるぞ!」

「え…ひっ!!」 紙谷が悲鳴を上げかけた。

彼らは、それが『ガリ』と呼ばれている生徒だとは知らなかった。 もっとも、知っていたとしても判らなかったろう。

げっそりと頬はこけ、目は落ち窪み、笛のような音を立てている。 しかしその顔には愉悦の色が浮かび、時折身を震

わせている。

「生きてるのかあいつ…」自分に言い聞かせるかのように枯草が言った。

「あっ!ほっといたら薪之森も!」石炭の指摘に、他の者がはっとした。


「い、いけない」紙谷がどすどすと浴槽に足を踏み入れ…硬直した。

粘る感触が足を包み込み、ねっとりとを踝をくすぐる感触が頭を白くする。

「あぅ…あぅぅ…」立ち尽くす神谷の膝に、白い粘体が纏いつき愛撫しながら昇って来た。「な、なんて…」後は言葉に

ならない。

”さぁ…どんなのが望み?”

「紙谷!」枯草は紙谷を助けようと浴槽に近づいたが、勢いをつけて飛び込んだ紙谷までは距離がありすぎる。 飛び

込めば自分も捕まってしまう。

「おい、女以外の事を考えろ!」

「女…以外」空ろな声で応える紙谷。 目がドロンとして『炎の女』の照り返しが、不気味な陰影を顔に与えている。

ちょっと出ている腹の下に下がっている物に、白い湯面から真っ白な手がそろそろと伸びて来ている。

「そうだ!食い物でも考えろ!好きな食い物とか!」

「お…おれの好きな…ま、饅頭」 魂の抜けたような声の紙谷。 すると…

ドブリ… 湯面が盛り上がり、立ち尽くす紙谷の前に直径3mは在ろうかと言う真っ白な饅頭が浮いてきた。


「あ…の馬鹿!」呆れる石炭。

お… 呆然と饅頭を見つめる紙谷。 フラフラと足が出て饅頭にかぶりつく…と言うより倒れこむ。

あわぁぁ… その『饅頭』は極上のマシュマロよりも柔らかく紙谷を受けとめてくれた。 

そして甘く優しい匂いが鼻腔を満たす。

「ふぁ… おっぱいみたいな…」 そう言った途端、それは直径3mの乳房となり、紙谷はそこに埋もれていた。

すぅぅぅぅ… 息を吸い込むと、甘い乳の香りが脳天まで染み込んで来る。

紙谷は一瞬でその『おっぱい』の虜となった。 もう背後から枯草達が叫ぶ声も耳に入らない。


はふはふ… 情けない声を上げながら白くなめらかな乳に顔を埋め、子供のように頬を擦り付ける。

絹のような優しい肌触りに力が抜け、そのまま中に溶け込んでしまうかのようだ。

夢中で体を擦り付けているうちに乳輪が顔に触った。

少しざらついたそこは、また別の触り心地の良さがある。

紙谷は乳輪に顔を埋め、ゆっくりと首を振ってザラザラした感触を堪能する。

”あん…” 『炎の女』が胸を押さえて切ない声を上げた。

それを聞いた紙谷は、目の前にそそり立つ乳首を咥えた。

甘噛みし、顔を埋め、舌を突き刺す。

甘い乳の匂いが段々強くなってきて、乳房がフルフルと震えだした。

”いい…いい…いっちゃう…”

ビクッ… ビュルルルルル?・・

一際大きく震えた乳首の先端から、甘い匂いのする粘液が噴水のように吹き上がり、紙谷の頭から降り注いだ。

紙谷は、ぬるぬるになった体を乳房に預け、全身で乳房を愛撫する。


ズブリ… 頭の先で何か粘った音がした。

はっとして顔を上げると、乳首のあったところから、濡れた何かが生えてくるのが見えた。

それはヌルヌルとした白い粘液にまみれた女の上半身だった。

その女は紙谷を見つめ淫靡に笑うと、両手を紙谷の脇の下に差し入れて、乳房の上に引きずり上げた。

乳の上に生えた女は、きつく紙谷を抱き締めて乳ともなんとも付かない甘い匂いの粘液を、自分の体で紙谷に塗りつ

ける。

「うぁぁ…あぅぅ…」動物のように喘ぐ紙谷。 彼に女が囁く。

”願いなさい…どんな浅ましい願いでも…いまならば適うわ…”

「うう…ぅぅぅ」紙谷の目に狂気の炎が灯る。

全てを忘れ、互いの全身を愛撫しあう紙谷と乳房女。 

その紙谷の下半身は、白く柔らかな乳房に次第に包み込まれ、絹のような愛撫に固く…固くなって行く。

「ああ…どうなって…」呟いく紙谷に、女が囁いた。

”考えなくていいの…ね…さぁ…きもちよーくなって…ほぅら…”

促され、感じるままに動く紙谷。 腰の辺りが蕩けていくようになって…そのまま頭がぼーっと何も判らなくなっていく。

乳房に体の半ばを埋め込んだまま、紙谷も『蛍』の手に落ちた。

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