ともしび

20.薪之森


「望みだと?」誰かがぼそっと呟いた。

彼らの眼前では白い湯が生き物の様にうねり、所々ぼうっと光る。

と、その一部がゆるやかに盛り上がった。

(…さっきの女か?)枯草が思うと、それは次第に『蛍』の形を取っていく、しかし。

「ロウ人形みたいだ」油山の言うとおり、それは『湯』と同じ真っ白な人形のように見えた。

「これが望み?へっ!」腰が抜けて蹲ったまま吐き捨てるように言う薪之森。

「さっきの女どもの二輪車の方が良かったぜ。第一俺の好みはもっと尻が大きくて…」 ズン! 彼がそう言うと

『ロウ人形』の尻が大きくなった。

「こう胸が」ビクッ…ビクッ… Aカップの胸がB…C…と段々大きく…

「髪が長くて…」 ズッ…ズッ… ショートカットだった髪が次第に伸び、顔立ちや、体形も次第に変化していく…薪之森が

望む形に。

(た…たかが人形だ…が…)ごくっ…薪之森の喉が鳴る。


”あの…” 突然『ロウ人形』がしゃべった。

「ぬおっ!」不意をつかれ薪之森が驚いた。「脅かすなぁ!」

”うふふ…御免なさいませ…” からかう様に笑ってペコリと頭を下げる『ロウ人形』 ”驚かれました?”

「…」むっとする薪之森。『ロウ人形』を睨みつける 「驚いてたまるか」

”では…”笑った『ロウ人形』の体が仄かに光る。”お望みの事は何でしょう?”

ホウッ…ホウッ… 淡い光は誘うように明滅する。 豊かな胸が、そしてふくよかな腰が目を引いて離さない。 

「むっ」躊躇う薪之森。 あまりに見え透いた誘いに警戒心が起こる。

”怖いのですか?”今度は嘲るように笑う『ロウ人形』 ”それとももう立たないとか…”

「き、貴様!」憤然と立ち上がると、薪之森は他の者が止めるのも聞かず、浴槽に入って『ロウ人形』に歩み寄った。

乱暴に『ロウ人形』を突き飛ばし、四つんばいにさせると尻に手をかけた。

フニュ… 予想外に柔らかい尻に手がめり込むのも構わず、股間のものを彼女の秘所に宛がい、一気に突きこんだ。

ズンッ! 薪之森の腰が『ロウ人形』の腰に叩きつけられた。

(うあっ?) 『ロウ人形』の尻は、極上の羽根布団の様に、柔らかく彼の腰を受け止め、そのまま吸い付いて離さない。

一瞬止まった彼の強張りに、トロリとした液体を塗りつけつつ、柔らかいものが巻きついて、ゆるゆるとうねる。

ニュルニュルニュル… 男根を這いずる滑らかな感触が、薪之森の背中にゾクゾクするような快感を走らせる。


「ううっ…や、やるな…」腰が勝手に動き、トロトロの肉襞の上をカリが滑る感触が心地よい。

反撃しようと強張った手を伸ばして『ロウ人形』の胸を掴む。

「うっ」”あん…” 尻と同じように信じられないほど柔らかな手に指がめり込んだ。 自分では揉んでいるつもりなのだ

が、柔らかすぎて手ごたえが感じられない。

「う…ううっ…」 硬直した薪之森の股間のものが『ロウ人形』の胎内で、柔らかく愛しげに愛撫され続け、それと反比

例するように薪之森は固くなっていく。

「あ…あ…」 根元の方から甘い疼きがじりじり昇ってくる。 同時に体の中に満ちてくる痺れるような快感。 

(い…いく…いや…いかされる) 意味の無いプライドにすがり踏みとどまろうとする薪之森

”ご不満ですか”なかなかいかない薪之森に『ロウ人形』が尋ねた。

「まだだ…まだもっと…」陶然とした声で薪之森が応える「それに…背中がさびしいぞ。胸も…」

”まぁ…では”『ロウ人形』がそういった途端、周りの湯面が泡立ちさらに二人の『ロウ人形』が生み出される。

新たな二体はの表面が固まりきらないうちに左右から薪之森に抱きつくと、ローションの様に自分たちの体を塗りつ

けていく。

「おおっ…」感嘆の声が上がる。 トロリとした液体は、粘り蠢きながら薪之森の体を愛撫する。

それは液体であるはずなのに、女の子の肌のようにしっとりとした触感を伝えてくる。

「いい…これはいいぞ…」うっとりとした様子の薪之森。 立ち尽くす彼の全身は、次第に白い粘体に包まれ、ついに

は彼自身が『ロウ人形』たちと見分けが付かなくなってしまった。

(ああ…ああ…)全身を女の子に包まれているかの様なありえない心地よさ、次の瞬間にはそれが粘膜のようにヌメヌメ

した感触に変わり妖しい快感で彼を包み込む。

頭の中まで甘い痺れで満たされた薪之森は、股間の欲求に身を任せた。

ヒクッ…ヒクッ… ひどくゆっくりとした絶頂をがやって来た。 股間が疼く度に快感の波が体を駆け抜ける。 

薪之森は考えることをやめ、『ロウ人形』達の愛撫に、その異様な絶頂感に酔いしれた。


「おい…おい!」不意に枯草が大声を出した。 

彼らは『ロウ人形』達と『炎の女』を見ているうちに、目は空いているのに頭が眠っているような感じになっていた。

気が付けば、薪之森と『ロウ人形』達は一塊になって蠢いている。 不定形の固りが次第に幾何学的な形になってい

くようだ。

「薪之森!」枯草の呼びかけに、薪之森は愉悦のうめき声で応える。

「おい!」今度は『炎の女』に呼びかける「奴に何をしている!」

”気持ちいいことだよ”『炎の女』が笑い、薪之森を指差した”ほら…よがっているでしょう”

ああ…いい…

「どうみてもまともじゃないだろうが!」枯草は怒鳴った。「すぐやめさせろ…?」

『炎の女』はニタリ笑ってと枯草達4人を見た。

”そう言わずに…ねぇ…” 再び湯面がうねる ”さぁ、次は誰が望むの?”

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