ともしび

12.火かき棒


『ガリ』は尻でいざって『蛍』から離れようとした。

しかし背中から壁が突き当たり、『蛍』の方につんのめる様にして床に倒れてしまった。

胸の痛みを堪えて顔を上げれば、白い女の子の足が目の前にある。

『ガリ』は床に爪をたて、戸口に向かって這いずって逃げようとする。

「傷ついちゃうなぁ。そんなに嫌わなくっても良さそうなものだけど」

頭の上から面白がっているような声が降ってくるのも構わず、『ガリ』は渾身の力で床をかく。 

右、左、右、左。 彼の眼前で、他人のもののように骨ばった指が、足掻く、足掻く。

悪夢から逃げ出そうとしている様な気がするが、床を爪が引っかく不快な音と指先の鋭い痛みが、それが現実である

事を告げている。


「!」 足を誰かが掴み、恐怖が心臓を掴む。 

抗う暇も無く、『ガリ』はゴロリとひっくり返され『蛍』と対面させられる。

「せ、先生!?」

『ガリ』の足を掴んでいたのは裸の薫だった。 その脇に立ってニタニタと笑っている『蛍』、いや『蛍』だけではなく薫も

笑っている? 『蛍』と同じ様に。

「先生!離して!」 弱々しく足を動かす『ガリ』。

ふふ… 薫が含み笑いをして言った。「魂を抜いたって言ったよね」

「!?」 『ガリ』は、薫の口調が『蛍』そっくりなのに驚いた。

「この体に入れたボクの一部が動かしてるんだよ」と蛍が言いながら『ガリ』に体を寄せてくる「さぁ。見て」蛍が胸を逸

らす。

ホゥ… 淡い光が『蛍』の胸に灯り、『ガリ』の顔を照らし出す。

『ガリ』は必死に首をふり、灯りから目を逸らそうとするが、どうやっても目がひきつけられてしまう。

顔があさってを向いているのに、視線が『蛍』の胸、その灯りに吸い寄せられる。

くっ…くうっ… 食いしばった歯の間から漏れる絶望の吐息が、次第に熱くなっていくのが悔しかった。

ビクッ、ビクッ。 『ガリ』のイチモツが彼の心を裏切り、邪悪な生き物の様に立ち上がって行く。


「ちくしょぉ…」思い通りにならない自分の体に涙を流す『ガリ』

それを見て、首を傾げる『蛍』「どうして嫌がるのかなぁ」

「あ、当たり前だろう!た、魂っ!ぬ、抜かれるのを喜ぶ奴がっ!」激しい口調に咳き込む『ガリ』「いるかぁ!」

その言葉に『蛍』はキョトンとし、次にくすくすと笑った。

「そうなんだ」言いながら手を『ガリ』の胸に添える。「知らなかった」

『ガリ』は『蛍』の手を払いのけようと足掻きながら「ば、ばかにするな」と言った。

『蛍』はそれには応えず『ガリ』の胸に唇をあてがい、軽く舐めた。

乳首が柔らかい刺激に転がされ、心臓が高鳴る。

散々されたはずなのにまだ反応する自分の体が情けない。

『ガリ』は鼻で息をしながら『蛍』の愛撫を受け流そうとするが、『蛍』が目を閉じて彼の胸に頬擦りしているのを見てい

ると体の芯が熱くなってくるのが止められない。

さらに『蛍』の手が彼の股間を弄り出すと、イチモツが固くなってくる。


ヌルリ… 亀頭に絡みつく『蛍』の指が湿り気を帯びてきたようだ。 

ヌル、ヌチャ、ヌチャ… 「?」異様に粘っこい感触に、『ガリ』は自分の股間をあらためた。

白い『蛍』の指が自分の股間に絡みついているのはいいとして、白くドロリと何かで濡れているようだ。 あれはいった

い?

