ともしび

8.飛び火


一時限目の休み時間。 トイレに行った敬は、ついて来た蛍に個室に引き込まれそうになりズボンを下ろしたまま廊下を逃げ惑った。

二時限目。 蛍がせっせと投げてくるラブレター。 さすがにうっとおしくなって無視する敬。 そしたら上履きが飛んで来た。

昼休み。 『運命のぶつかり合いパートU』 威力を増せばよいかとショルダーアタック。 敬は窓から校庭まで飛んで目を回し、蛍はアメ

フト部にスカウトされかけた。

そして今。 土ぼこりにまみれた敬を、蛍がタオルで拭いている。 敬自身がどう思っているかはともかく、他人の目には傍目も気にせず

いちゃつくバカップルに見えるだろう。

事実、最初は蛍を歓迎していた男子生徒達の視線がかなり険悪なものになっている。

女子生徒に至っては氷のような視線を投げつけている。


「ちょっとあなた」棘のある声がした。

「?」怪訝な顔で、声をかけてきた眼鏡の女生徒…『委員長』を見やる蛍。 既に二時限目も終わり、蛍はすっかり馴染んでいた…一部を

除いて

「どういうつもり?迷惑なんだけど」

「迷惑?ボクは敬を誘惑したいだけだけど」正直に答える蛍。

敬は慌て、周囲はどよめき、委員長は真っ赤になった。

甲高い委員長のかなきり声に背中を押され、教室から逃げ出す敬と蛍。


「まったく…」疲れた様子の敬は階段に座り込んだ。

隣に座る蛍は、少し暗い顔をしている。「敬…さっきの子とどういう関係なの?」

「彼女は『委員長』だよ。 真面目だから蛍がふざけているのが気に障るんだと思う」

「…」蛍は敬を横目で睨んだ「鈍いなぁ。キミは」

敬は首をかしげて蛍を見る。

(あの子、敬に気があったんだよ) 心の中でだけ呟き、すっくと立ち上がる蛍。

「蛍?」

「敬…後でね。 次を楽しみにしていて♪」そう言うと、軽やかな足取りでどこかに行ってしまった。

呆然として蛍を見送る敬。 


「次?…!」はっと気がつき、慌てて蛍を追う。

(大変だ!) 蛍から目を離すと何をするか判らない。 ようやくそれに気がついた…が遅かった。 彼はまた蛍を見失ってしまったようだ。

慌てた様子で廊下をあっちこっちと駆け回る敬。

「おや?愛しい蛍ちゃんにふられたのかい」皮肉と嫉妬の言葉を投げつけてきたのは『ガリ』だった。

「ああ丁度よかった!」敬は『ガリ』を呼び止めた「蛍がいないんだ。一緒に探してくれ」

最初は渋っていた『ガリ』だったが、敬の只事でない様子に手伝うことを同意した。


−『保健室』−


蛍は保健室の引き戸を開けて中に入った。

「ノックをして、名乗って入ってきなさい。まったく、最近の生徒は…」

蛍に声をかけたのは白衣を着た女性の保健教師だった。 窓際に置かれた机の前に座って、背中を向けたままこちらを見ようともしない。

(失礼な奴)腹の中で少し毒づいてから、蛍は辺りを見回した。

白いカーテンの隙間から見えるベッドに人が寝ている様子はない。 もっとも他人の心を感じとれる蛍だ、その辺りを間違う気遣いはない。


「あの…相談があるんですけど」と蛍。

女教師は髪をかきあげる仕草をしながら椅子ごと振り向いた。 そろそろ『若い』という形容詞から縁がなくなりそうな女教師は、蛍に向

かい合わせのパイプ椅子に座るよう身振りで示す。

蛍はちょこんという感じで椅子に座った。

「相談って?ああ、それより貴方は何年の何組?」横柄な態度で蛍に尋ねる。

蛍は答えずに自分の服の襟に手を掛け、ぐいと引っ張った。 白い胸元があらわになる。