視線を上げて『蛍』の顔を見る『ガリ』。 『蛍』は全て判っていると言わんばかりにニタリと笑い、『ガリ』の胸を摩ってい

た手を離して『ガリ』の胸の上に翳した。

「!?」

『蛍』の手が濡れていく、いや、少しずつ溶けていく。 翳した手全体が僅かに溶け、白い液体となって滴ってくる。

唖然とするガリの胸に『蛍』の雫が滴り落ち、ゆっくり広がって来る。

うっ… 思わず息を吐く『ガリ』。 トロリとしたそれは甘い香りを漂わせながら、肌を優しく擽っている。

ただ流れるだけでなく、『ガリ』の皮膚を余す事無く愛撫しているようだ。

「な、なんだよこれ」 困惑する『ガリ』の声に甘い響きが混じる。

「ボクだよ」

「なんだって…」

「ふふ、ボクで包み込んであげるよ、体の隅々まで」そう言いながら、『蛍』は濡れた手で『ガリ』をゆっくりと愛撫する。

くっ… ドロリとした手が袋を揉んだと思ったら、その粘っこいモノが袋を包み込み、皺の一つ一つに絡みついて愛撫

を始めた。

逃げるように縮み上がる股間のものが、暖かく柔らかい物に包み込まれゆっくりもみし抱かれる感触に仰け反る『ガリ』。

その間にも、トーストにバターを塗るように、溶けていく自分の体を『ガリ』に塗りつけていく『蛍』

トロトロとした白い液体は『蛍』の匂いがして、『ガリ』は『蛍』に包まれていくような錯覚を覚えた。

愛撫に感じているのか、逃げようというのか、不自然にもがく『ガリ』。 伸ばした手は肘のほうから手首までみるみる

白い液体に包まれていく。

ふぁぁぁ… 『ガリ』の口からため息が漏れる。 『蛍』は『ガリ』の全身を余す事無く包み込み、完全な愛撫で『ガリ』を

酔わせる。

(ああ…そうだ)溶けた『蛍』のロウソクに手が包まれた時のあの感触が蘇ってきた。 今度は全身をそれが包み込み

、強弱をつけて『ガリ』を甘く揺さぶっている。


キン… 股間が疼く。 もう出すものが残っていない筈のソコは快楽と同時に痛みで疼く。

あぅあぅ… 呻く『ガリ』の耳元で『蛍』が囁く(さぁ、いって…)

ヒクッヒクッ… 固く張り詰めたモノが空撃ちした…と思ったらトロリとした妙な感触。

「ひっ!」 驚く『ガリ』に構わず、それは体の中に滑らかに入ってきた。

「や、やめっ、やっ!」 『ガリ』が硬直する。 体の中を何が愛撫している、胸の中を撫でられているような変な感触だ。

ふぃ! 体の芯に何が絡みつき、奇妙な声を出して反り返る『ガリ』。 

ズッ…ズズズズズッ… 硬直したイチモツからそれが出ていく。 糸のようなモノが内側を擦り、とめどのない射精感に

頭が沸騰し、『ガリ』の体が激しい快感にのたうつ。

ジュルルルッ… 股間からそれが出て行くと同時に、『ガリ』は目をかっと見開き、ぱたりと倒れた。


『ガリ』に纏わりついていた白い液体は、床の上で一塊になると、再び『蛍』に戻った。

『蛍』が手を開くと其処に細めの炎が踊っている。 『蛍』は舌を出してそれを舐めた。

ひぃ、ひぃ… 炎が歓喜の声を上げるのを満足気に見やり、『蛍』はそれを呑み込んでそっと胸に手を当てる。

あぁ…あああ…

ひぃ…ひぃぃぃ…

『蛍』の中で二人の魂が喜びの声を上げているのを確かめ、邪な笑みを浮かべる。

「ふふっ。 むき出しの魂でボクの灯の光を浴びているんだから、堪らないでしょう?」『蛍』はそう呟いてから保健室

の入り口に目をやって声をかけた「入っておいでよ『委員長』」

カラカラと音を立てて扉が開き、震えながら『委員長』が入ってきた。 怯えた眼の奥に、『蛍』の灯火でつけられた欲

望の種火が燃えていた。

【<<】【>>】


【ともしび:目次】

【小説の部屋:トップ】