女教師は眉をしかめて、蛍の胸に目をやった。 と、そこがぼうっと光る。

「え?」 驚く女教師。 蛍の胸に指を手を当てて触診する。 光っている所と周りを軽く押しながら「痛みは?いつからこうなったの?」と

聞いてくる。

「ずっと前から…あの」

「え?何?」

「暗い方がよく判りますよ」

女教師は一度瞬きをしてから頷き、厚手のカーテンを閉める。 陽光が遮られ、薄暗くなる保健室。

振り向いた女教師の目に、かすかに光る少女が目に入る。

「あなた…全身が光っている…」呟く女教師に蛍は胸元をさらけ出す。

白い肌の奥で揺らめく光が踊り、女教師の視線を吸い寄せる。

彼女は黙ったまま蛍の前に座りなおし、何をするでもなく蛍を、その胸の炎を見つめていた。


ふぅ…ふぅ… 女教師の口元が僅かに緩み、かすかな吐息が漏れる。

蛍は彼女の中に情欲の火がついたのを感じ取ると、白い手を伸ばして白衣をつっーと上から下に撫でた。

プチプチプチッ… 小さな連続音がして白衣がはだけた。 しかし、女教師は何の反応も示さない。

蛍の手が彼女のスカートの中に白い蛇のように潜り込んだ。

「あっ!」 彼女は小さく叫んでビクッと体を震わせた。 立ち上がって呆然と蛍を見つめる。

「あ…貴方…」そう言う声に、戸惑いと欲情の響きがある。

蛍は上目遣いに女教師を見上げる。 

蛍を見つめる彼女には蛍が隠微に笑っているのが、そして彼女の胸で踊る炎が目に入る。

はぁ…あぁ… 困惑する女教師、体の芯に火がついたようだ。 今までに感じたことのないもどかしさが腰の辺りを支配しようとしている。


「先生」

「え、何?」

「少し、休んだ方がいいですよ」

「え、そ、そうね」

体が熱くてだるい。 重い体を何とか持ち上げ、女教師はよろよろとベッドに向かい、そこに座り込んだ。 足を大きく広げて。

蛍は当然の様に彼女に歩み寄り、その前にひざまづく。

女教師は陶然とした表情で蛍を見ていた。 蛍が何をしているのか、考えようとしても頭が回らない。


蛍は彼女のスカートのホックを外し、そっと脱がせた。 熱っぽい腰の辺りが外気にさらされ幾分楽になる。

白い指がショーツにかかり、ゆっくりと下に引きおろす。 女教師はその動きに逆らわず、足を動かして蛍のするがままになる。


蛍の前に熟した女の秘所がさらけ出された。 そこはかすかに色づき、ときおりひきつったように動いて何かを待っているかのようだった。

蛍は指で秘所の外側に軽く触れるた。

女教師の腰がビクリと震えた。

蛍は外陰部にそって指を滑らす上から下へ、下から上へ。 何度も、何度も…

あっ…あ…あ…

女教師は呻きながら腰を震わす。 腰の中でもやもやと燻っていたのが、次第にはっきりとしてくる。

体の芯が熱くなって、中から熱いものが溢れて来る。

ヒクッ…ヒクッ… 女教師の秘所が蠢きながら口を開け、中からトロリとした透明な液が流れ出て来た。

「うふ…随分たまってたみたいだね」蛍はペロリと口を舐めた「たっぷり燃えさせてあげる」

蛍は女教師の秘所に口を寄せ、音を立ててすった。

あぅ! 女教師の口から快楽の呻きが漏れた。 彼女の両手が蛍の頭を抑える。


「火はついたと…さぁて、敬にはどの辺りから参加してもらおうかなっと…」

蛍は喉を鳴らして笑った。

「敬…余計な事なんか忘れさせる程に狂わせてあげるから…楽しみにしていて」

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